初めてのダンジョン
明後日の朝。特に場所や時間も決めてなかったので、ギルドに行けば会えるだろうと思い、冒険者ギルド内を探してみる。するとあっさり見つかった。
「おはよう晴海君、今日はよろしくね」
「おはよう橋本。ダンジョンは初めてだからいろいろ教えてくれると助かる」
俺は昨日まで魔物を狩りまくった。スライム、ゴブリン、コボルト、ワーム、この4種類の魔物の亜種など。
そのおかげで今の俺のステータスはこうなっている。
宮古晴海:男
LV:15
状態:普通
SP:12
HP:400
MP:0
力:160
守備:160
敏捷:160
器用:160
運:160
スキル:学習LV2、片手剣LV5、盾LV5、カウンターLV3、気配感知LV3、自動翻訳
学習LV2:消費SP減少
【片手剣:片手剣装備時、攻撃力上昇。スキルレベルが上がるたび上昇する】
【盾:盾装備時、防御力上昇。スキルレベルが上がるたび上昇し、衝撃なども緩和される】
【カウンター:物理攻撃の威力をそのままに返す反撃技。スキルレベルが上がるたびにダメージを上乗せできる】
【気配感知:魔物の位置がわかるようになる。スキルレベルが上がるたびに範囲が広がり、気配の特定が可能になる。また、ハイディング状態の魔物を発見できる】
経験値2倍はさすがだった。学習で覚えたカウンターはコボルトから。攻撃したら、躱されると同時に反撃を喰らったことで覚えたが、かなり痛かった。
気配感知はワームから。ワームは感知の射程に入ると襲ってくるらしく、1匹目で手こずると戦闘中に2匹目、3匹目が次々に襲ってきて危険な魔物だった。
なんとか3匹目を倒し終えた時にこのスキルを学習できた。以降はこの2つのおかげでかなり効率よくレベルを上げれたといえる。
気配感知で魔物をピンポイントで発見でき、戦闘は敵に先手をとられてもカウンターで反撃できるので、危なげなく勝利できた。
学習LV2にあげたことにより消費SPが減少したので剣、盾スキルも上げてみた。これで少なくとも足手纏いにはならないだろう。
「あら、おはよう宮古君。見つかって良かったわ。成美ったら時間と場所も決めてないって今日気づいたみたいなの」
「おはよう。まぁ、だいたいそんな気はしてたよ。橋本だからな」
「あ、ひどーい!でもほら、晴海君なら特に決めてなくてもここに来ると思ってたよ!」
「はいはい。それでだけど今日は私も参加したいのだけど、いいかしら?」
滝井も参加とは願ってもない申し出だ。もちろんOKする。ダンジョンではパーティの人数が多いほうが安心できる。
多すぎてもダメだろうけど。
正直、橋本と2人だと不安もあったのでその辺も考慮してだろう。俺の中で滝井の評価がまた上がった。
「澪ちゃん、晴海君。がんばろうね!」
「ええ」
「ああ」
ダンジョンの入り口は町の外のすぐ側に存在する。冒険者の登竜門になっているので『始まりのダンジョン』と呼ばれている。
現在地下30層まで確認されているが、そこまで行く人はまずいない。ある階層から魔物のレベルが一気に跳ね上がるからだ。
ダンジョンで生計を立てている冒険者は自分の能力に合った階層で魔物のドロップアイテムや魔石で日銭を稼いでいる。平原で魔物を探すより効率がいいらしい。
入り口には冒険者ギルドの職員がダンジョンに入る冒険者をチェックしているようだ。
「ダンジョン探索か?ならギルドカードを見せてくれ」
俺達はギルドカードを職員に渡した。
「ふむ、君達は3人パーティでいいのかな?なら推奨は5階層までだな!」
「ありがとうございます」
「よし、パーティ編成の処理は完了した。それと、君だけダンジョンは初めてだな。ダンジョンについて話そうか?」
「それなら大丈夫です。私達がついてますので」
「了解した。じゃあ通っていいぞ」
パーティ編成はパーティを組み、魔物を倒した時の経験値をパーティ内で共有するためのに行うものだ。
俺達はギルドカードを返してもらい、ダンジョンへと入っていく。
俺達3人のダンジョン攻略が始まった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ダンジョンについて。
滝井が「時間ないから簡単に説明するわ」といって説明してくれた内容がこうだ。
①ダンジョンは不定期で再編成する。それにより階段の場所、魔物の出現数、宝箱の中身が変更する。
②ダンジョンには部屋タイプのフロア、森林などの自然フロア、炭坑、鍾乳洞などの洞窟フロアがある。不○議のダンジョンっぽいな。
③ダンジョンには固定エリアが存在する。主に10、20、30と、10階層おきにボスエリアがあり、それが該当する。
基本的なことはこれぐらいで、後は実際に進みながら説明してくれるらしい。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ダンジョン1F
「この階層は弱い魔物しか出ないよ。晴海君でも倒せるから、しっかりレベル上げていこうね!」
「そういえば宮古君、LVはどのくらい?あれから少しは上がってる?」
「まぁまぁ上がった方だと思う。・・・俺はみんなより3日間遅れているからな。少しでも遅れを取り戻さないと」
「それは前にも言ったけど気にしないほうがいいわよ。焦りは状況判断を鈍らせるわ」
「そうそう、ゆっくり行こうよ」
2人とも気を使ってくれている。でもその通りだよな。焦らずに慎重にいこう。早速魔物が気配感知にひっかかる。
「正面から何か近づいて来てるな。俺が前に出るよ」
「「えっ!?」」
2人はなぜわかるのかと驚いている。あ、そうか。俺は「気配感知」があるから、遠くから近づいてくる魔物がわかる。後で説明するか。
少しして現れたのはダンジョンウルフという名のオオカミ・・・っておいおい!弱いらしいが結構デカイぞ!?大丈夫か?
「グルルルルァ!!」
咆哮を上げながらこちらに向かってきたので、盾で攻撃を防ぎ、昨日に明日ダンジョンに入るからと思い切って購入したショートソードでダンジョンウルフを切りつける。
すると「キャフ!」と断末魔をあげ、驚くほどあっさりダンジョンウルフが魔石にと変化した。
「ね?言った通りでしょ?体は大きいけど弱い魔物ばっかりなの」
「マジか」
「ところで宮古君、どうして魔物が近づいてくるってわかったのかしら?」
「あ、私も気になってた」
「ああ、それは俺のスキルでワームから学習したんだ。「気配感知」っていって遠くにいる魔物がわかる」
「え?自分のスキルをそんな簡単に話していいの?」
冒険者は自分の固有スキルや会得したスキルは基本隠したがる。
日々しのぎを削っている冒険者にとって自分のステータスや能力を曝け出すのは今後、依頼を受ける上で不利になる場合がある。
自分の手の内は隠しておきたいだろう。逆に圧倒的な強さ、強力なスキルがあればステータスを曝け出すことで有利にはなるが、そんな冒険者はほとんどいないだろう。
「2人を信頼してるから話したんだ。一応内緒にしといてほしい」
「信頼・・・な、なんか照れるね。うん、わかった。内緒にするよ」
橋本の顔が少し赤くなった気がするが敢えて何も言わないでおこう。今はダンジョン内だしな。
「了解したわ。それでだけど、ダンジョンウルフはこのフロアでも強いほうだから宮古君のステータスだと一気に下に降りても大丈夫みたいね。5階層まで降りてみる?」
滝井が一気に兵士が推奨した5階層まで提案してきた。もっと慎重に行くべきと思っていたが「私達は7階層まで経験済みだし、宮古君のスキルがあれば大丈夫でしょ」と付け加えた。
俺のスキルまで折り込み済みだとは。それならと、滝井を信じて了解した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ダンジョン5F
「さて、ここからだけど。魔物の強さが格段に上がっているわ。前衛は私と宮古君で、成美は後衛と状況によっては前衛にもきてもらうわよ」
「了解」
「うん、わかったよ」
「それから罠がこのフロアから設置されているのよ。あと魔物の溜り場・・・。モンスターハウスっていうのかしらね。それもこのフロアからみたいよ」
「わかった。気をつけよう」
「罠は見えないけど、地面に設置されているわ。足元を素振りしてから進みましょう」
「因みにどんな罠があるんだ?」
「ええと、落石、吹き矢、影縛り、転移装置ね。あと魔物召喚の罠っていうのがあるんだけど、発動すると部屋に閉じ込められて全滅させないと次に進めないわ」
「あとは特殊な罠だね・・・」
「特殊?」
聞き返したが、橋本の顔が赤い。な、なんでもないよと不用心に駆け出した時にそれは起こった。
『カチッ!』
橋本の足元から聞こえたそれはスイッチだった。同時に俺は「特殊な罠」を理解した。
足元の罠から複数のロープが出現し、罠は橋本の両腕、両足を器用に縛り上げ、絵面的には両腕をバンザイした状態でM字開脚をさせられ、地面に張り付けられていて、いろいろ見えてしまっている。
「み、見ないでー!!澪ちゃん!助けて〜!!」
俺が目を逸らした瞬間に脳内にアナウンスが聞こえてきた。
『スキル:罠感知、罠解除、罠設置を取得しました』
あれ?罠系のスキルを会得したな。俺が嵌ったわけでもないのに・・・。
それに魔物からしか会得できないんじゃなかったか?まぁ、人間がダンジョンの罠設置してるわけないし、罠設置してるのは魔物だという判定か?早速今のスキルを確認してみよう。
【罠感知:地面に設置された罠がわかる】
【罠解除:地面に設置された罠を発動させなくする。またその罠を回収できる。解除にかかる時間は器用さに依存する】
【罠設置:罠を設置できる。設置時間は器用さに依存する】
おお、すごい。罠がわかる上に逆に利用できるなんてな。でも橋本がかかった罠は使えないな。
なぜかって?魔物のM字開脚とか勘弁してくれ。
次の更新は来週を予定してます。作業が捗れば早くなるかもです。