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5人の勇者が魔王を倒します 〜異世界に生贄として召喚されました〜  作者: つきよ
第2章 エルフ族の国リーフイット編
23/23

置き土産〜リーフイット王国到着

明けましておめでとうございます。


新年初めての更新になります。

 太田の襲撃をやり過ごしてから、しばらくして俺はもう一度、気配感知を発動させる。

 もう太田達は射程外にいるようで、感知できなかった。



「バイヤールさん、敵は射程外まで移動したようです」

「わかった!じゃあ早いとこ出発しよう!王国まであと少しだからな。これ以上のハプニングは起こらんだろう!」

「さっきの奴らはいないですけど、近くに敵の反応はあるので気をつけてください」

「ハハハ、この岩石地域の敵は大したことのない敵ばかりなんだ。そんなに危険はないさ!」



 そうか、バイヤールさんは行商で何度かこの道を通っているんだったな。それなら心配ないな。

 俺は馬車に乗り込もうとした時、ふと馬車の上に何か乗っているのが見えた。

 目を凝らして見るとそれは……。



「バイヤールさん!馬車の上に虫の魔物だ!」

「何ぃ! 俺の馬車にちょっかいを出すとはいい度胸だ! 一瞬で終わらせてやる!」



 虫は危険を察知したのか、素早く羽を広げ、高速で飛び回った。

 元の世界でいうハエのような虫だが、サイズがサッカーボールぐらいある巨大なハエだ。



「くそっ!攻撃が当てられん!! クーヤ、魔法で応戦してくれ!」

「了解っス! 『ファイアーボルト!!』」



 クーヤは火の魔法、バイヤールさんは斧で攻撃を仕掛けるも、巨大バエは完全に見切っていて、攻撃が当たる刹那に加速して躱している。

 ハエはこちらに攻撃することも無く、ただ飛び回っているだけのようだった。

 たまに空中に止まってこちらの様子を伺う素振りを見せる。

 一体何がしたいんだ……? ハエの妙な行動を不思議に思って見ていると、ハエの目の奥が一瞬、点滅したように見えた。

 もう一度、よく見てみるとやはり数秒毎に赤く点滅しているようだ。

 まるで、ビデオカメラで動画撮影されているような……!!



「あのハエの目がカメラのレンズになっているのか!」

「えっ!?」



 俺の声に泉が恐る恐るハエの目を確認する。



「……本当ですね。あの両目、カメラのレンズみたいです。虫嫌いの私が見れるので間違いないですね!」ドヤァ

「威張って言うなよ……。だが確信が持てた。あのハエの魔物はさっきの奴の仲間だ。攻撃してこないところを見ると、恐らく偵察するために残したんだろうな」

「でも先輩? この世界にビデオカメラなんてあるのでしょうか?」

「それは何とも言えないが、実際にこうして使われている。どうやって手に入れたはわからないが、使い方がわかるのは俺達の世界の人間だけ、つまりさっきの奴と関係がある可能性が高い」

「情報収集……でしょうか? 一体、何のために……」



 ハエはしばらく俺達を撮影? していたが突然、空高く舞い上がった。

 そして主人の元へ戻るためだろう。

 その方向に向かって飛んで行こうとする。



 やばい! 俺達の情報を太田に知られるわけにはいかない!!



「クーヤ! バイヤールさん! 奴を逃がしちゃダメだ!!」

「えっ? どうしてっスか? 敵の方からいなくなってくれたのに」

「理由は後で話す! なんとかして奴を倒してくれ!!」

「わ、わかったっス!」



 俺の必死な様子にクーヤは慌てて魔法を唱える。

 ハエは空高く飛んでいるので、バイヤールさんの攻撃は届かない。

 クーヤの魔法だけが頼りだが、火の魔法では先ほどのように躱されるだけだ。

 そこでクーヤが選択した魔法は



「ウインドブラスト!」



 クーヤは風の魔法でハエの動きを制限しようと、ハエを覆うように魔法を展開した。

 一方、ハエは突風から逃れようと魔法の合間を縫って躱していく。

 しかし、逃げれば逃げるほど行動範囲は狭くなり……。



「そこっスよ!!」



 ついにクーヤの魔法はハエを捉えて岩壁にぶつかった。

 そのままハエは突風を浴びせられ続けることで羽を広げられず、磔の状態になっている。

 ただ、この魔法はハエを倒すだけの殺傷性はなく、トドメは俺達でやるしかないようだ。

 しかし、ハエは結構高い位置にいる……。



「先輩、これを使います!」

「それは……」



 俺達がクルセイド王国の城下町を出る際に護身用として泉に渡した『シャープシュート』だった。

 泉も同じ事を考えていたんだな。



「できるか泉?」

「やってみます!」



 泉は狙いを定めて………、パシュッ! とキレのいい音と共に勢い良く発射された矢は、巨大バエの額を射抜き、巨大バエは動かなくなった。



「やりました先輩! 命中しましたよ! 密かに練習した甲斐がありました!」

「ああ、やったな泉!」



 泉がハエを倒したところでクーヤも魔法を止める。



「ふぅ……流石にこれだけ魔法を使うと疲れるっスね。もう魔力がほとんど残ってないっスよ……」

「クーヤもお疲れ、助かったよ」



 クーヤにも労いの言葉をかける。

 バイヤールさんにも声をかけようとしたが、バイヤールさんはハエの死骸を見つめたまま



「なあ、あの虫は魔物なんだよな?」

「えっ? 魔物なんじゃないですか?」

「魔物だとしたら死骸は残らないだろう?ドロップアイテムに変わるはずだ」

「……確かに妙っスね。魔物じゃなかったら自然生物っスけど、この岩石地域にも、森でもあんな巨大な虫、見たことないっス」

「……女王様に報告することが一つ増えちまったな。一体、この世界に何が起きていやがる………」



 女王様に報告するために、ハエの死骸は回収することになった。

 その際に俺はハエの目に使われていたレンズを調べた。もう点滅はしておらず、絶命すると同時に機能を停止するみたいだな……。

 レンズ以外はハエそのものなので、泉は離れてその様子を見ていた。……ついさっきまでシャープシュートで狙いを定めるなどガッチリ見てたのに……。



 回収後、すぐに出発した俺達は何事もなくリーフイット王国首都、リーフイット城下町に到着した。



「ようこそ、リーフイット城下町へ。って、お前は新兵のクーヤだったか? 持ち場を離れて戻ってくるとは、何かあったのか?」

「緊急事態っス! 関所が異世界人率いる魔物集団に襲われたんス!」

「な、なんだと!? 関所に配属される者はかなり腕の立つ兵士だぞ! そいつらが負けたというのか!?」

「1匹1匹の能力では負けてなかったっス……。だけど数が多すぎてやられてしまいました……。ここにいるバイヤールさんと彼らは傷ついた俺達を治療してくれて、ここまで連れてきてくれたんス」



 門番のエルフは「うーむ」と唸りながら俺達を一頻り見ていた。そして



「わかった! それは早急に女王様に報告すべき事だな。商人以外の人間を通すのは本来もっと厳重に調べてからなんだが、今回はクーヤと関所の奴らも世話になったみたいだしな。通って構わん!」

「ありがとうございます。助かるっス!」



 普通だとそんなに厳重に調べられるのか……。

 身分証明なんてこのカードくらいしかないぞ。異世界から来たんだしな。

 無事に城下町に入ることができたのはクーヤのおかげだな。



「ハルミ、さっきは聞けなかったんスけど、なんであんな必死に倒そうとしたんスか?」



 ハエの事か……、そういや後で話すって言ったな。

 女王様に謁見する前に話しておいたほうがいいか。報告は詳細に伝えないといけないし、クーヤもそのつもりだろう。

 今の太田の危険性を知れば、エルフの国で太田をなんとかしてくれるかもしれない。

 そのために俺と太田の関係を話さないといけなくなるけど、デスペナルティを受けている現状では、エルフの国の協力が不可欠だ。

 この先、安心して旅ができなくなるしな。



「それを話すには俺がこの世界に来た時の頃から話す必要があるな。少し長くなるけどいいか?」



 すぐには女王様に謁見できないから全然大丈夫っスよ、と言ってくれたので、俺はそれまでの間、ところどころは端折りながら、殺されてデスペナルティをうけた原因の1人が先程の敵、太田であることを話した。

 クーヤとバイヤールさんは複雑そうな顔をしながら黙って聞いてくれていた。

次回は女王様に謁見します。

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