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5話、現世、そこはルイーダが俺を殴る厳しい世界、そして女神様が泣いた。

 NPCのテストを終えた俺達は店内でお昼にする事にした。

 店内のNPC達は、自動AIモードで引き続き動かしている。


 マスターはグラスを拭き、バーテンもグラスを拭き、ルイーダもグラスを拭いていた。

 このアプリのランダム配置と自動AIは気をつけた方が良さそうだ。

 あとでウィルさんにバグレポートを送っておこう。


 そうそう肝心な事をここで一つ、この世界のNPCは冒険者が増え、彼らの仕事引きついたり、冒険者がお店を開いたりすると徐々に姿を消していく事になっている。

 冒険者はNPCとは結婚できないし、NPC同士の結婚も出来ないようになっている。

 時が経過すると、特殊なポジションを除きNPCはこの世界から消え、冒険者が 主体となって世界を動かしていくことになる。


 この酒場もやがてカウンター内でグラスを拭くのは本物の冒険者になるだろう。


  ◇ ◇ ◇


 シルがリュックからサンドイッチが入ったバスケットを取り出しテーブルに置くと、グラスを拭いていたはずのルイーダが、こちらにやってきた。


「お客さん、何かご注文をお願いします。まさか何も注文せず、持ち込んだ物だけ食べる気かしら?」


 グラスを拭く事しかできないと思い油断した俺はマジでびっくりした。

 シルちゃんも半泣きになって謝罪してる…この世界の女神様なのに。


「では、このサンドイッチに合いそうな飲み物とか食べ物はありますか?」


 俺はちょっとビビリモードでルイーダに尋ねてみた。

 だって青筋立ててるんだもん。


「分かったわ。任せておいて」

 ウインクした彼女は笑顔でカウンターに戻ていった。


「シルちゃん、大丈夫?」

「あ、、、あのお姉さん怖いです。どういう設定してるんですか?」


 自動AI、要はお任せモードなんですけどね…。

 NPCについては、もうちょっと説明を読んだ方が良さそうだ。

 

 さて目の前にシルちゃんお手製サンドイッチがあるわけだが、まだ食べれない。

 今食べたら何を言われるか分からないからだ。

 ここはじっとお任せフード到着を待つべし。


 ん?

 んん?

 支払いってどうするんだ?

 

 俺はタブレットを取り出し、建築アプリを起動。酒場のシステムを見てみた。

 金額が設定されていない場合、天界の標準的な価格と金融・貨幣システムを適応する。


「シルちゃん、この世界の貨幣なんだけど俺が昔いた世界の円を使ってもいい?」

「いいですよ、お任せします」


 承諾を得た俺は早速 "円" をこの世界の通貨に設定し金種もお馴染みの物にしておいた。そしてシルちゃんに《Okay》を押してもらおうとした時、奴が現れた。


「お待たせ。フライドポテトとミルク、エールです。合計で1000ヘブンスドルよ」


 ルイーダが笑顔で食べ物を持ってきて、当然だけど代金を請求してきた。

 俺は固まった、金を持ってない。シルちゃんも持ってない。

 通貨の設定だけなので、現金が現れるわけじゃない。


※ここからは全てがスローモーションで動いているようにイメージ願います。


 俺はゆっくりと、苦笑いした表情でルイーダを見る。

 目が合い、無一文と分かると笑顔がスローモーションなのに、一瞬で青筋立てた表情に。

 同時にスローモーションなのに素早く右腕を動かし、それは“表に出ろ”のポーズをしていた。


 俺はシルちゃんに声を掛けた。

「手遅れかもしてないけど《Okay》を押して!」※まのびしたような変な声ね


 言ってから彼女を見ると、白目をむいて気絶していた。


 俺はタブレットを自分の元に引き戻し、NPCテストを停止させようと左手を動かした時、視界の左端から拳が見えてきた。


 それはゆっくりと確実に俺の頬に近づきヒットしった。

  同時に俺は停止を押すことに成功。


 だがコンマ1秒遅かったようで、拳の衝撃を吸収できなかった俺の体は宙を舞い壁に激突、首が良からぬ方向に曲がったようで、ルイーダが俺を殴った状態で停止カウンター内の2人がグラスを拭いた状態で停止しているのが見えた。


 ここで俺の意識は無くなる。


※スローモーションイメージのご協力ありがとうございました。m(*-ω-)m


 ここはどこだろうか、おや?誰かの笑い声が聞こえるぞ。


 真っ暗だった場所がゆっくりと明るくなってきた。

 目の前に見えてきたのは女神プレスコットだ。

 腹を抱えて笑ってやがる!クソ女神め!


 おかしいい、体が動かないぞ?

 おや?、また別の声が?


「ユビーさんしっかりー」


 どこかで聞いた声だな。


「ユビーさん起きてください!」

「死んだら私のサンドイッチ食べれなくなりますよ!」


 あぁ、シルちゃんが呼んでる。

 サンドイッチ食べなきゃ。


「諦めて天国へ行きましょう、勇者ユビキタス」

 女神プレスコットの顔がサキュバスのルビー(嫁)に変わる。


「相変わらず間抜けね」

「シルさんサンドイッチ!」


 そうだサンドイッチが俺を待っている。

 そろそろ起きよう。グッバイ、プレスコットアンドルビー


 おや?俺の顔が濡れているような?

 目を開けると真上で、大粒の涙と鼻水を俺の顔に落とすシダーミルが見えた。


「だだいま」

「おかえりなさい、目を開けないから心配しましたよ」


 思わず抱きしめてしまった。

 

  ◇ ◇ ◇


 そして再び酒場の中。

 NPCテストは停止したので、今は俺とシルの2人きり。

 ルイーダが運んできた飲食物も残っていたので、サンドイッチと一緒に食べる事にした。

 2人は手を合わせて「いただきます」してからサンドイッチを食べだした。


「もう本当にびっくりしたんですから、私が目を覚ますとユビーさん壁に頭打ち付けて、首が変な方向に曲がって泡拭いてたから、もうダメかと思いましたよ」 

「まさかこんな事になるなんて予想外だよ」


 NPCのテストは本当に注意した方が良さそうだ。 

 セーフティー機能を探そう。

 いい勉強になった。


 もう一つ発見があったのは食べ物だ。

 テストモードを停止したら一緒に消えると思ったのだが、残っている。

 食べてみると意外とおいしい。


 こちらも初期の間は、レプリケーターが原材料を作るようなので、その素材を使ってNPCが実際に調理する。

 だからテストを止めても食べ物は残る仕組みのようだ。


 それをシルちゃんに説明してるとうちに、全て食べ終わってしまった。


 「ごちそうさまでした」


 俺はエールをあおったので、少し顔が火照っている。

 

 さて、お昼からは町の作りこみと郊外の牧場を作ろうと思う。

 タブレットがもう一つあれば、作業が捗るのだがな…。


「シルちゃん、このタブレットってもう1台買えないの?」

「これは女神しか買う事が出来ないのですいません。ただ他の女神がタブレット持参で来てくれたら2台で作業する事はできます。でも…」


 シルちゃんは少し暗い表情になった。


「私がお願いしても助けてくれる女神ひとなんていませんけどね…」


 俺としたことがしくじった、触れてはいけないところだったーーー!

 シルちゃんの顔に縦線が入ってる…。


「あぁゴメン!シルちゃんが家事してる間に、俺がデザインして仮配置するからさそれでなんとかカバーしよう!」


「気を遣ってくださってありがとうございます」


 シルちゃんが気を取り直してくれたところで作業を再開する。

 

 建物に関してはほぼ終わっているので、木や植物、小動物を配置した。

 昆虫も必要なのでランダムで配置したのだが、ランダムと言えばお約束。


 以前のように文字列にして書きませんけど、茶色いGっすよG!、あれとムカデもバッチリ入っていた。


 シルちゃんはかなり動揺してましたが自然界にいる物なので仕方なくOkay。

 

 これで町に関してはほぼ完成。

 NPCは酒場での事もあったので、家に戻ってから再チェック。

 次は郊外ね。

 

 せっかくのどかな田舎町が出来たので、背景には小高い丘とその後ろに雪を頂いた標高の高い岩山を配置したくなった。

 イメージ的には空から不自然にのびるブランコに少女が楽しく乗ってるアレね。


 あ!アレを思い出さなくても、目の前に少女がいるじゃないか。

 現世の少女シル、青髪三つ編みおさげの少女がブランコに乗っている所を想像してください。

 それにピッタリ合うような山と、小屋、牧場、ひつじ、白髪のじーさんなど、主要なキャラとセットは全て用意した。(じーさんは後日配備)


 そんな事してたら、日が西に傾き始めたので帰る事にした。

 今日はちょっと遠くまで出てきてるので、早めに戻らないとね。

 でも今後家から離れた場所を作る場合はどうすりゃいいんだろうか?


「シルちゃん、家から離れた場所の地形を作る時って、現場まですぐに移動する方法とかあるの?」


「あります。女神にはこの世界で使用できるコマンドがあります」

 シルちゃんによると、セットと叫んだ後に、GOTOと言ってから座標を叫ぶとその地点に移動できるそうだ。

 シルと一緒に手を繋げば一緒に移動できるらしい。


 タブレットの地図アプリでも同じことが出来るようだけど、移動に関しては1つだけ制約がある。

 家から15キロ以内は使えない。


 これは女神が運動不足にならないよう歩かせるために制限が掛けられているらしい。でもこれって、家を辺境に置いて地形づくりは15キロ先を先に作ればわざわざ歩かなくても済む。

 ちょっと間抜けな制約だ。

 でも俺はシルちゃんと喋りながら歩くのが好きだから、これからも10キロくらいは歩こうと思う。


 それともう一つ分かったのが、コマンドの使用自体にも制限がある。

 それぞれ内容によってポイントが設けられており、1日に使えるコマンドに上限があるらしい。

 移動系は比較的高ポイントらしい。  

 

 そんな話をしているうちに、だんだんと暗くなってきた。


  ◇ ◇ ◇


 もうひといき歩けば家という場所で事件は発生した。


 今、俺の目の前に山がそびえたっている。 

 しかしそれを越える道は無い。


 俺は地形づくりとんでもないミスをした事に気づいた。

 

「シルちゃんゴメン、俺、家に帰る道を作るの忘れてた…」


 町を設置すると同時にシルちゃんの家を隠すために山脈を作ったのだが道を作るのを忘れていたのである。

うっかりさんだな俺、テヘ。


「タブレットで今から作ればいいじゃないですか」

「それがですね、タブレットちゃん燃料切れなんですよね」


 俺たちの周りに冷たい風が吹いた。

 シルちゃんは放心状態だった。

 さてどうするか…


 A、町に戻って泊まる。

 B、15キロ離れた地点へ移動して、転送コマンドで戻る。


 俺はシルちゃんに提案してみたが、疲れもあったのだろうか放心状態のままだった。

 ラマのアランデールは呑気に草をむさぼってる。


 まて、タブレットやスマホの電池が切れた時の対処方法を、例の知恵袋で見た事がある。


 踊ればいい。

 水につければいい。などネタも多かったが1つだけ理論的な物があった。

 それは“電池を外す”


 隣に“女神”はいるが、俺は“神や存在X”に祈るような気持ちで、バッテリーを取り出し少し、間をおいてから装着した。


 そして電源を押す。

 

 点灯した!


 バッテリーの警告がでるが、起動した。

 俺は急いで地形ツールを起動し修正を行った。

 放心状態のシルちゃんの指を勝手に借りて《Okay》を押す。

 目の前に幅1キロの道が出来た。


 それを見たシルちゃんは、放心状態から現世に帰って来た。


「おかえり、シルちゃん」


 ◇ ◇ ◇


 家に戻ったると彼女は床に突っ伏しぐったりしてしまった。

 俺はタブレットを充電器に接続するとキッチンへ向かう。


 何をするかと言うと、シルちゃんに代わって男料理を振舞う事にした。


 冷蔵庫を開け具材を確認する。うむ、これならいける。

 よし、お手軽チャーハンを作ろう。


 俺はエプロンをつけると、IHコンロのスイッチを入れフライパンを置きゴマ油をひく。

 温まるまでに、具材をカットし終え、生協の卵も溶いておいた。


 熱くなってきたら、具材を入れ炒める。軽く調味料も入れる。

 卵を入れたあとにご飯もいれ更に炒める。


 パラついてきたら、塩こしょうなどで味付けをし完成。 

 コンソメスープも作っておいた。


 チャーハンの香りが、シルちゃんにも届いたのが、もぞもぞと動きだした。


「すいません、今日は流石に疲れたので助かります」

「いやいや、いつも作ってもらってばかりだからさ、こんな時くらいお礼させて」

「あなたは最高の俺の嫁ですね、ユビーさん」


 ひょっとして俺の妄想は女神様に見えるとか?


 ◇ ◇ ◇


「上級女神になると見えちゃう場合があるんだなーこれが」


 転生ルームアーキテクチャのスタッフルームで、水晶を見ていた女神プレスコットはつぶやいていた。


 しかし今日の昼は惜しかったな、もうちょっとでユビキタスを仕留めれたのに。

 もっとうまい手を考えないとダメね。


 ◇ ◇ ◇


「チャーハンとても美味しかったです。また作ってくださいね」

「もちろんさ!」


 2人で「ごちそうさまでした」した後、俺は食器洗いをし、シルちゃんは寝転がりながらタブレットをいじっていた。

 行動がいつもとは逆転している。


 洗い終えたあとタブレトを覗くと、見た事あるサイトが目に飛び込んできた。

 例の駅前の電気屋だ。


「ユビーさん、タブレット用にモバイルバッテリー買いました。これでもう燃料切れは大丈夫ですね」

 シルはニッコリ笑った。

 俺もニッコリ笑った。


 その後、俺が風呂を出るとバッテリーが置いてあった。

 え?もう来たの?

 天界の即日配達は深夜だろうが届くようだ。


 3日目無事終了。 明日はNPCの設定と、2つ目の町を作ろうかな?

 それじゃおやすみ、俺!


最後までお読みくださいましてありがとうございました。

3/29 読みやすくするため、文章に少し手を加えました。

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