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38話、勇者と一緒に魔法少女までやってきた!

ついに勇者ギロが転生してきちゃったよ。怪しい少女を連れて…

 …あの杖気になるな。絶対見たことあるんだよな…。

 うーんうーん。漢字を分解してみよう。木丈、木はそのままだろうけど丈は、一が部首らしい。

 んで、長い棒を手にするという意味…うんぬんとWebに書いてあった。

 長い棒を…、シルちゃんが持つ?あっ、思い出せそうだ。

 棒、じゃなく杖だ。


「シルちゃん、前にさ地形を創る時に杖を使ってたでしょ?あれはまだあるのかな」

「家に帰ればありますよ」

「この映像見て欲しいんだけど」


 俺はシルちゃんにタブレットの中継画面を見せた。


「この子が持っている杖なんだけどさ、シルちゃんのと似てない?」

「確かに似てますね。でも天族以外が持っても単なる杖にしかなりませんよ」


 …となると、どこかで偶然拾ったのか?プレスコットにも聞いてみよう

 俺はプレスコットにメッセージを送った。彼女はギロと話しているので終わったら連絡をくれるはずだ。


「とくに脅威になるような子じゃないと思います」

「そうだといいんだけどね」

「ところでユビーさん、おなか減りませんか?」


「パパ、私がお夕飯作るよ!」

「イムちゃん、ここには食材がありませんよ。冷蔵庫も置いてません」


 キッチンはあるのだが冷蔵庫はまだ設置していない。


「ママと街に出て買ってきます」

「マカセロユビ!チュー」

「チューはノーサンキューだ!」


 俺は両手を前に出して拒否した。


「2人だけで行くと危険だから、護衛をつけるよ」

「お願いします」


 ライムとイムは城内にいた兵士と一緒に買い物へ出かけたので、隠し部屋は俺とシルちゃんの2人きりになった。それとラマもいるけどね。

 …ラマの名前、今の間に変えちゃおうかな?候補はラマンデールだったかな。


「シルちゃん、ラマの名前さラマンデールに変えちゃおっか?」

「突然何の話ですか?」

「前にも話したことあるけど、女神のアランデールも一緒になることが多いからさ、ラマのアランデールもいると呼び方がややこしいんだよね」

「うーん、確かに一理ありますね。ラマンデールならカワイイので私も異存はありませんよ」

「それじゃ名前の変更をお願いね」

「わかりました」


 シルちゃんはタブレットを操作したあとラマの方を向いた。


「今からお前はラマンデールですよ」


 彼女が『よしよし』と撫でてあげると、ラマはシルちゃんを舐め始めた。


「シルちゃんと2人きりになるのって久しぶりだよな」

「確かにそうですね。日を追うごとに仲間が増えますからね。明日あたりはラムちゃんが誕生するかもしれませんし…」


 シルちゃんは少し覚めた視線を送って来た。

 …それに関して俺は悪くないからね!ライムが勝手にやってる事だからね!念押ししておこう。


「あれはライムが一方的にだね…」

 シルちゃんは俺の言葉を遮り「わかってますよ」といった。


「ユビーさんは脇が甘過ぎるんです」

「反省してます…」


「もっと私のことも構ってください」


 言い終えると、シルちゃんは俺の肩にもたれかかってきた。

 …なんだこれ!?いい雰囲気じゃないか。シルちゃん、ひょっとして俺の事を…おや?


 あらためてシルちゃんを見るとクークーと寝息を立てていた。

 …今日もいろいろあったもんな、俺も少しだけ休憩すっかな。

 目を閉じるとすぐに意識を失ったので結構疲れていたようだ。


  ◇ ◇ ◇


 気持よく寝ていたのだが、何かがピタっと顔に触れた感触がしたので少し覚醒した俺の耳に話し声が聞こえてきた。

 俺はまどろみの中話を聞いていた。


「ユビトママイネムリ!」

「ママ、パパを起したらダメですってば」

「イムノケチ!チュースルノ」

「そんなのしたら起きちゃいますってば」


「ブチュ」ライムは激しいディープキスをしてきたので、俺は完全に覚醒し目を開けた。

「待つんだライム!俺が寝ている時のキスは禁止だ!」


 俺は両手でライムを掴み引き離した。


「ユビノケチ!」

「ケチじゃない!!」

「だから言ったじゃないですかママ…」


 思わず声を荒げてしまったので、シルちゃんも起きてしまった。

 

「なんですか…」といって目を擦りながら俺の方を見てきた。

「おはようシルちゃん、俺がうとうとしてる間にライムがキスしてきたんだ」

「…いつものことじゃないですか。ふわぁ~」


 シルちゃんは左手で口を隠し大きな欠伸をした。


「食材を買いに行ったのですが、お店がすでに閉まっていたのでピザを買ってきました」


 机の上には紙の容器に入ったMサイズのピザが2枚とプラスチックの蓋をしたコーラのコップが置かれていた。

 …あれ、この世界に紙の容器なんて作る技術あったっけ?街中でコーラなんて売ってないよな?あっ!?


「これ天界のピザ屋じゃねーか!イム?まさかとは思うが…」

「パパ、イムじゃないです。正直に言うと行こうとしてたのですが、プレスコットさんに出会ったので話してみたら、あの方も天界に夕ご飯を買いに行く所だったので、ついでに買ってきてくださったのですよ」

「そうだったのか、でも天界に行こうとしてたんだよね?」

「ママが行きたいっていうから…」

「ライム、ユビニオイシイモノタベテホシカッタノ!」


 ライムなりの気遣いだな、それは正直嬉しいな。


「その気持ちは嬉しいね。でも天界に勝手に行っちゃいけない。何かあったら帰って来れなくなるかも知れないんだ。それは嫌だろ?」

「はい」「ウン、イヤ!」


 天界で捕まったら解放なんて望めない、俺達だってどんなペナルティーを受けるかわからない。こういった事は慎重になってもらわないと困る。


「もう一度同じことをやったらタブレットは没収するからね」

「もうしません、パパ」「ウン」


 俺は2人の頭を撫でてあげた。となりにもう一つ頭が増えたので、おや?っと思ったらシルちゃんだ。


 …さっき私も構って欲しいと言ってたからなー。


 一緒に撫であげると3人とも笑顔の度合いが増した。


 …3人ともええ子や『よしよし』


 ◇ ◇ ◇


 ピザを食べ終えた俺は新たな島作りに着手した。

 ニアが作った拡張アプリは、地形を作った者の思考パターンを解析して自動で地形を配置してくれる。

 アプリが地形を作り終えてから、細かいところを俺が手直しすれば完成。


 日付が変わる頃には魔界側まで完成していた。シルちゃんに依頼した人界側の町も完成していたので、バックドア島から離れた場所に配置。

 

「シルちゃんお疲れ様。先に寝ていいよ」

「はい、ユビーさんおやすみなさい」


 と言ってシルちゃんはベットに潜っていった。

 彼女の寝床には既にライムとイムが寝ていたので、ダブルベッドではあったが少し窮屈そうだ。


 それから俺は魔界側の町を作ることにした。

 こちらも人界側と同様、最初の町は大人数を収容できるように大きめにした。

 建物のデザインは手間を省くために、シルが作ったものを転用して、魔界風に少しだけ薄暗くしておいた。

 魔界だからと言って、暗くし過ぎるのは好きではない。地獄じゃないからね。


 日付が変わり午前1時過ぎ、ニアが帰って来た。


「もどったぞユビー」

「おかえりニア、魔族共はどうだった?」

「今は従順だぞ。私の命令はなんでも聞くようになっている」


 …何をやったのかは大体想像がつく。死人さえ出なければ問題無いだろう。


「ニア、疲れているところ申し訳ないのだが、新しく作った島のNPCとダンジョンをお願いできないかな?」

「わかった、ダンジョンはあらかじめ用意してあるものが幾つかあるので、それを使えばすぐだ。NPCもたいして時間はかからない」

「よろしくお願いするよ」


 突然『ブルブル』とタブレットが振動したので俺は思わず「うわっ」っと声を出して驚いてしまった。


「どうしたんだユビー」


 ニアが心配そうな顔をして俺の方を見る。

 どうやら俺宛にメッセージが届いたので、それを知らせるために振動したようだ。


「いや、いきなりタブレットが振動したから驚いただけだ、すまん」

「そうか」


 メッセージはプレスコットからだった。

 内容はギロに関することで、結論から言うと交渉はうまくいかず、討伐隊の指揮権はギロが一手に引き受けることになった。

 シダーミル教のメンバーを加えることは断られたそうだ。受諾してくれたのは冒険者登録までらしい。

 そして、俺が依頼していた少女についてだが、名はネヘミアといって【異世界】ニアマイアでは魔法少女として活躍していたらしい。

 悪い魔女との戦いで相打ちとなり転生ルームへ。それからギロと共にこの世界へ転生と書いてあった。

 彼女が持っていた杖については出所不明だ。


 俺は、この事をニアに伝えた。


「ひとつ気になるのが、ギロは既にノースブリッジから移動したそうだ」

「こんな深夜に移動するとはな不可解だな。バイオスを夕方出発したのなら、深夜に王都を襲うという作戦なんだろうが…」

「気味が悪いな。何も起こらなければいいが」


 確かにニアのいう通りだ。

 俺は上村さんに、この事を伝え念のため警戒するように依頼した。


 それから俺とニアは黙々と作業を進め深夜2時を過ぎた頃、かすかだが地響きのようなものを感じた。


「ニア、今の感じたか?」

「ああ、何かの魔法による攻撃かも知れんな」


 俺達はバルコニーへ出て、王都の様子を見ると北門の外側で煙が上がっていた。

 ニアは通信用のクリスタルを取り出し、アランデール教の警備兵に連絡を入れた。

 

「何者かが魔法による攻撃を北門に仕掛けています!」


 警備兵の慌てた声がクリスタルから聞こえてきた。

 その直後、今度は北の方向から空を切るような音がしたので、視線を向けると激しい爆発音と共に瓦礫を含んだ爆風がバルコニーを襲った。

 ニアが防御魔法を展開したので、瓦礫の直撃は避けることができた。


 …やばい、ニアがいなかったら大けが…いや、あれは確実に直撃だろうから転生ルーム行きだったな。


「助かったぜニア」

「気にするな、それより中に入ろう」


 俺とニアは急いで部屋に退避してから鉄扉窓を閉じた。

 シルちゃんのデザインしたラブホのような城は防御性が低いため、万一に備え鉄扉窓を設置しておいたのだが、まさかこれが役立つ日が来るとは…。


「一体なんですか…」


 今の爆発音でシルちゃんも目を覚ましたようだ。ライムとイムは豪快に寝ている…あれ、1人増えてるぞ?

 シルちゃんもそれに気づいたようで増えた子を抱きかかえていた。


「この子ってラムちゃん?」

「たぶんそうだよ。こんな非常に……」


 その瞬間、更に激しい爆発音と振動が隠し部屋を襲った。壁には亀裂が入り埃が舞っている。


「ユビーさん、これって逃げた方が良くないですか?」

「ユビー、北門から人界の兵士が侵入してきたと報告が入ったぞ」


 次にタブレットの呼び出し音がなり、ビデオチャットに上村さんが現れた。


「ユビー殿、大変です!ワームとシリアルポートが人界軍に襲撃され陥落しました。我々の同胞も大半が倒されております。いかがしましょう?」


 …こんな短時間で襲撃されるなんてどうなってるんだ?ギロはどんなチートを使ったんだ?

 いや、今はギロについて考えるよりも避難だ。


「みんな聞いてくれ、マルウェアに逃げても同じことになると思うから新島の町に避難しよう。転送移動できる者から至急避難を開始し、それ以外の者はあらかじめ決めておいた場所に移動して身を隠すんだ」


 俺は避難先座標をみんなに送信した。

 …これでアランデール教徒はなんとかなるだろう。魔族も新島に避難させないとな。


「ニア、魔族共に連絡はつくか?」

「主要なメンバーに連絡用のクリスタルを配布しているので大丈夫だ」

「人界軍を突破して、新島の町へ逃げるように指示してくれ。敵側もこの島はまだ知らないはずだ」

「了解した」


 隠し部屋の上階に魔法攻撃が着弾したようで、天井にも亀裂が入り砂利が落ちてきた。


 …まずいな、この部屋から避難しないといけない。


 この衝撃で、豪快に寝ていたライムとイムも目を覚まし、部屋の様子が一変していることに驚いていた。


「ユビー殿、王都を攻撃しているのはこの少女です!」


 天井の欠片が落下したせいか、画面にヒビの入ったタブレットから上村さんの声が響いていた。

 俺はタブレットを手に取り映し出された映像を見る。そこにはギロの後ろにいた魔法少女ネヘミアで、大きくジャンプして城のバルコニーに着地しようとしている。

 …この部屋のバルコニーじゃないか!!


「みんな部屋から退避!シルちゃん廊下に出たらライム達とラマを連れて魔界の町へ先に避難してくれ!」

「わかりました!」

「ニア!パソコンを持って逃げよう!」

「了解した!」


 シルちゃんはラムを抱きかかえライム、イム、ラマンデールと一緒に部屋を出た。


 そして彼女達が部屋を出た瞬間、激しい爆風で鉄扉窓吹き飛び砂埃の中に杖を持った少女のシルエットが見えた。


 …ネヘミアか?


「ったく、埃っぽい部屋だわ…」


 彼女は「ゴホゴホ」と咳をしながら部屋に侵入してきた。

 

 …いや、お前が埃っぽくしたんだろうが!


 埃が少し落ち着くと彼女は俺のほうを見て指をさし、口を開いた。


「魔王み~つけた♪」


魔法少女もいいけどさ、ラムちゃんの生まれるタイミング悪すぎでしょ。

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