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2話、現世、そこは草原しかない世界、しかし朝ごはんは用意されていた。

 トントントン、まな板の上で何かが刻まれている音でユビーは目覚めた。

 ちゃんと布団まで掛けられていた。

 あれ、ここは俺んちか? かーちゃん朝ごはん作ってるのかな?


 ふと天井を見ると、大型の静音ファンがまわっている。


 あぁ、シルちゃんの家か…。

 なんか味噌汁の匂いまでしてきたぞー。

 直後、「ぐぅぅぅ」っとお腹が鳴る。


「おはようシルちゃん」

「あ、おはようございます、ユビーさん。よく眠れましたか?」


 朝から天使の微笑み浮かべるシルちゃんを見て、俺は活力が湧いてきた。


「もうすぐ朝ごはんできますからね」


 シルちゃんは卵焼きを作っているようで、フライパンを器用に振っていた。

 まともな朝ごはんは姫転生以来だろうか、まぁあれも食べれたのは実質2日だけで、3日目は尋問されたあと、ギロチンだったもんなー


 そんな事を考えていると、朝ごはんが出来上がった。

 使い勝手の悪いAMIBIOSテーブル上にクロスが敷かれ、その上に朝ごはんが並べられた。

 輝く白米に、お味噌汁、卵焼き、ほうれん草のおひたし、それに牛乳もあった。


 シルちゃんは手を合わせると「いただきます」と言って食べ始めた。

 一緒に言ってみたが、これを言うのは何十年振りだろうか…。


 俺はまず大好物の玉子焼きに手をつけた。ぷるんぷるんで味付けもグッド!


 あぁこの女神様を嫁にしたい!

 早くルビーを忘れたい!あいつ今も魔王とワイン飲んで楽しんでるのかな…。


「ユビーさん、ごはん終わって片付けと掃除が終われば、今日もタブレット教えてくださいね。今日こそマスターして見せます」 と、平らな胸を張るシルちゃんだった。


 ご飯を食べ終えると、シルちゃんは部屋の掃除を始めた。

 俺はその間に、歯磨きと昨日入ってなかった風呂に入る。

 風呂に入るのも久しぶりだー。

 【異世界】ノースウッドは風呂があまり普及していない。


「やっぱ風呂はいいなー」 思わず口ずさんでしまった。


 部屋ではシルちゃんが掃除機を使っているようで、キーンという高音から察するにサイクロン式で、吸引力が落ちないをウリにしてるアレを使ているようだった。

 でもアレって意外と故障したような気がする。

 確か、かーちゃんが怒っていた事を思い出したところで俺は風呂を出た。


 脱衣所に着替えが用意されていた。

 シルちゃんは気が利く子だ。

 昨夜から今日この時間まで、暖かい家庭の雰囲気を存分に味わう俺。

 この生活を続けるためにも、俺達は力を合わせノルマを達成しなければならない。


 掃除も、風呂も終わり落ち着くと、シルは洗濯機で俺たちの衣類を洗い始めた。

 斜めドラム式の洗濯機で乾燥機能も付いていた。


 このメーカーって確か、気になる木のCMやってたところだよな。

 家本体と一部の変な家具を除けば、まんま俺が大昔いた世界そのままで、異世界感ゼロだよな…。あっ、だからここ現世なの??


 洗濯が終わると、やっとタブレットのお時間がやってきた。


「シルちゃん、昨日教えた手順を思い出して起動してごらん」


 彼女はハイ!と答えると、電源ボタンを押し、起動すると、自慢げな顔で俺に見せてきた。

 俺は「よーしよしよし」といって頭を撫でておいた。


 次に、昨日覚えることが出来なかった操作方法にうつる。

 今日の目標は、地形作成アプリ『レイクポート』で、実際に地形を作ろうと思ってる。


「それじゃシルちゃん、次は操作方法を教えるね」


 昨日と同じようにタップ、ダブルタップ、フリック、スワイプを順に教える。

 今回は奇妙な造語は出て来なかったので、今のところは理解できているようだ。


「はい、じゃこの画面をピンチアウトしてみて。その後ピンチインしてね」


 シルは地図を拡大を、縮小もできた。

 これで基本操作は問題ない。


「シルちゃん、これで基本操作は完璧だね!」

「本当ですか、4年もかかってやっと覚えることが出来ました。ユビー先生!」


 とりあえず、女神学校でシルちゃんにタブレットの操作を教えた先生を俺の

 閻魔帳に加えておこう。


「シルちゃんにタブレットを教えた女神学校の先生って誰かな?」

「アスロン先生です。どうかしました?」

 ……

 ……

 ルビー

 女神アプリコット

 アスロン先生


 書き込み完了!

 これは俺が肌身離さず持ち歩いてるノートだ。


「じゃ次は、地形作成アプリを起動してみよう」


 シルはアイコンをタップしてアプリを起動した。

 それから俺は、ゆっくりと地形ツールの使い方を教え込んだ。


 まずは簡単な1キロ四方のマップから。

 マップはグリッド表示され、1マスは100メートルとなている。

 これは1キロなので10x10マスが表示される。


 次に画面右側の地形アイコンから任意の地形やオブジェクトを選択し、ロングタップし配置したいマスの上にドラッグ。


 複数配置したい時は、先に配置したいマスをタップし選択しておき、先ほどと同じ要領でドラッグすれば一気に同じ地形が配置される。


 このあたりまで、来るとシルの反応が鈍くなり始めた。

 もし彼女のおでこに、液晶パネルがついているとしたら、その画面にWait・・・が表示されているに違いない。


「シルちゃんは、例えばこの家の周辺はどんな地形にしたいのかな?」

「はい、私は森があって、動物がたくさんいて、小川もあるといいかな」


 彼女の要望を聞いた俺は、1キロマップに草原を配置し、次に木を植えようと思ったのだが、このツールやけに詳細な設定ができるようで、木だけでも1000種類出てきた。


 困った俺は、ヘルプボタンをタップし説明を呼んだ。

 どうやら、針葉樹林や広葉樹林を選択してランダムで配置する機能もあったのでホッとした。1本づつ植えてたら日が暮れる。


 なんかこれ、大昔やってた都市経営ゲームみたいだな。

 まぁ最後は恐竜出したり、隕石落として破壊するんだけどね。


「シルちゃん、森は常に葉っぱがあるのが好き?それとも紅葉するのが好き?」

「私は適度に混ざってるのが好きです」


 俺は混交林を選びランダム配置にした。

 すると、木がランダムに配置されていった。

 白樺、ザクロ、カヤ、杉、杉、杉、シロマツ、杉、杉、モミ、イチョウ、杉、杉


 おい、なんでこんなに杉が多いんだ、乱数壊れてるだろコレ!

 これが多いと花粉症になるからな。

 まぁ、あとで伐採すりゃいいか。


「こんな森でどうだい?」

「素敵ですユビーさん」 


 次に、小川や岩、道などを配置し終え、シルのお墨付きをもらったので、俺達は外にでた。


 シルに口頭でマップツールの起動の仕方を教え、先ほどセーブした地形データを表示させ、目の前に仮配置させた。


 すると半透明になった森が現れた。

 これは実物を始めてみた俺も驚いた。すごい迫力である。

 シルが《Okay》を押すと「ポン」という効果音と煙と共に森が現れた。


「ユビーさん、私やりましたよ!ついに森ができました」


 シルは感動したようで、目から水が出ていた。


「でも、動物がいませんね」


 Wikiによると、動物や村人、モンスターはNPCクリエイター『フォスタ』というアプリを使うらしい。


 これも、地形作成と同じように1キロか10キロマップを出し、そのエリアに出現するNPCを一覧から選択し配置する。

 個体数や倒された後の再出現間隔なども設定でき、初期パラメーターを変更する事でボスモンスター並みに凶悪なウサギを作る事もできそうだ。


 個別に配置するのが面倒だった俺は、《動物を選択》を選択し、《森にいる一般的な生物をランダム配置》を押した。

 ランダム配置ね…。


 リス、ツチノコ、ラマ、ラマ、ラマ、クマー、ラマ、ラマ、キツネ、ハクビシン


 案の定、見事な偏りっぷりだった。

 そもそも、森にラマはほとんどいないだろうよ。


 俺はこのアプリの作者が気になり、画面右上のヘルプをタップし、作者情報を見てみた。


 それはウィルさんだった。

 俺は古い記憶を検索すると該当する人が1件あった。


 この人って確か、さっきも言った都市経営ゲーム作った人だよな?

 だとしたらラマは納得できる。3000ではいたるところに奴とブロッコリーが転がっていた。デラックスの頃には会社を追放されたような気がするが…。


 今は天界向けにアプリ作ってるんだなー。

 こんな所で彼の最新作に出会えるなんて思いもしなかった。


 偏ってるけど動物の配置も終わったので、シルに《Okay》を押してもらうと、白い煙と共にラマが現れた。


「わーすごい」


 彼女がラマを見た時の表情を絵文字で表すなら、>_< こうだろうか?

 決して苦しんでいるわけではなく、喜んでいるほうね。


 シルはラマ目がけて走って行くと、躊躇なく騎乗した。

 乗りラマだったようだ。


 説明を見ると、ごく稀に騎乗できるレアタイプアリとあった。

 流石女神様、いきなりレア個体を引き当てたようだ。


 こうしてシル家の周囲は動物が住む森に囲まれたのだった。


3/29 読みやすくするため、文章に少し手を加えました。

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