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25話、テスト稼働、冒険者登録と初めてのクエスト

「測定結果が出ました。まずユビキタスさんですが…天地創造ってなんですか?」

「いや、俺が知りたい」

 おそらく地形を作り続けた影響と思が、俺が山を作ったとは言えない。


「こんなスキル見た事ありませんし、マニュアルにもありません。あなたは何者ですか?」

「普通の初心者です」

「確かにレベルは低すぎますね、普通冒険者を目指すなら最低でも10欲しいところです」

 レベル1は最低ラインにも達していないのか。


「職業は建築家ですね」

「質問がります」


「はい、どうぞ」

 俺はスキルの後ろについているランクとレベルの関連性を尋ねてみた。


 ランクは、例えば建築なら作れる建物の種類に関係するらしい、ランクAは世界にある全ての建物の設計や建築が可能。

 レベルは建築の場合だと耐久性に影響するらしく、俺が建物を建てたとしたら欠陥だらけで建設中に倒れるとだろうと言われた。

 俺の不安は的中していたことになる。建設中に崩れるなんて…。ただ設計に関しては影響しないのがせめてもの救いだろうか。


 この説明を天地創造に当てはめると、すべての地形を操作できるけど、レベル1なので耐久は無いに等しい。

 壁を作っても、軽く叩けば崩れるという事だろう。


「建築家の冒険者なんて存在しないので、早めに戦士系のスキルを覚えてください」

「わかりました…」

 でもアドバイザー登録してるので、スキルを除くステータスは固定されてたよな?

 俺ずっとレベル1じゃん。


「次はシダーミルさんですね」


―――冒険者カード ――

名 前:シダーミル

種 族:天族(雌)

種 別:冒険者

職 業:家政婦

レベル:10

経験値:0

STR:**

DEX:**

INT:**

幸 運:100

知 性:B

戦 術:F

速 さ:F

防 御:F

魔 術:C

魔 力:C 

器 用:B

スキル:家事S・裁縫A・祈祷A・農業B・調教B・建築C・獣医C・魔法C

――――――――――――


「結果ですが、**は測定不能ですね。低すぎるのかしら…」

「ひ、低すぎて数値が出なかったのですか?」

「そうですね、あなたくらいの年齢だと可能性はありますよ」

「そんな…」

 彼女は落ち込んだ。でもこれは天族は数値が設定されていないって前に言ってたから、それが原因だろう。

 シルちゃん気にするんじゃない。あとで俺が説明しておこう。


「それと、どうやればこの様なスキル構成になるのでしょうか?」

「どうやればと言われましても…。家事全般やラマの世話していただけです」

「この祈祷ってスキルはなんですか?」

「私が聞きたいです…」

 祈祷は呪文を唱えて神仏に祈る事を意味するとネット上の知恵袋に書かれているので、おそらく転送コマンドの使用していたのが原因だろう。


「種族は天族でしたか…。大変かも知れませんが頑張ってください」

「え?それはどういう意味ですか?」

 お姉さんの説明によると、天族は大昔繁栄した種族だったが、禁忌を破り神の逆鱗に触れ衰退したらしい。

 現在の天族は、その残りカスのようなものらしく、神に逆らった残念な種族という扱いらしい。

 要は嫌われ者?と言えばいいのかな。


「そんな酷い扱いなのですか…」

「それと家政婦の冒険者なんてあり得ません。魔法ランクがCですから、それを鍛えて魔法使いになる事をお勧めします。調教師でも構いません」

「わかりました…」

 シルは力なく頷いた。かなりショックを受けたようだ。


「私って女神に向いてないよね…」シルは少し涙目で呟いた。


「最後はプレストニアさんですね」


―――冒険者カード ――

名 前:プレストニア

種 族:ダークエルフ(雌)

種 別:冒険者

職 業:占い師

レベル:100

経験値:0

レベル:100    

STR:150

DEX:50

INT:**

幸 運:100

知 性:S

戦 術:S

速 さ:A

防 御:A

魔 術:**

魔 力:**

器 用:AA

スキル:占星術S・演算S・空間認識B・呪術B・ハンターB・魔法防御C・家事F


――――――――――――


「え?レベル100!の占い師??」

 お姉さんは、思わず叫んでしまった。響き渡る声に冒険者がざわめきだし、同時に視線が集まる。


「おい聞いたかレベル100だってよ」「測定器の故障じゃねーのか?」「胸のレベルが100なんじゃねーか?」

 周りにいた冒険者達は好き放題言っていた。


「演算、空間認識、呪術を私は初めて見ました。何をすればこんなスキルを修得できるのでしょうか?」

 占星術は分からないが、演算と空間認識はプログラミング言語を覚えた結果だろうな。


「な、何と言われてもだな…、アプリを作っていたのだ」


「アプリ??プレストニアさん、あなたのステータスはでたらめです。レベル100の報告は今までありません」

 お姉さんの言いたい事はよくわかる。

 俺達のスキルは、この世界に来てからやっていた事が強く反映されているようだ。


「皆さんは一体何者ですか?」

 お姉さんは俺に視線を移した。

 そう言われても話すことは出来ない。たとえ話しても信じてくれないだろうし。

 適当に言っておくかな。


「田舎の集落でずっと修行していたせいかもしれない。俺達はみんな同じ集落出身で、お金に困ったから王都まで来たんだ」

「途中に2つも町があったのに、わざわざ王都へ?」

 俺は金に困って出てきたという事にしてみたが、なかなか納得してくれない。

 どこまで聞かれるんだろうか。


「ここが一番稼げるって、じっちゃんが言ってたんだ」

「事情はわかりました」

 おや?じっちゃんが効いたか??


「ニアさんは、最上位と言っても過言ではない程のステータスをお持ちです。しかし、占い師では冒険者は務まりません」

「確かにそうだな」

「魔法防御がランクCなので、これを生かして魔法使いになるか、ハンターを更に伸ばすのもいいかも知れませんね」

「ハンターは嫌いではない」


 ニアのやつ、イノシシを狩った時、ランクがアップしてたのかも知れないな。

 レベル100のボーナスと運を最大限利用したら、1回の狩りでBまで上がってもおかしくはない。


「では皆さんに、ギルドより支度金として1人1万ミル支給致します。これで最低限の武器と装備を整えてください」

 手元にお金が無かったので正直ありがたい。

 

「整いましたら、クエスト掲示板から初心者用の物を選んでお持ちください。皆さんのカードにクエスト内容を登録しますので、それが出来たら出発してください」

「クエスト依頼書だけを剥がして、カードに登録せずクリアした場合は?」

 少し気になったので、俺は聞いてみることにした。


「モンスターを討伐したとしても、カードに記録が残らないので無効となります」

「わかった」

 そのあたりは抜け目がない様だ。


「初回のクエストですが、王都の周辺に現れるスライム退治はいかがですか?」

 最初だしそれくらいにしておくか。お姉さんの提案だしな。


「それでお願いするよ」

 お姉さんは3人分のカードにクエスト内容を登録した。


「これで登録できました。頑張ってスライムを退治してくださいね。それと戦う前に3人でパーティーを組んでください。経験値が等分されます」

「任せてくれ!」

 俺達はギルドホールを後にした。


  ◇ ◇ ◇


 まず、受け取った支度金で武器や防具を調達だ。


「先に武器や防具を調達を調達しないか?」

 俺はみんなに提案してみた。


「それもいいが、修得しているスキルで何が出来るかチェックしてみたいのだが?」

「私もその意見に賛成です」

 シルもニアと同意見だったので、俺達は王都の郊外でスライムを狩りつつスキルをチェックする事にした。


 このクエストはスライム10匹倒して6000ミル貰える。

 俺達はパーティーを組んだ後、南門を抜け草原を進み森の手前まで来た。

 このあたりは低級のモンスターが出てくるはずだ。


「スライムいましたね」

 シルが指さした方向にスライムが多数いた。

 

 おや?なんだか1匹だけ集団で攻撃を受けているようだ。

 スライムの世界にもイジメはあるようだな。


 俺は可哀そうに思い、イジメられているピンク色のスライムを助けてあげた。

 そうだ調教の練習に?


「シルちゃん、調教してみるかい?」

「やってみようかな…。調教ってどうやるのでしょう?」

 俺はタブレットを開きHelpメニューをみた。

 そこには、清らかな気持ちで、さぁおいで、一緒に旅に出ようよ。大切にするからさ。といった感じで行うとあった。


「わかりました。やってみます」

 シルちゃんはスライムに向ってつぶやき始めた。

『一緒に旅に出ましょう』『大切にしますよ』『さぁ私と仲良くなりましょう』


 少し間を置いてスライムがシルに近寄って来た。

 彼女が手を出すとぴょんと飛び乗り肩のところまで移動してきた。どうやら調教に成功したようだ。


 俺達に新しい仲間が加わった。せっかくなのでスキャンしてみた。


――― スライム ―――

種 類:モンスター ▲

種 別:スライム

STR:100

DEX:30

INT:30

幸 運:100

知 性:B

速 さ:B

防 御:F

魔 術:F

飼い主:シダーミル/ユビキタス

忠 誠:100   

能 力:変身A   ▼

――――――――――――


 正直これが凄いのかどうかわからないが、飼い主が2人になっていた。

 なんだこりゃ?最初に俺が助けたからかな。

 それと変身ランクAは興味深い。


「このスライム、どうやれば変身できるんだ?」

「私もわかりません」

 俺はスライムの説明を見てみた。変身能力付きはレアな個体らしいが、変身方法は書かれてなかった。

 スライムはシルの頬をスリスリしていて、とても懐いてるようだ。


「次は私がやってみよう」

「ニア、お前のスキルで戦闘に使えそうなものって呪術かハンターだよな」

「そうだな」

「イノシシはどうやって仕留めたんだ?」

「止まるように祈ったら、動きが遅くなったので走って追いつき手刀で仕留めた」

 ほとんど肉弾戦じゃないか。という事は、相手に負の願いを込めれば成就するのかな?それが呪術か。

 

「ニア、そこの緑色のスライムに隣の赤色のスライムを殴るように祈ってみてくれ」

「やってみよう」

 ニアは目を閉じると精神を集中し始めた。緑と赤が喧嘩をするイメージを浮かべる。

 するとスライムは激突し始めた。


「おぉ、これは成功じゃないか?」

「なるほど、呪術はこうやって使うのだな」

 2匹のスライムが戦ってる隙にニアは手刀で仕留めた。それはとても鮮やかな手捌きだった。


「お前のスキルは扇動の代用になりそうだな」

「確かに、扇動の説明を読むと似たような効果だな。次はユビーだな」

「俺は天地創造だけだ」

 まず壁をイメージし、残りのスライムを囲う事にした。次に水をイメージして壁の中をそれで満たす。水位を確認するために壁は若干透明にしてある。


 5秒ほど経過すると半透明の壁が現れ実体化し始めた。そして地面から水が湧きだし水位が上がっていく。

 しかし水位が半分に達すると壁にひびが入り始め、やがて壁は崩れ水も消えてしまった。

 レベル1の俺が作ったので水圧に耐えれなかったようだ。  


 そして怒ったスライムが俺に襲い掛かって来た。

 

 これが意外と痛い、全身にチクチク刺すような痛みが走る。流石に7匹のスライムにボコられると多少のダメージを受けるようだ。


「ちょ!これ結構痛いんだけど、誰か助けろよ!」

「手刀を下手に使うと、ユビーを両断してしまうかも知れんしな」

「それはシャレにならないから止めて!」

 俺は視線をシルに移した。


「私も、7匹を同時に調教なんて出来ません。魔法もよくわかりません」

 ノースブリッジで俺が気絶した時は優しかったシルちゃんが、今日はなんで冷たいんだ!


 駄目だ、このままではジワリジワリと体力が減っていく。

 俺は神にすがる思いでラマに視線を移した。


 『仕方ねーなー』といった感じの表情でアランデールが俺に近寄ってきた。そしてスライムを次々と蹴飛ばす。

 蹴り方が絶妙だった。スライムの攻撃は、地面から飛び上がり俺に体当たりしダメージを与える。

 ラマはスライムが跳躍しているところを狙って蹴り飛ばしていた。スライムを捉える時の眼光はラマとは思えない鋭さだった。 

 

 なんてラマだ!中に誰か入ってるんじゃないの?お腹にファスナーとかあったりして!


 俺はスライムに攻撃された時、姿勢をわざと崩し何気なくアランデールのお腹を覗こうとしたが失敗した。

 再びチャレンジしたが、突然向きを変えられたので失敗。やはりコイツは怪しい。

 3度目の挑戦をした時、最後に残ったスライムと一緒に俺は蹴り飛ばされた。

 

「アランデール凄いです」

 シルはラマを撫ではじめた。肩に乗っていたスライムも、アランデールの背に移動し飛び跳ねていた。

 おそらく祝っているのだろう。

 冒険者カードを見ると、クエストクリアの文字が点滅していた。


「カードを見てみろよ、クエストクリアになってるぞ、俺は経験値が30増えた」

「本当だな、私は50入ったぞ」「私も50ですね」

 ニアとシルは50入り俺だけ何故か30だった。経験値は等分じゃなかったのかよ!


「私とシルは幸運100が作用してるんじゃないかな?」

 マイナス100の俺はずっと損じゃねーか…。


 なんてこった…。

 どのみちレベルは1で固定だし、みんな楽しければそれでいいや。


「ところでユビー、お前の天地創造は目くらましに使えそうだな」

「そうかも知れない、相手を一瞬だけ止める事は出来そうだ」

「戦術を工夫し、私達と連携すればうまくいきそうな気がするぞ」

 だが、これじゃダメだ。せめて剣術だけでも使えるようにしよう。


 それぞれのスキルの特徴が分かったところで、王都へ戻る事にした。


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