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15話、女神テラとIT無双の魔王

 ニアもユビーと同様、最初に死んだ時の事を覚えていなかった。


「ここにある通りだ、私はある儀式で瞑想をしていたのだが、それを終え目を開くと転生ルームだった」


 目を開くと転生ルームってところは同じなんだよな。

 特に痛みも無かったし、どうやってやられたのだろう。

 

「ユビーもテラに?」

「そうだよ、俺の場合は寝ている間だ。目覚めたら転生ルームだ。最初は夢でも見てるのかと思ったよ」

「夢なら良かったのにな」

「本当にそうだ。そう言えばシルちゃん、女神は他の世界に入ることは可能なんだよね?」

「できます、ただし天界を経由する必要があります」

「軌道エレベーター?」

「その通りです」

「それを使わなくても行く方法ってあるのかな?」

「私は知りませんが、テラほどの上級女神ならチート技の一つや二つ持っているかも知れませんね」

 

 なるほど。

 しかし、他の世界まで行ってわざわざニアを選んだ理由はなんだろうな?

 彼女はどんな生活をしてたんだろう。

 

「話を戻すけど、ニアがやっていた儀式ってどのようなものだったんだ?テラと関係があるのか気になるんだ」

「私はずっと魔王をしていたから、その時も魔王だった。即位して51年目だ。」

「長い間統治していたんだな。それで儀式と何か関係が?」

「少し長くなるが、これは私が魔王になる前の話だ」


 それ以前の魔界は、権力闘争や派閥同士の争いが絶えず、人界から勇者どもが攻め込んで来ても争っている有様だった。

 数多くの派閥が存在し、王は上級派閥が担ぎ上げたお飾り。

 実権は上級派閥が握っていて民は搾取される一方だった。

 

 当時のニアは小さな派閥の長をしていた。

 それは規模も財力も小さく、上級派閥に比べればゴミのようなもの。


 ある日、王都でニアは信じられない光景を目にする。

 生活苦を理由に、娘を売りに出す親がいたのだ。

 娘は泣き叫んだが、親はどうする事も出来なかった。

 

 彼女はそれを放っておく事ができず、売られた娘を買い戻し両親の元に返してやった。

 そこで親にこう言われた。

「娘が戻ってきても養う事ができない。また売りに出すしかない。あんたのせいでもう一度娘と別れなきゃいけない」


 それを聞いたニアはとてもショックを受けた。

 王都や周辺の町じゃ、親が子を売るのは日常的になっていた。


「そこで私は決意した。魔界に巣くう支配層、上級派閥を一層すると」


「とても辛い世界だったんだな」

 俺がいた世界も、自分が住んでいた国はそうじゃなかったが、紛争地域に行けば似たような環境があるかも知れないな。


「私がその世界の女神ならそんな事はさせません」

 ニアの話を聞いたシルは胸を張り力強く言った。


「そうだな、シルが女神だったら世界は変わっていたかも知れない。しかし、あの世界に女神がいるなんて誰も思ってなかったし、リストによればネヘミヤという女神がいたようだが、下界に関心が無かったのだろう」

「女神ネヘミヤですか、彼女も古くからいる上級女神です。そんな酷い世界を放置するなんて…」

「その証拠に私達には何一つ明るい未来が想像できなかった。救済らしきものは一切無かった。支配層にとっては良い世界だったかもしれないがな」


 それからニアは同規模の派閥に声を掛け、賛同者を集め少しづつ力をつけて行った。

 いきなり武力に訴えても犠牲が出るだけで誰も得をしない。

 少しやり方は汚いが、上級派閥同士を争わせるように仕向けた。


 奴らは金が絡む事に敏感だから、相手の派閥が裏でこっそり手を回して、自分たちの利権を狙っていると思わせた。

 この作戦はうまくいき、お互い疑心悪鬼となり、やがて争いが始まった。

 彼らの争いは長引き、お互いに消耗していった。


 ニアたちは、その影響を受ける民や、彼らの末端の組織を説得や支援し、彼女の味方にしていった。

 そして奴らが消耗しきったタイミグで、一斉蜂起し魔界の中枢から追放する事に成功。


「それが落ち着いた頃、次の魔王選びが始まった。皆は私を魔王に推挙したが、私は固辞しつづけた」

「何がきっかけで魔王に?」

「魔界の混乱に乗じて人界から勇者が攻め入って来たのだ」

「さすが勇者、じっくり魔界の様子を伺っていたんだな」

「その勇者なんだが、実は上級派閥と通じていた事が分かってな…」


 奴らは定期的に戦闘をする事によって、戦費という名目で民から金品を搾り取っていた。

 要は人界も同じ状況だった。

 そして勇者どもは、魔界の上級派閥が弱体化した隙を狙って、支配しようとやって来た。


「そこで私は魔界を結束させるため、新たな魔王となった」

「なるほど、それで魔王になったんだな。で勇者は?」


「激しい戦闘の末、奴らを打ち破った」

「ニアは戦闘の力も知略もあるし、さすが知性Sランクだ。俺にも少し分けて欲しいところだ」

「ぬかせ」

「それから人界のほうは?」


「あちらにも私と同じような事を考えていた奴がいてな、それが新たな勇者となり私たちは話し合いをする事になった」

「平和的に持って行けたのですね」

 ニアの話を聞いていたシルが言った。

 

「そうだ、お互いに無駄な戦いはせぬ事、そして交流や交易をする事で合意した」

「それから51年間は平和な世界に?」

「うむ、それで戦いが終わった日を記念日として、犠牲者に対し鎮魂の儀式を毎年行っていてな、51年目の儀式の最中、テラによってネヘミヤを追われた事になる」


 よりによって、鎮魂の儀式の最中に他人の世界に入り込んでやるとは、テラとはどういう女神なんだ?

 

「それでは、ニアさんは戦いを終わらせて平和をもたらした人という事ですね」

「確かにそういう見方もできるな」

 

「それに比べると、ユビーさんは単に大きな胸が好きな人にしか見えませんけど?」

「酷い言い方だなシルちゃん。俺は確かに世界を救うような事はしていないけどな」

「なぜ女神テラがユビーさんを狙ったのか分かりませんよね?ユビーさんは生前何をしていたのですか?」

「俺はNPOと呼ばれる慈善事業を行う団体で、恵まれない子供の世話をしていたんだ」


「そうか、ユビーは人助けをしていたのだな」

「どうも困った人を見ると放っておけなくてな、この世界に来た時もシルちゃんを放っておけなかったので残ったんだ」

「最初は帰ろうとしましたけどね?」

「ははは、最初シルちゃんの得体が知れなかったのと、直前に嫁に裏切られるというショックなイベントもあったからな」

「ユビーは嫁がいたのだな?」

「そうそう、でも正体はサキュバスでさ、今は魔王と仲良くやってるだろうよ。だから異世界と名のつくところに転生するのは止めて、天国も考えたんだけど、ここを見つけたので来てみた感じだ」


「私はお2人が来てくださって本当にありがたいと思ってますよ」

「こちらこそ、まさか世界作りに参加できるとは思ってなかったからな、こちらこそありがとう」

「うむ、私も同じだ。飯まで用意してくれて感謝する」


 3人の結束が改めて強まった瞬間だった。


 しかし、ニアは世界を平和に導いた者、俺は困った人を放っておけない奴、共通点は無駄な争いを好まないというところか。

 これだけでは、テラの目的がわからないな。 

 でも、俺達を集めて何かをさせたいって事なのか。

 ここで平和な世界をつくらせるため?まさかね。


「しかし、これだけじゃテラの目的は分からないよな。俺とニアの共通点は簡単に言えば争いを好まない事だろ?」

「そうだな」

 俺の問いかけをニアが肯定した。


「その後、他の世界で魔王をやってときは、殺戮とかしたのか?」

「私は殺戮を好まない。それからは勇者や賢者の相手ばかりだ。私は平和的な解決を求めたが、奴らは好戦的な者しかいなかった」


 なるほど、魔族=悪を信じ切ってるタイプの勇者だな。

 ちなみに俺が勇者をやっている時の魔王は、悪い奴らばかりで人々を苦しめていた。

 ただ考えようによっては、あちらも生きるためにしていたのかも知れないが…。


 その後、3人とも黙考したが何も浮かなばいので、この話は一旦区切ることにした。

 

「この話はここまでにしよう。情報が少なすぎて考えるだけ時間の無駄だ」


 確かにその通りだ。 この件はもう少し情報が欲しい。

 さて、食べ終わったのでいつものアレを…。


「おにぎりも食べ終わったから儀式をして作業を再開しよう」 


 3人は手を合わせ「ごちそうさまでした」をした。

 アランデールも同じタイミングで軽く頭を下げていたので、俺達の真似をしていたのだろう。

 

 それぞれが作業に入ろうとした瞬間、ニアが話しかけてきた。

「そうだ、ランダム配置を選択した時、乱数に偏りがみられる原因を特定したぞ」


 マジか。


 動物をランダム配置した時の偏りは忘れられない。

 リス、ツチノコ、ラマ、ラマ、ラマ、クマー、ラマ、ラマ、キツネ、ハクビシン。

 この偏りのおかげで、シルちゃんは乗りラマのアランデールに出会えたんだけどね。


「ウィルなる者が作ったアプリに手を加えた奴がいてな、それがコードをスパゲッティ化させていたのだ」

「どういう意味だ?」

「これを見てくれ、ウィルのコードと後に追加されたコードを分離してみたんだ」


 コードは、作った人によって若干のクセがあるらしく、ニアはそれを分離したそうだ。

 彼女はプログラマーになった方が幸せかもしれない。


「とくにここだ、ウィルのコードはすっきりしてるだろ?それに比べ後者のほうは…」


apply plugin: 'kotlin-android'

android {

 compileSdkVersion 31

 

「コンパイルに使うAndroid SDKのバージョンがだな…」


 さっぱりわからん。

 とにかく原因を発見したことは良いことだ。


「そ、そうか。ニアはすごいな。この作業はお前にしかできないな」

「なんだ、褒めても何もやらんぞ」


 その後もJAVAとの連携が凄いなど、ニアの解説はしばらく続き、それが終わった頃シルはアランデールと一緒に寝ていた。

 お腹が落ち着いたところに、この呪文のような解説だ。子守唄になったのだろう。


 俺も寝落ちしそうなくらいつらかった。


「説明は以上だ、私は作業を続けるとしよう」


 やっと解放された。

 俺はしばらく海を眺めることにした。


 ニアの解説で俺達にとって大切な重要だった部分は、AIの改良のところだ。

 天界のネットは、俺がいた世界のもを引き継いでるので、検索すればAIに関する情報もいろいろと出てくる。

 ニューラルネットワークやディープラーニングといった俺の知らない言葉を使い、結論から言えば冒険者と見分けがつかないNPCを作れると言っていた。

 これで全てのNPCのAIも前進するだろう。


 あとは地形を早期完成させる事だ。


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