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13話、世界一安全なダンジョンを目指して

「ごちそうさまでした」をしたあと、ニアが使うパソコンの話をシルにした。


「なるほど、そういう事でしたら仕方ないですね。買いましょう」

「お金は大丈夫なのか?」


 それを聞いたシルはタブレットで残高を確認した。


「はい、まだ大丈夫です」

「質問なんだけど、そのお金は誰が工面してくれるの?天界?」

「そうですよ。よくご存じですね」


 女神は毎月天界から、完成している世界の広さや冒険者の人口に応じて活動資金が支払われるらしい。

 シルは世界中を草原で覆いつくしてるので、広さに関しては条件を満たしているらしく、それなりの額を支給されているようだ。

 

「パソコンでしたらこちらから選んでください」


 シルは例の電気屋のオンラインサイトを開いた。

 そこには俺が昔いた世界のような多種多様なパソコンは無かった。

 メーカーは多くなく、機種も各社デスクトップ型2種類、ラップトップ2種類と言った感じで、とても選べるような状況ではない。

 原因として考えられるのはメーカーが少ない、そして需要も少ないのだろう。

 俺が昔いた世界を再利用してると言っても、天界の人口じゃパソコンの開発や製造も人手不足でうまくいってないのだ。

 全てが悪循環になってるのが今の天界だ。


「ニア、俺達は外に出ることが多い、だから多少性能は落ちてもラップトップがいいと思う。これはどうかな?」

「うむ、悪くないな。あまりシルに負担はかけたくないので、これくらいでいいだろう」


 俺が選んだのは牛の柄が入ったメーカー。天界でも細々と営業しているようだ。

 価格は99000ヘイブンスドル!


「じゃシルちゃん、これをお願い!」

「はい、わかりました。5年間保証もつけておきます」

「そこは任せるよ」

「購入完了しました」


 この店の配送はとても速い。

 うまくいけば寝る前には届くのではないだろうか?

 パソコンの購入も終わり、一段落したところでシルがニアにお風呂の誘いをしてきた。


「ニアさん、お風呂一緒に入りませんか?」

「風呂か、久しぶりだな」


 俺も一緒に入りたいな…。

 だが今はダンジョンだ。


「俺は、王都周辺のダンジョンを作ってる」

「ではあとで、ダンジョンのラフを見せてくれ」


 というと、2人は浴室に消えて行った。

 うーん、ニアのふくよかな胸を一度生で…、見てみたいな…。

 そうだ、ノースブリッジに温泉を作る計画を今度実行しよう。


 でもまずはダンジョンだ。


 胸の誘惑を断ち切り、気持ちを切り替えた俺はダンジョンを作り始めた。

 コンセプトは死者を出さない世界一安全なダンジョン。


 だからと言って、モンスターが弱いとか数が少ないという意味ではなく。

 おもいっきりダンジョンで戦い、死闘を繰り広げ勝ってもらう。

 そして冒険者が瀕死になったときは、モンスターのセーフティー機能が働き、逃げるか、冒険者に築かれないようにうまく倒される。

 要はどこまで迫力のある演技が出来るかだ。

 

 問題はモンスターのAIがどの程度まで設定できるかだ。

 王都のNPCのようでは話にならない。


 ここはニアと相談だな。


 とりあえず、中級ダンジョンという事で10階層くらいにしておくか。

 広さや、形状を完成させた俺は、ボスモンスターの設定に入った。

 俺は、Helpを見ながら各項目に数値を入れた。


 Body[256]

 Hue[105]

 Name[Dragon]

 Stats/Lv./STR/DEX/INT/HP/HpGain/[20][500][350][400][25000][50]

Resist/Ph/Fi/Co/En/Po/Ma/[70][95][80][85][90][70]

 AI/[]


 ボディーはドラゴン(256番) にして、攻撃はブレスや炎系全般。

 AIのところは、ニアと相談するため空欄にしておいた。


 とりあえずはこんなところかな。


  ◇ ◇ ◇


 その頃湯けむりにつつまれたお風呂では、シルとニアが雑談をしていた。


「これはまた狭い風呂だな」

「ニアさんの家は大きなお風呂だったのですか?」


 彼女は風呂好きだったので、魔王の立場を利用して豪華な風呂を居城に作らせていた。

 湯は天然温泉かけ流しだ。

 それから比べると、この家の風呂は狭かった。

 しかしシャワーは彼女がいたどの世界にもなかったので、そこに関しては珍しがっていた。


「このシャワーというのはすごい発明だな」

 

 シルの家はユニットバスなので、シャワーを持つためには中腰になる必要があった。

 ニアがその姿勢になったとき、シルの目の前に大きな双玉が現れた。


 ぺたん「ちょっとニアさん、これどけてください。不愉快です」

 シルの顔にニアの胸が当たっていたのだ。


「すまない」

「ニアさん大きすぎなんですよ!」

「そうか?」


「気をつけてください、ユビーさんは大きな胸が大好きなようです」

「そうであったか。別に減る物ではないし、見られても触られても問題は無い」

「そこは問題ありです!ユビーさんの前では見せないようにしてください」

「さすがの私でも、わざと見せるような癖はないぞ、だが気をつけるとしよう」

「お願いします」


  ◇ ◇ ◇


 2人が浴室から出てきたので、俺は中級ダンジョンの相談した。


「ニアが風呂入ってる間に考えたダンジョンなんだが、10層でボスはこんな感じなんだが」

「この短時間でこれを作ったのか?」

「そうだよ、全く使い物にならないか?」

「いや、その逆だ。よく作ったな」


 ニアはダンジョンを褒めてくれた。現役の魔王に言われたのは嬉しい。

 そして俺はコンセプトを伝えた。

 彼女は腕を組み少し考えアイデアを出してくれた。


「私のアプリが完成したら、それは実現できると思う」


 彼女は現行アプリのAIを改良し、俺のプランに対応させると言った。

 実現すれば、冒険者のレベルによっては死闘の末必ず勝つことが出来るようになる。


「ただ、一つ問題なのは冒険者がその環境に慣れてしまうことだ」


 ニアは懸念している事があるようだ。

 ひょっとしてこの事かな?


「勝ち続けることで、恐れを抱かなくなるとか?」

「その通り、Lv1の冒険者がLv20のモンスターに挑むようになるかもしれない」

「確かにそれは避けたい、死ぬかも知れないという恐れ、緊張感は持ってもらいたい」


 かといって、他の世界のように死なれては困る。 

 人口100万人を達成するまで、この世界はテーマパークでないといけない。


「例えば、現行のAIをもっと改良して、冒険者と同程度の知識、知能のNPCを彼らのパーティーに加えさせ、戦闘で倒れてもらうのは?」

「流石元勇者だな、私が考えているのはソレだ。例えば…」


 NPCのみのパーティーで、強いモンスター相手に突撃し玉砕すれば、それを見た冒険者は無理は禁物と学ぶだろう

 それと一定のレベル差があるモンスターとは戦えないとか、無理に戦ったら気絶させられ目覚めた時に「死ぬかと思った」と思わせる。

 そう言った案が出された。


「しかし、そこまで高機能なAIを作れるのか?」 

「私は魔王だぞ、それくらいやってやる。とにかく今はパソコンが欲しい」


 この魔王にパソコン持たせたらIT無双間違いなしだな。

 俺の出番はもうなさそうだ…。


「しかし実現したら、親友と思っていた奴が実は高機能AIのNPCって事になるんだよな。ちょっと複雑な気持ちだ」

「そう思うのは我々だけだ、彼らが世界の真実を知る事はないさ」

「人口が増えつづければ、やがてNPCは消えて行くからな」

「そういう事だ。私だって実はNPCかも知れないぞ?」

「笑えない冗談だな」


 このプランは全てニアのアプリにかかってる。

 これは彼女に任せて、俺はダンジョンや町のデザインと地形づくりに集中するとしよう。


「ユビーさんもお風呂に入ってくださいよ」


 シルちゃんに言われたので風呂に入る事にした。


  ◇ ◇ ◇


 俺が風呂から上がるとニアが残念な顔をしていた。


「ニアの元気がなさそうだけど、何かあったか?」

「それがパソコンの配達が遅れて明日になるみたいなのです」


 この前は驚くほど速く届いたのに、今日は遅れるとはどういう事だろう?


「配送業者さんが人出不足で、オーダーした商品を捌ききれないようですね。お詫びが掲載されてます」

「本当だ。天界は業種によっては人手不足なんだな。俺が昔いた世界と変わらないな…」


 異世界感ゼロ、それが天界だ。


「そう言えばニアさん、アドバイザー登録できましたよ」


 項垂れていたニアに少し元気が戻った。


「そうか!」

「はい、今からプリントアウトしますね。天界に行くとき必要になるので常に持っていてください」

「わかった」


 プリントされた登録証を見てニアが喜んでいる。

 そうだ、ぼんやりニアを眺めている場合じゃない。

 俺は明日の予定をみんなに伝えることした。


「シルちゃん、ニア、明日の予定なんだけど、午前中パソコンが届いたらセットアップを済ませてニアはアプリを作ってくれ」

「任せておけ」

「シルちゃんは午前中家事全般?」

「そうですね、でもそんなにかかりませんよ」

「それじゃ終わったら、俺と一緒に3つ目と4つ目の町をデザインしよう」

「わかりました」


 昼からは、各自の進行状況によって予定を組むことした。

 あの魔王なら午前中にアプリを完成させる可能性だってあるかな。

 その場合、昼からNPCをアップデートしてすべて再配置。その後テストを数日行おう。


「それじゃみんなさん、今日は寝ましょう。ニアさんは私と一緒に寝てください」

「わかった」


「俺はもう少しだけ地形を調整してから寝るわ」

「わかりました。それではお先におやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


「寝る時はおやすみと言うのか?」

「そうですよ」

「わかった。ではユビーよ、おやすみ」

「おぉ、おやすみ」


 2人が布団に入ったところで、俺はタブレットの地形アプリを起動させた。

 最初のエリアを島国にするための作業だ。

 これに伴って、現在配置されている町を大幅に移動させる事にした。

 王都トロイも一旦テストを停止させた。


 島国の大きさは北海道と同程度にし、王都は旭川あたり、バイオスが名寄、ノースブリッジが稚内。

 シルちゃんの家は樺太南部と言った感じ。

 あと3つ目の町は海沿いに置くので小樽あたり、4つ目は帯広付近に配置する。

 港町はもう名前を決めてあって、シリアルポートだ。


 作業は順調にすすんだが、島の海岸線を作り終えたところで睡魔に襲われたので今日はここまで。

 明日も良い日が来ますように。

 おやすみ、俺!

 

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