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プロローグ

 伝説


 いくつもの文明が興っては消えていく。

 その一つ、まだ名前のない文明に白き月から白き月の乙女が舞い降りた。

 

 月の乙女は告げる。


「災いが来ます。深き夜海やみの底から大いなる災いが現れるでしょう。集めなさい、6人の勇者を。世界を救えるのは彼らだけなのだから」

 

 月の乙女の予言通りに北の海に突如、魔の島が浮上する。

 

 島からおびただしい数の魔物が解き放たれ全世界を襲った。

 絶望が人々を支配していく。

 そして、混沌の中から、大邪神デスアースが現れた。

 

 月の乙女の啓示を受け、一人の青年が勇者を探す旅に出る。

 幾多の苦難の末、6人の勇者を集めた青年は邪神へと挑む。

 

 だが圧倒的な強さを誇る邪神の前に一人、また一人と勇者達は倒れていく。

 

 それでも青年は諦めない。


 青年の命の輝きが世界を包む。すると人々の中に不思議な力が発現する。

 それは人の心を具現化した固有能力。

  

 力に覚醒した人々は力を合わせ、ついに邪神を魔の島へと押し返した。


 残りの勇者達がその命と引き換えに邪神を島の地下深くへと封印した。


 その時、魔の島から大量の魔力マナが放出され、世界を満たす。

 人々は魔力を用いて万能の術、魔法を得る。


 そして、青年と月の乙女との間に生まれた子供は青年の名を継ぎ、エレクシニアスと名付けられ、エレクシア聖王国の初代聖王となった。

 

 命をかけて邪神と戦った勇者達を称え、聖王家の紋章には聖王を示す大樹と共に勇者を示す6つの花が描かれた。

 人はそれを六ツ花と呼んだ。


 いつしかその文明は魔の文明と呼ばれるようになる。


 白き月に見守られ、聖王国は悠久の繁栄を迎える。



 ・・・はずだった。






 時は聖歴S50年。

 聖王エレクシニアスS世が統治するエレクシア聖王国。

 

 数時間前までここはどこにでもある、ごく普通の平穏な街だった。

 誰もが今日もいつもと同じ、何も変わらない退屈な日々が続くと思っていた。

 だが、一隻の船が、一人の少女がこの街に降り立った時、その静けさは破られる。少女の姿を一目見ようと、港に押し寄せる人々の好奇の眼差しに晒されながらも少女は告げる。

「災厄が来ます。速やかに避難の準備をしてください。」


 少女の警告に耳を貸さなかった人々は、悲鳴を上げ逃げ惑っていた。我先に街から脱出しようと慌てふためき、他人を押しのけ街の出口に殺到する。その後方で爆発が起こった。

 熱風に煽られた人々は見た。

 この災厄の正体、その姿は3メートルはあろうかという黒き巨体、蝙蝠の翼、狼の牙と爪をもった化け物が道端の雑草を刈るかのように人々を薙ぎ払っていくのを。


 街を見下ろす高台から見る景色はまるで悪夢のようだった。

 美しく整えられてた街並みは見るも無残に破壊され、港に停泊していた船はすべて沈められてしまった。

 命からがら高台へ避難してきた人々が目にしたのは黒き化け物と対峙する一人の少年の姿だった。

 少年の後ろには傷ついた少女がいた。

 少女を守るため、2本のナイフで戦う少年。誰の目にも無謀なのは明らかだった。

 だがその戦いは異様なものだった。化け物の爪が少年の体を貫いた、確かにそう見えたのだが少年は無傷だった。両手に持ったナイフをでたらめに振り回す少年、ナイフを避け空を飛び距離をとる化け物、少年のナイフが空を切ったその時、化け物の翼が切り裂かれ墜落する。

 何故か少年の右手のナイフは砕けていた。砕けたナイフを捨て、左手のナイフを右手に持ち替える。

 再び地上で化け物と対峙する少年。

 まるで状況をつかめずにいる人々と違い、少年の戦いを見守り続けていた少女はそっとつぶやいた。


「あなたがそうだったのですね。あなたが、私のーーーー」


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