■第十七夜:蘭華の秘密
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「イズマ……貴様、いくらなんでも、あれはちょっと厳しすぎたのではないか」
食事を終え、男女別の寝室へ案内するとイオの提案にしたがって、イズマ、エルマとラッテガルトの三人は分岐路に立っていた。
例によってイズマは頑強に同室・同衾を叫んでいたが、野宿ならともかくまともな宿泊施設でそのようなことをラッテガルトとレーティングが許すはずもなく、数時間の睡眠は男女別室で取ると定められた。
「へ? なんのこと?」
酒宴で供された神酒をフラスコに詰めてもらったイズマは、意地汚く串焼きのイワナまで持ち帰り、それをかじりながらラッテガルトに訊き返した。
「あの物言いだ。たしかに、ここは敵地なのだから警戒するのは当然だし必要だが……あのイオという娘、あきらかに貴様に気がある様子だったではないか。いくら、事実だといっても、ああもすげなくされれば──傷ついただろうな」
ラッテガルトの声に乗せられた非難の色に、イズマはぱちくり、と目をしばたかせた。
「真騎士の乙女から、そんな言葉を頂くとは、思いませんでしたヨ?」
「この大空洞の内部で、あれほどの風呂と食事と酒を用意するのがどれほど大変か、わからん貴様ではないだろう? それを無償で、好意でだ。惜しみなくイオは振る舞ってくれた。……貴様が、エレを大事に思うのはわかるし、時間がないことも知っている。だが、それにしたって、もう少し言いようがあっただろう」
「乙女心に配慮して?」
「そうだ。あの宴だって、エルマを主賓としているが、イオの振る舞いはあきらかに貴様を意識してのものだ。まさか、それまでわからんと言うつもりではないだろうな」
「わかってますよ? 仮にもボクちんは〈イビサス〉を制した男。そりゃあ、その“神”を崇め奉ってきたベッサリオンの氏族からすれば、憎むか思慕するか、どちらかしかない。モテる男はつらいですね~」
「そうではなく!」
食ってかかるラッテガルトのそでをエルマが引いた。無言で首を左右に振った。
思わず振り向き、なにか言おうとしたラッテガルトだったが、エルマの表情を見て言葉を飲み込んだ。
エルマはイズマに問いかける。
「まだ、お酒をたしなまれるんですの?」
「身体がエネルギーを欲してるみたいでさ、食べても食べても、飲んでも飲んでも、お腹いっぱいにならないし、酔えないんだよねー」
「お酌をする相手が必要なのではありませんこと?」
「んー、ちょっとひとりで飲みたい気分、かな」
にへら、とイズマは笑って言った。
エルマも食い下がらなかった。
「では、お先に休ませていただきます。くれぐれもお気をつけてくださいの」
「うん。じゃ、エルマもラッテも、気をつけるんだよー」
先導役の娘たちのうちひとりを帰らせ、もうひとりがエルマとラッテガルトを導いていくのを見送ってから、イズマは来た道をとぼとぼと戻りはじめた。
わかってるんですけどねー、まずいってーのはしってるんですけれどもねー、助けてあげたいと思わないわけじゃないんですけどねー。
言葉とは裏腹に酔っぱらっているとしか思えないイズマのつぶやきは、かなり面倒くさい酒癖を想像させた。
吊り橋の道を戻ると、あの庵の前でイオが待っていた。
「来てくださると、信じておりました」
「手管と手の内、見せてくれるって言ってたからね」
イオは乳白色の庵にイズマを誘った。イズマはそれに従う。
庵の内に灯はなく、かすかに翠の茶の薫りだけがあった。
「わたくしからも、イズマさまにお願いの儀がございます」
でも、それは“狂える老博士”どもの手練手管を納得いくまで精査されてからでけっこう。
「存分に、吟味くださいませ」
イオが座し、衣服をはだけると、自らの下腹をさらした。全身を薄い柔毛に覆われたイオの肉体が、暗闇の中で燐光を発している。
いや、正しくは光っているのは、イオの肉体そのものではない。
その身体に刻まれ、骨に食い込んだ“狂える老博士”どもの疑似回路:〈グリード・ゲート〉が紫の光を放っているのだ。
それはイオの下腹から全身へ、そして、頭部に潜り込み──細い管のように伸びるコードを伝わって、足元へ、そこからまるで水面に潜るように消えていくのをイズマははっきりと見た。
「これが〈グリード・ゲート〉」
「強大な《ちから》を犠牲者に与える替わり、その維持に正気を喰らう。おぞましい呪いです」
「よく耐えたね」
イズマがイオの頭をいたわるようにかいぐった。
ぼろろ、とイオの両目から涙がこぼれ落ちる。
張りつめていたものが切れ、少女のような表情になる。
「苦しかった」
糸が切れたように倒れ込んでくるイオの肉体を、イズマだまって受け止めた。
「どうして、もっと早く来てくださらなかったのですか」
これまで恨み言ひとつ言わなかった娘であったからなお、イオの言葉に込められた想いの強さをイズマは痛みとして受け取った。
ぽかぽかと胸板を子供のような握りこぶしで叩かれた。
イズマは無言で甘受する。
イオの拳が〈イビサス〉の肉体を叩くたび、重く虚ろな音が響いた。
イオが弾かれたようにイズマを見た。
「聞いての通り、ボクちんはすでに、ほとんど“がらんどう”さ。“お痛”がすぎて神様にしかられたのさ。ソイツらは本物の神様でもないくせに、神様みたいに振る舞ってるクソヤローどもなんだけどさ。ほんとはね、この〈イビサス〉も、かつてそいつらに挑んで負けた土蜘蛛の成れの果てなんだ。だから、こんなに……からっぽなんだよ」
少しずつ中身を溜めるのだけれど、すぐに使い切ってしまうんだよね。
イズマの笑いは乾いて触れれば崩れてしまうドライフラワーのようだった。
「こんな、ボクちんで、キミの、キミたちのなにを助けたり、埋め合わせたり、癒したりしてあげられるのかな、って考えてたらさ、こんなに遅くなっちゃったよ。ゴメンね」
イズマの告白に、イオが瞳を閉じて祈るように顔をさしあげた。
イズマはその唇に己のものを合わせる。
「言葉で言わずとも察してくださったではありませんか……それで充分」
「遅刻を許してくれる?」
「ホントは、なにをしてて遅れたんですか?」
くすり、とイオが笑って言った。瞳は涙に濡れたままだ。
「……寝てました」
心底、ばつががわるそうにイズマが言い、イオがまた小さく笑った。
「では、その寝坊の王さま──どうぞ、イオを調べてくださいませ」
完全に力を抜き、身体を預けてくるイオの身体をイズマは草を編んで作られた床の敷布へ押し倒した。
「これが〈グリード・ゲート〉」
イオの下腹に指を滑らせながらイズマはつぶやいた。
イオの細い指がたくし上げた己の薄い被膜を強く掴む。
くう、と吐息が漏れる。
びくびく、と《意志》で制御できない震えが痙攣になってしまう。
「肉体に焼き付けられた疑似回路──苦しかったね」
「わたしの苦痛など──適応できず全身から白い炎を吹き上げ、生きながら松明となって死んだものたちに比べれば。その恐怖に耐え切れず、能力を行使することもままならぬまま、心を壊された同胞に貪り喰われたものたちの死にざまに比べれば」
イズマの指先が〈グリード・ゲート〉に触れるたび、イオの全身を電流のようエネルギーが流れる。
指を噛み、必死で声を噛み殺すのだが洩れる吐息が、その感触の種類を暴いてしまう。
「そうやって、存在を喰らうことでしか渇きを癒せない──そして、互いに骨肉相食む争いのすえに、辿り着くというわけか……。“狂える老博士”どもの考えでは、“神”に。そんな都合よくいくかね」
「寄辺を失い、凋落したベッサリオンの氏族を再興するには、それでも、そんな《ちから》でも必要でした」
「〈イビサス〉は、だれかを救おうとして“神”になったんじゃない。己の力を追求する過程で土蜘蛛が“神”と崇めるほどの存在になったというだけなんだ。ボクちんから言わせれば、その過程で中身をだんだん失って、注がれる《ねがい》のまま快楽と残酷を追求する存在──“神気取りの紛い物”になっちまったんだ」
「“神気取りの紛い物”──」
「そうでなけりゃ、いくら策を巡らしたからって、ボクちんが神さまに勝てるわけないじゃん。これは、〈イビサス〉のヤローとっちめて聞き出した話だから、本当だよ。情報源は本人だから」
エルマやエレが聞いたら卒倒しそうなほどの不敬発言に、イオは諦めたように笑う。
全身に浮いた汗がしっとりと柔毛を濡らす。
イズマはイオの薫りを嗅ぐように肌に顔を埋めた。
イオの唇から洩れる吐息もまた同じく、濡れていた。
それは土蜘蛛の持つ鋭敏な感覚を相手の肌に這わすことで深奥を走査する技。
「でも、それでも〈イビサス〉は、わたしたちの“神”でした。氏族を導き、戦い、ときに生贄を求めても、手当たり次第というわけではない。そこには理屈があり、掟が、政が──すなわち秩序がありました」
だから、このシダラに放り込まれたものたちのうちで、最初期の大混乱を乗り越えた幾名のなかから、失われた我らの“神”に倣おうとするものが現れたのです。
「セルテもそのひとりでした。最初期に〈グリード・ゲート〉を埋め込まれたあれは、もしかしたらそういう意味では先駆者だったかもしれません。数十名の同胞を連れて、タランテラノの崖を越えてゆきました」
「最初は、話の通じる相手だった?」
「わたしも、そのなかにいたひとりですから」
ああ、とイズマは納得した。
「けれども、いつの頃からか、セルテは大きくその精神の平衡を崩してしまいました。〈グリード・ゲート〉の励起が引き起こす激しい発作。飢えと渇き。その衝動に耐え切れず、セルテは同胞を貪るようになりました。思えば最初からその兆候はあった。それでも、わたしたちは彼を頼ってしまった。頼らざるをえなかった。結果としてセルテはあのような姿に」
ある日、わたしはセルテの元を離れる覚悟を決め、この地に降りました。幾名かの同調者を連れて。
「その日以来、わたしたちにとってセルテは忌むべき悪鬼──敵となりました」
「そして、キミたちはこの安定した小さな理想郷に閉じこもった。外敵は呪詛でこれを打ち払い──いっぽうでそれぞれの持つリソースをシェアしながら生きる文字通りの共同体……いや、群体となったというべきなのかな?」
イズマの指摘は、イオたち、このカンタレッラの吊り橋谷に暮らす者たちの秘密を鋭く暴いていた。
「いつ、いつ──それにお気づきになられたの」
イズマの走査が引き起こす感覚に耐え切れず身を弓のように反らし、イオがあえぐように言った。
「確信したのは、ついさっき、宴でずいぶん辛辣な受け答えをキミにしたときさ」
「わたしが、どこで破綻するか、それを確かめようとされていたのですね」
「ごめんよ。つらかっただろう? でも、正体の見えぬまま、キミを放置することはできなかった」
「お察しのとおり、わたしたちは、それぞれの肉体を提供しあい《ちから》を強めながらも呑まれずに、この小さな世界を維持しようとしたのです。互いの能力も肉体も融通しあい、全員がまるで一個体のように振る舞う。ご指摘の通り、さすがの慧眼でございます」
そして、それにも限りがあることはわかっていました。どんなにやりくりしても、資材が出て行くばかりでは。
うわ言のように、イオが言った。
「だから恭順者を求めた。セルテが下ってくれれば──強力な力を持つ者が同調してくれれば、ずいぶんとやりくりが楽になる、場合によってはこの理想郷をもっと広げ、シダラの大空洞のすべてを掌握、結果的に同胞を救えるかもしれないからね」
「はい。それなのに、彼は耳を傾けてくれなかった」
「どう言うべきか、ためらいがあるけれど……すくなくとも、もう、セルテからの侵略はない。それだけは保証するよ」
イズマが下腹からへそを通って走査の領域を胸部へと伸ばす。
「セルテの肉体は強い呪いに括られ、いえ、囚われ蝕まれて危険きわまりない恨みの塊に成り果てていたはず。それを討ち滅ぼしたと、おっしゃられるの?」
「いいや、セルテは逝ったよ。しずかに。笑っていた」
ああ、とイオが声を上げた。
まさか、とうめき、両手で口元を覆った。
「あれほどの深い業──“悪食”に囚われた者が解かれたというのですか。その縛鎖から」
うん、とイズマは頷き、望むなら、と囁いた。
「キミをそうすることもできるかもしれない」
「そうであれたなら、どれほどしあわせなことでしょう」
「願いごとがあるって言っていたね」
「忘れてしまいました」
ふい、とあの感情が抜け落ちたような顔になり、イオがそっぽを向いた。
「ちゃんと言葉にしなければだめだよ」
イズマの声に、絶望の表情を浮かべたままイオが、つぶやいた。
「欲しい。イズマ。あなたが」
ある種の蘭はさ、とイズマは囁く。イオの求めに応じながら。
「不思議な構造を持っていて、その花弁は花粉を媒介してくれる昆虫の雌に──たとえばハチとか、ハエとかの──そっくりなんだってさ」
蘭は土蜘蛛のもっとも好む花だ。
氏族ごとにそれぞれお抱えの庭師がいて、その品種改良は氏族の権力闘争の道具としての権威を誇るという側面からも過熱する傾向がある。
蘭花のごとくあれ──とは艶やかに薫り高く咲き誇り、優雅に圧倒的に君臨せよ、と意味であると同時に、蘭の持つ奇妙で獰猛な生育のシステムを深く理解した土蜘蛛たちの精神性を如実に表した格言だ。
蘭はその発芽のために、周囲に集まってきた菌類を捕食する。
たとえ捕食されなくとも、取り込まれた菌類は奴隷同然に使役され、あたかも蘭の一部であるかのように振る舞わなければならない。
これは人類など知りえない土蜘蛛の王族だけが知る秘事だ。
見返りに蘭が与えるのは、ほんのわずかな報酬と──蘭の一部となる栄誉だけ。
他種族、他氏族に対する一般的な土蜘蛛の考えが、ストレートにそこには表されている。
そして、蘭の育成に関する事項は、王族の秘中の秘でもある。庭師と、王族の限られた者だけが、この格言の真意を理解しているというわけだ。
その秘密をこのように褥で打ち明けられることは、求婚されたに等しいと土蜘蛛社会では考えられている。
「イズマ──そのようなことを」
わたしは、一度だけで、一夜だけでじゅうぶんなのです。
予期せぬイズマからの告白にイオは狼狽を隠せないでいた。
イオはこのカンタレッラの吊り橋谷を捨てていけない。すでに自分はこの共同体、群体の一部であり、個人としての自由などない。
だいいち、男たちに懲罰として蹂躙され、“狂える老博士”たちの手で開発された自分は汚れ切っており、イズマの告白を受ける資格などない。
「お願い。戯れでも──いけま……せん」
申し訳なさからイズマを諌めようとするイオの言葉を、イズマは己の行為で封じる。
それから続けた。
「さらに興味深いのは、その花弁は姿形を擬態しているだけではないんだ。その種の昆虫のメスの出す薫りとそっくりな、ボクちんたちには認識もできない不可知の薫りを出して、そのオスたちを誘惑するんだ」
不思議でしょ?
そう言って微笑むイズマの下でイオは追いつめられてしまう。
心の奥底にずっとしまい込んでいた、見ることさえやめてしまった《ねがい》が、不意に叶えられてしまった歓喜と、エレやエルマに対する罪悪感から。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい──そう繰り返し、むせび泣いて、それなのに肉体は反応して、イズマを掴んで離すことができないイオは子供のようだ。
「これ以上は──おかしくなってしまう──壊れてしまう」
けれども全身でしがみついてくるイオを強く抱き返しながら、イズマは言葉を紡いだ。
正対して座し、抱きかかえる格好になる。
イオは蕩けそうに熱く、その四肢はイズマを捕らえて離そうとしない。
そして、その反応にイオ自身はひどく恥じ入っているのだ。
イズマに蘭の秘密・秘事を囁かれるたび、すべてが過敏になっていく。
「昆虫のオスはさ、その薫りとカタチに騙されてしまうんだ。蘭の花に恋をしてしまう。そして、知らず知らずのうちに蘭の花の花粉を運ぶメッセンジャーに仕立て上げられてしまう。ボクちんたち土蜘蛛が象徴に掲げるにはぴったりでしょう? 欺き、騙し、己の思うところを達成してしまうんだから。凄まじい生存戦略だとは思わない? 誰に命じられたわけでも、教えられたわけでもないのにさ。どうやってそっくりなカタチ、そっくりな薫りを手にいれるんだろ? わっかんないなー」
だけどさ、とイオの首筋にくちづけしながら続けた。
「もしかしたら、と思うのさ。もしかしたら、先に恋をしたのは蘭の花のほうなのかもしれないな、と思うのさ。きっと初めからそうではなかっただろうから。その相手が自分に潜り込んでくるたびに、こんども自分を選んで欲しい、次の花も、その次の花も、自分を選んで欲しい──花に気持ちがあるのかどうか、ボクちんにはわからないけど──そんなふうに願ってしまったのかもしれないな、って思うのさ」
だから、必死にその姿と薫り──自分の目の前で交わされる彼らの愛のカタチを写し取ろうとした。
「そんな姿見が、蘭の花には備わっていたのかもしれない。ボクちんには、そう思えるんだ」
イズマの腕のなかで、イオは蕩けている。
比喩ではない。その構成が曖昧になり、まるでなにかの触手のようにイズマを捕らえている。
その泣き顔と胸乳だけが──美しいイオのものだ。
「行かないでくれ、とそう願ったんだね。でも、キミは──イオの、その《ねがい》の化身でしかない」
……ごめんよ。イオだったものを抱きかかえたまま、イズマは立ち上がり、無造作に左腕を振るった。
びっ、と紙を裂いたような音を立てて、イオの庵が四散し、それは宙を舞う間に青い炎となって燃え尽きた。
そして、イズマは視た。
いつかあの哀れな女神の漂流寺院でイズマも用いた処眩ましの異能:《アストラル・コンシールメント》を解き、その次元の帳の奥から姿を現した本体としてのイオと、そこに繋がる者どもの本体を。
身体を丸め宙に浮いた巨大な芋虫の頭部にいくつもの胸像が埋め込まれ、あるいは群れ成して頭部を形作っていた。
禍々しい負のオーラを放つそれを目を凝らしてみると、そのトルソーはすべて〈グリード・ゲート〉を共有しあった女性たちの姿でできあがっているのだった。
相貌を頭からすっぽり被るヴェールとフード。
無数の魔除けで覆い、両手両脚に意匠化されたドクロを思わせる装甲を身に付けた。
例外なく彼女らこそはかつてエルマとエレの侍従であった者たちの成れの果てだった。
ぐぶり、ごぶり、キチキチキチ、とその群れが蠢くたび奇怪な音がした。




