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■第一夜:月下の邂逅

 静かな夜であった。

 煌とした月であった。

 降り積もった雪に月光が差しており、周囲を照らし出している。

 山中であった。なだらかな高原。砂糖カエデの林。

 見事に整えられたその林は、領主の森番たちが勤勉に、また丁寧に手入れをしていることを示している。

 

 美しい晩であった。

 そして、美しい獲物であった。

 雪よりもなお白い肌をそれは有していた。漆黒の頭髪が、まるで墨をそこに流したかのように広がっている。菫色の瞳は濡れている。

 驚いたことに、獲物はその両腕に白銀の装具──肩までを覆う甲冑を身につけていた。

 武装していたのだ。

 

 けれども、着衣はなかった。その装具は裸身に直接、装着されたものだ。

 それが月光の下で夢幻のように息づくさまは、魔性がこの世にして凝ったと人々が確信するほどのもの。

 

 獲物は──女であったのだ。

 

 不意にバラの薫りがした。

 見れば、その獲物は全身に荊を纏っていた。

 そして、驚いたことに、そのバラは目の覚めるような青い花をつけていた。

 だが、バラの香りはその花弁からだけ香っていたのではない。

 獲物は虜だった。その脚に、太い鉄の顎門が噛みついていた。

 熊用の大型の狩猟罠である。それが獲物の右脚に食い込み、肉を割き、骨に突き立っていた。その仕掛けは常人なら脚ごと両断しかねない強さのものだ。巨大な口腔を思わせるそれが女を捕らえていたのだ。

 

 ふしぎなのは、それが食い込んだ場所からの出血があきらかに少ないことである。それどころかむしろ、傷はほとんど塞がりつつある。

 周囲には暴れ回った跡があった。

 女が暴れるたびに傷口が開き、そのたびに鮮やかなバラの香が厳冬期を迎えつつある山中に広がった。

 けれども女の細腕では、到底、罠からは逃れられるわけもない。

 女を慰撫するように馬が一頭、その鼻面を近づけた。馬は雪中に座している。


「すまぬ。ヴィトライオン。すまぬ」

 女が馬の名を呼んだ。

 女の名はシオンといった。夜魔の姫──本人の弁を借りるならば廃王女であった。

 その出自を証明するようにその頭部には、大ぶりなこれも銀製の王冠が頂かれていた。

 それこそは宝冠:〈アステラス〉──他にだれあろう、北方の夜魔の大公:スカルベリ・ルフト・ベリオーニ・ガイゼルロンの持ち物のはずであった。

 シオンは脚に食い入る重い足枷を引きずるようにして、ヴィトライオンのそばへと這いずってきた。


 そこに、男がいた。


 裸身をさらしていた。衣服はあったが、すべてがずぶ濡れでとても着せてなどいられなかった。男を冷気から守るのはいまや、ヴィトライオンの体温と、シオンの肌だけであった。いくつかの武装は外敵を退けることはできても、忍び寄る真っ白な死を遠ざける役には立たなかった。

「アシュレ」

 その名を呼びながら、シオンが男の頭を胸乳に抱いた。

 男は衰弱していた。呼吸は浅く、弱々しく、肉体は氷のように冷えて。その唇はひび割れ、肌がしなびるように割れはじめている。

 寒さだけではない。なにか、もっとずっと決定的で致命的な消耗が、アシュレと呼ばれた男の命を脅かしているのだ。

 わたしのせいだ、とシオンは思う。


 あの時──カテル島で執り行われた聖母再誕のクライマックス──イズマは、あらゆる状況を一斉に打破するため《転移門》を開いた。あらゆる事物を彼方へと一瞬で移動させるその技は、たしかに、あの場に居合わせた者たちを救った。


 だが、どのように因果が捩曲がったものか、シオンとアシュレ、そしてヴィトライオンはその装備品とともに見知らぬ厳冬の山中に転移してしまったのだ。

 飛ばされたとき、太陽は中天に向いつつあったはずだが、シオンたちが実体化したとき、すでに世界は夜であった。

 

 それは激しい戦いのなかでのこと。人智を超える巨大な《ちから》のぶつかり合いが招いた事故。

 互いが死力を尽し、最善を尽した。もはや、命などないといくども思った死闘の末のこと。

 シオン自身、その肉体を完全に破砕され、さらには硫酸のように強力な聖別された清水で焼かれた。

 

 その極限と極限の細い細い谷を縫うような──奇跡。死地からの生還。もしかしたら、こうして再びカタチを結んで実体化できたことこそ、そう呼ぶべきだっかもしれない。

 

 シオンがこうして生きていられるのは、だから、シオンたちを転送したイズマの、同時に夜魔の真祖に連なる血統のおかげだった。

 シオンは、このときばかりはみずからの呪われた不死性に感謝せずにはおれなかった。

 そうでければ生きて再び、アシュレと相まみえることなどできなかったであろうから。

 

 そう、夜魔の姫であるシオンは寒さや、狩猟用の罠で死ぬことなどない。

 

 だが、アシュレは違った。

 ただの人間──人類──つまりヒトであった。そして、同時に厳密にはヒトではすでになかった。

 

 アシュレはその心の臓をシオンと──夜魔の姫と──共有しているのだ。《アルジェント・フラッド》──命を受け渡す秘儀によって。

 それなのに、夜魔の血統はシオンの肉体を完全に再生させながら、アシュレの肉体に対してはその力のかけらさえ及ぼしもしない。少なくともいま、アシュレは着実に衰弱しつつあった。

 下手をすると朝を迎えられぬかもしれないほどに。

 

 救う手だて──方法がなかったわけではない。

 

 シオンは、夜魔の貴族のたしなみとして相当量の衣服、宝飾、装身具を《シャドウ・クローク》なる異能によって持ち歩いている。それは異空間に折りたたまれたシオンのクローゼットだ。

 そこから必要な衣類、医薬品を取り出すこともできたはずだ。

 それだけの《ちから》がシオンにはある。

 それは《意志》の《ちから》、超常を可能とする《スピンドル》の《ちから》だ。

 

 しかし、いま、シオンは《スピンドル》を使えない。使うわけにはいかない。

 激しい消耗があった──極限までの。

 間近でよく見れば、その唇はアシュレのものと同じく、やはり渇きにひび割れていた。

 足りないのだ。血が。

 欲しいのだ。血が。

 

 夜魔は吸血を経由しなくともその生を維持できる。それは愛情や情熱を込められた食事、丹精込めて作られたビールやワインに溶けた《夢》が、血液に溶けるそれと同様に働いて、餓えを癒すからだ。

 そして、シオンは実際すでに百年以上、吸血を経ずにその生を維持してきた。

 

 だが、全身を再構成しなければならない事態──それもいくども痛めつけられ叩きつぶされた──が凄まじい消耗をシオンに強いた。死をいくども覆す《ちから》である。代価なしには到底、贖えない。

 血が、欲しい。そこに溶けた《夢》が欲しい。

 それはシオンの理性と人格を消し飛ばしかねない、肉の訴えだ。

 なんの準備もなく砂漠に放り出された人間が感じる、あの激しい渇きだ。

 もし、いま、《スピンドル》を励起したならば、シオンは間違いなくそのために、渇きを潤すために《ちから》を解放してしまう。

 

 愛する者の血が、アシュレの肉体が、抗いがたい芳香を放ってそこにはあった。

 その命の火が、刻一刻と弱まりつつあることがシオンには目に見えるようだった。

 であるのなら、そうであるのなら、その血肉を我がものとし、シオンのなかで永遠に活かすことこそ、最善ではないか?

 それが愛ではないのか?

 いつか、ファルーシュ海を彷徨う廃神の漂流寺院でも、聴いた声。

 その囁きを押しとどめるのがシオンにできる精一杯だった。

 

 人家を、炎の灯を探して、それでも馴れぬ山中を彷徨った。ヴィトライオンにアシュレを乗せ、一刻あまりも彷徨したすえに、脚を罠にかけられた。

 

 シオンは残された最後の《意志》で、己に戒めをかけた。

 

 すなわち聖剣:〈ローズ・アブソリュート〉──巨大な大剣の姿をしたその刃は、剣の姿を取っているとき夜魔とそこに並ぶすべての人外にとって恐ろしい猛毒の棘となる。使い手であるシオンでさえ、聖人の生皮によって守護された籠手──〈ハンズ・オブ・グローリー〉を纏わねばその手に取ることさえ叶わない。

 その聖剣のかりそめの姿を、シオンは己の肉体に戒めとして強いたのだ。

 

 強大無比の《フォーカス》である〈ローズ・アブソリュート〉は、封印・待機状態であるとき青いバラの華にその刀身を変じる。

 それはやはり魔の氏族を遠ざける《ちから》を持つが、触れただけで肉体を融解させるあの物凄まじさは有しない。ただ、激しい痛みを感じるだけだ。

 その痛みでシオンはいま、ようやく正気を保っている。

 

 けれども、限界だった。

 断ち切ることのできぬ罠の縛鎖が、シオンの心を折りつつあった。

 このままでは──助けられないかもしれない。アシュレを救えないかもしれない。

 それならば、いっそ、すべてわたしのものに。

 

 そう囁く声が、刻々とシオンのなかで大きくなりはじめていた。

 いや、方法はあった。望みはまだあった。それはヴィトライオンにすべてを託し、アシュレをその背に乗せて、人里を探させることだ。ヴィトライオンは賢い馬だ。安全な道を選び取るだろう。

 もしかしたら、アシュレの命が燃え尽きる前に、人家を探し出し、適切な介抱を受けさせることができるかもしれない。

 

 いや、とシオンのなかの夜魔の血がそれを否定する。

 可能性はほとんどない。

 土地勘もないこの異国で、ヴィトライオンがその致命的な刻限までに、アシュレを人家に運び込むことはできるのか?

 よしんばたどり着けたとして、その人々が素性も知れぬ男を助けるだろうか? 雪の訪れとともに現れる冬の客人──決して門扉を開けてはならない夜魔の伝説は、そのための戒めだ。

 さらには、アシュレのこの容体は果たして、ただの介抱で癒すことのできる、回復することのできるものなのか?

 

 恐ろしかった。

 なにもわからないことが恐ろしかった。

 なにより、アシュレを完全に失うことが恐くて恐くてたまらなかった。

 愛していたのだ。

 もう、この男なしでは、生きていけないくらい、シオンはアシュレを愛していたのだ。

 アシュレのいない明日を想像できないほどに。

 

 百年以上前に、その死を看取った男の顔が脳裏をいくども過った。

 ルグィン・ラディウス・パルディーニ。

 騎士だった。枢機卿の候補になるほどの地位でありながら、徳の高い聖職者だった。

 夜魔であるシオンを信じ、ともに戦い、教会に裏切られて死んだ。

 そうであるのに教会はルグィンを聖人に祭り上げた。

 シオンの両手を聖剣が発する《ちから》からいまも護る聖なる籠手:〈ハンズ・オブ・グローリー〉の内張は、シオン自身が彼から剥ぎ取った生皮で出来ている。

 そして、シオンはその死した肉体を──喰らったのだ。

 肉の最後の一片、血の一滴までも──啜ったのだ。

 けっして、奴らに辱めなどさせぬために。

 

「オマエを抱いときゃよかった」

 と死の間際、ルグィンは苦しい息の下で、冗談めかして言ったものだ。

 あのときは動転して、それから──疎くて──なにを言われたのか、よくわからなかった。だが、いまはわかる。

 愛している、と言われたのだ。離したくない、と言われたのだ。別れたくない、と言われたのだ。

 ぼろろ、と涙がこぼれた。

 どうして、離れ離れに死ぬことなどできるか?

 どうして、この手を離せるか?

 死ぬなら、この腕のなか以外でなど……許せるものか。

 

「それならば……いっそ……」

 想いが言葉になって、迸りかけたそのときだった。

 

 はじめは、光、だった。

 ちらり、と橙色の灯火が、林の隙間に見えた気がした。

 救いを願い過ぎて気でも触れたのか、とシオンは思った。わたしは幻でも視ているのか。そう自らを疑った。

 だが、その灯火は次第に数を増し、ついに十ほどの集団となる。

 

 間違いなく、何者かがこちらに向いつつあるのだ。それは正確に、はっきりとした《意志》を感じさせて、シオンとアシュレのいるこの林の空地に向いつつある。間違いない。

 

 シオンは、しかし、身を強ばらせた。

 ここが手入れされた林であることから人類の領土であることはわかっていた。

 すくなくとも戦鬼や豚鬼、蛇の氏族の領域ではない。

 だが、もし仮にそれが人類であったとして、友好的な遭遇となるかどうかは、なお不明であった。

 

 この異様な光景に人々がどう反応するか。

 恐慌に陥らず、冷静に、しかし友好的に会話が可能であろうか──そして、シオンはいまその魔性を押さえ切れなくなりつつある。

 ここで判断を誤るわけにはいかぬ、とシオンは思った。

 

 そしてシオンの不安が的中したように、聞こえてきたのは軍馬のいななきと蹄鉄の音、そして軍装の響きであった。

 

 それは、いかなる方法によってか、この地を治める領主か、代官かが、シオンたちの侵入を嗅ぎつけ、戦力を差し向けたに違いなかった。

 ヴィトライオンがいなないた。警告しているのだ。

 

 シオンの胸中を騒がせたのは、これから現れるであろう勢力の数の少なさだった。

 もし、《スピンドル能力者》による転移、ないし侵入を感知したのなら──それは能力者か人外の存在の侵入ということであり、一騎当千の戦闘能力を有する存在に寡兵を持って当たるのは愚行の極みであることは常識と言ってよい。

 それを承知であえて少数の兵を送り込んできたのなら、これは相手側も相応の能力者であるという証拠なのではないか?

 

 いずれか、戦闘になった場合、いまの自分でアシュレを守り切れるのか?

 いや、それよりも我が身を差し出して、アシュレだけでも助けられないか?

 思案するが身動きの出来ぬシオンの眼前に、やがて現れたのは、数騎の騎士に護られた黒塗りの馬車であった。

 

 シオンはその騎士たちの乗る軍馬、そして馬車を引く馬たちに目を見張った。

 ダークスティード──そう呼ばれる夜魔たちの軍馬。

 

 まさか、とシオンは震えた。

 では、ここは、この山麓は……ガイゼルロン国境:イシュガルの──。

 けれども、シオンの目に飛び込んできたものはあの懐かしくも忌まわしい──フィティマ──悪魔の爪という異名を持つ高山植物をかたどった紋章ではなく、ジグザグに編み込まれた数種類の花の冠とその上に留まるハヤブサ──シオンはその紋章を知らなかった。

 

 戸惑うシオンの眼前で、軍馬が蹄を止めた。馬上の騎士たちは身じろぎもしないが、その手には抜かりなく槍がある。

 がちり、と石弩の弦が引かれロックのかかる音がした。

 そのときになって、ようやくシオンは彼らから同族の──夜魔の気配を感じた。凄まじ飢餓感に紛れ、感知力が低下していたのだ。いや、正確にはそれを感知していることを認識できなかった。

 

 だが、それよりもシオンを混乱させたことがあった。

 それは……十人はいるであろう随伴者のほとんどが人類……ただの、正真正銘の人間であるということだ。

 魅了されている様子も、夜魔の騎士たちを恐れる様子もない。

 自発的に行動し、互いに協力、連携しているとしか思えぬ態度だった。

 

「ほんとうだ、領主さまの……トラントリム侯の仰った通りだ」

 先導であったのだろう。毛皮の衣服に身を包んだ森番──猟師風の男が言った。

「トラントリム侯、この者たち、いかがいたしましょうか」

 騎士のひとりが言い、槍の切っ先を少し持ち上げた。

 シオンがアシュレの頭を抱く。

 ひりつくような数秒の沈黙の後、出し抜けに馬車の扉が開かれた。

 

「旅の者……とは言いがたいな、そのいでたち。だが……敵意は感じない」

 申し開きがあるならするがいい。言いながら、男が雪に脚を下ろした。

 

 彫りの深い、眼光鋭い男であった。

 もし人間であるのなら、三十のなかごろは過ぎているであろう。

 老練さを纏いながら、しかし鋭さを失わない──英傑の態度と声色をその男は持っていた。

 こう言い換えてもいい。ヒトに命じることに慣れた男の──支配者の声だった。

 

「ヒトにものを尋ねるときは先んじて名乗れ、とは教わらなかったのか」

 シオンが苦しい息の下、そう言い放った。

 満身創痍で、傷病人を抱えた半裸の女から思いもよらぬ返し突きをくらった男の顔に、かすかに動きが起こった。笑ったのだ。呆れと感心がないまぜになったそれは、苦笑だった。

 シオンのとっさの切り返しは、その身に流れる王侯貴族として血統と誇りを感じさせずにはいなかったからだ。

 

「あなたが何者か知らぬが、ここは我が領土:トラントリムだ。あなたとその従者は不法に我が国境を侵している。こうして交渉から入るだけでもありがたいと思ってもらいたいのだが……たしかに非礼は詫びよう──我が名はユガディール。ユガディール・アルカディス・マズナブ。この小国家:トラントリムの王にして爵位は侯爵となる」

 堂々とした名乗りからは、しかし、先ほどのような切りつけてくるような威圧感が減じられ、すこし笑みの混じった柔らかさが宿っていた。

 

 シオンはその態度に、ユガディールという男の度量の大きさを感じ取る。

 もし、すべてを賭けるならば、いま、ここで、この男を相手に以外になど考えられないと判断した。

 だから、名乗った。正体を明かした。

 そして窮状を訴えた。

 アシュレの経歴と、これまでの道程をかいつまんで説明し、懇願した。

 せめて、この男だけでも助けて欲しい、と。

 

 ガイゼルロンの廃王女──その名に動揺を見せたのは、随伴者である人間だけではなかった。騎士たちの、例外なくそのすべてが、呻きに似た声を上げ、ユガディールの反応を見やった。

 実父であり、大公であるスカルベリを弑逆しようとして国を追われたシオンの名は、夜魔世界では有名すぎるほど有名だったのである。

 

 だが、そのときには、ユガディールはだれもが制止するまもなく、シオンに歩み寄り、纏った純白の毛皮の外套を与えていた。

 そして、ひざまずき、その手みずからシオンの脚に食い込んだ鋼鉄の枷を取り去る。

 シオンの装甲された手を取ると、軽く口づけし、それから誠実な口調で言った。

 

「あなたと、その従者──いや、騎士:アシュレダウを我が客人として招きたい」

 わたしの申し出を受けていただけますか?

 ユガディールの申し出に、シオンは頷いた。

 溢れそうになる涙を、矜持を持って食い止め、王族としてその申し出に感謝を述べた。

「侯爵の温情に感謝する」

 こうして、シオンとアシュレ、ユガディール──三人の英傑は邂逅したのだ。




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