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箱庭の世界 ~白色の魔法使い~  作者: 白波
第一章 魔法の森
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第六話 世にも困った来客者(その二)

 ウィット魔法店の店内。

 すみれは店の隅に置いてあった椅子に腰かけて、長々と続くピンクの髪の少女の説明を聞いていた。


 彼女が作るほうきというのは総じて名前が長く、それでいてどこか不安げな商品名ばかりだ。


 たとえば、“空を飛んでどこかに行きたいという願いをかなえてくれると信じているほうき”などと言われた暁には、どうしてそんな名前が思いつくのだと問いただしたぐらいだ。

 彼女曰く残念ながらほうきの効力には絶対を保証できないので“誰でも簡単に空を飛べるほうき”などと言い切ってしまうと、なんで空を飛べると商品名にあるのに飛べないんだという苦情が来たりするのだそうだ。


 苦情のいう側の気持ちもわからなくはないが、何の努力もなしに願いをかなえようなどというのはいかがだろうか?

 実際、すみれ自身彼女の作ったほうきで空を飛ぼうとしてもなかなかうまくいっていないのが現状なので“簡単に”と銘打ったところである程度の練習というか努力が伴うのは当然だろう。何でもかんでも簡単に手に入ってしまっては得るものが何もないからだ。

 これはあくまですみれの持論であり、他人に押し付けるつもりなどまったくないが、どうにも自分ができないからといって他人に文句をつける人の気持ちがいまいち理解できない。もちろん、商品自体に欠陥があったら話は別だが……


「……で、あってね。この虹色に光るであろうほうきを作ったときは本当に苦労したのよ。滞空時間中に定常的に使う魔力を以下に抑えながら虹を放つ魔法を同時に発動させるかどうかっていうのが本当に大変で……」


 そんなことを考えている間に彼女の話題は次のほうきのことに移っていて、気が付けば目の前には後ろに小さな六角宙を付けたほうきの説明に移っていた。

 それにしても、営業妨害とまではいわないがここまで永遠と説明を続けるのは元の世界の訪問販売並みに厄介だと感じてしまう。いや、相手に商品を売りつけようだとかそういう類の悪意がない分余計に厄介かもしれない。


 もちろん、魔法のほうきの話は興味あるし、聞いていて苦痛だということはないのだが、もう少しこちらの話を聞くペースに合わせるとか、そういった配慮というものはできないのだろうか?

 だが、ピンクの髪の少女があまりにも楽しそうに語るので邪魔をする気分も起きず、すみれはただただ困った訪問者の話を聞き続ける。


「……そうそう。このほうきを作っていたとき、あいつ……ウィットが来てね。それがまた困ったことをしてくれたのよ。こんなものどうせ売れないからまともに売れるの作って頂戴っていうのよ。こんなものうちの店頭にはおけないって。そら、ウィットの言いたいこともわかるし、彼女はお得意様の一人だからあまりぞんざいには扱いたくないんだけど、そんなこと言われてさ、“はい。そうですか”なんて引き下がれるわけないでしょう? だからね、私言ってやったのよ。“あんたは職人がどういうものかわかっていない”って、そしたらあいつ、“あんたこそ商人がどういうものかわかっていない”って反論してくるのよ。どう思うこういうの? 本当にあぁ言えば、こういうし、こう返せばあぁ返ってくるし……もーどうにかならないのかしら……ほんと、あなたみたいに素直だったらどれだけいいか……」


 話の内容は気付けば、ほうきの話題から完全にウィットへの愚痴へと変化をし始める。


 普段から彼女に対する鬱憤が相当たまっているのか、次から次へとほうきの話をしていたとき以上のペースで話しが続いていく。

 当の昔にすみれは相づちを打つという行為をやめていたのだが、ここにきておとなしく話を聞くという行為すら放棄したくなってきた。


「あのー」


 さすがにこれは止めないとと思い、声をかけようとして初めてすみれは重大な事実に気が付いた。


「そういえば、名前聞いていない……」


 ぽつりとつぶやいた声は目の前の少女には届かなかったようだが、すれみはそれも含めていつ聞くべきかと考えて、小さく唸り声を上げた。

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