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箱庭の世界 ~白色の魔法使い~  作者: 白波
第一章 魔法の森
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第一話 出会い

 王国歴180年8月1日 第3王国東部 魔法の森


「おーよかった! 目を覚ましたか!」


 すみれが目を覚ますと、白い三角帽子をかぶった中学生ぐらいだと思われる少女が私の顔を覗き込んでいた。

 恐らく、彼女の体勢からすみれの頭に当たっているのは彼女の膝だろう。


 ここまで言えばわかると思うが、すみれは今10代前半だとみられる少女にひざまくらされているのだ。


 すみれがゆっくりと体を起こすと、彼女の全身があらわになる。

 白い三角帽子に白いマントというまるで典型的な魔女の服を白黒反転させたような衣装の彼女は、安心したような表情を浮かべる。


「いやーこんなところで子供が倒れたりしてるもんだからさ最初は死んでるかと思ったよ。まぁでもあれだ。生きてるみたいだったしな、軽く調べた限り気を失っているだけだっていう風に見えたから様子を見てたんだよ。いや、本当に安心したよ。それで? なんでこんなところに倒れていたんだ?」

「なんでって……というかここは?」


 少なくともすみれの記憶が正しければ、自身は屋内にいたはずだ。

 なのにそこには天井がなく、見えるのはうっそうとした木々とその隙間から見える青空のみである。


「ここか? ここは、大陸の西部に位置する第3王国の東部に位置する森の中さ。それにしてもなんだ? 自分の居場所もわからなくなるなんてちょっとばかり混乱しているのか? なんだったら近くにある私の家で休んでいってもいいぞ」

「いえ……あの」

「なんだ? あぁそうか。私はウィット。周りからは“白色はくしょくの魔法使い”なんて呼ばれているんだ。別に怪しいものじゃないよ」

「魔法使い?」


 すみれが聞けば、彼女は目を丸くしてとても驚いた様子を見せる。


「お前、魔法使いも知らないのか?」


 この態度を見る限り、“箱庭”では魔法は当たり前のように存在しているようだ。

 だがしかし、すみれは魔法なんてものは見たことも聞いたこともないので素直に首を横に振るう。


「あぁそっか。まだ、こんなに“幼い子供”だしな。見た目の割には礼儀が正しいからいいところの娘かと思っていたけれど、そうでもないのか……」

「はい?」

「いや、まぁいいや。とにかく家にきな。ちょっと、ごめんな」


 ウィットは私をいったん膝の上から降ろした後、軽々と持ち上げて、抱きかかえる。


「えっ!?」

「さっきまで倒れていたんだ。あまり、動かない方がいいだろう」


 そう言って、彼女はそのまま歩き始める。


「えっえっ!?」

「まぁおとなしくしていてくれ。それにしても、どこから来たんだ?」

「どこからって……日本よ」

「ニホン? 聞いたことのない場所だな」


 担がれたままでみれは、少しでも情報を集めようと、ウィットと会話をする。

 残念ながら彼女の顔は見えないが、声色から推測するに本当に日本のことを知らないのだろう。


「そうでしょうね」

「そんなに小さな村なのか?」

「小さくはないけれど……事情はあとで話すわ」


 この会話だけでも少しずつだが必要な情報は集まりつつある。

 まず、あの神様が箱庭と呼んでいるこの場所は異世界であるという可能性がある。ただし、どういうわけか言語はちゃんと通じているらしい。

 また、これに関してはあまり信じたくないし認めたくないのだが、すみれの身体は幼少期の状態になっているとみて間違いなさそうだ。実際に鏡を見たわけではないので定かではないが、彼女に軽々と持ち上げられていることを考えれば妥当だろう。ウィットが怪力の持ち主だったり、こっそりと魔法を使っていたら話は別だが……


 最後に精神年齢と記憶だが、これははっきりとはわからない。

 精神年齢に関しては体に相応ではないし、記憶の方もどこが失われているのかがはっきりしていない。


 だが、ここら辺に関してはそう急ぐことはないだろう。


 すみれは、そんなことを考えながら青い空を眺めていた。

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