6話 全員、スマホを切れ!!
6話 全員、スマホを切れ!!
「ぐぁあああああああ!!」
田中オーガニクの渾身の突進を受けて、猛田が盛大に吹っ飛んだ。
『猛田、飛んだぁ!』
『猛田くん、大丈夫?!』
『死ね、死ね。メインはジュリア様だけでいい』
コメント欄が一気に沸き立つ。
猛田にかけた呪いの効果は、『眠れなくなる』と『嫌われやすくなる』の二つ。
つまり今の猛田は、ちょっとしたことでも、アンチの耳目を集めやすくなっている。
猛田が苦しめば苦しむほど、配信は伸びる。
――別に、そこまで計算して呪ったわけじゃないけど……
結果的に、恐ろしいほどかみ合っている。
このまま猛田にひと通り『ピンチ担当』をやってもらい、
最後にジュリアが華麗にトドメを刺す。
――それで、今日もしっかりバズる……はずだった……
「ん?」
異変に気づいたのは、そのときだった。
地面の一角が、赤黒く発光している。
田中オーガニクの右足が、その魔法陣の上に乗った瞬間、
……弾けるように輝いた。
(げっ……あれは……『モンスター破壊』のワナ……っ!)
ロキから聞かされていた、このダンジョンの仕組みのひとつ。
モンスターがあの紋様に触れると、『壊れる』という状態異常に移行する。
『壊れる』状態だと、
ステータスが跳ね上がり、そして、
……一切の制御が利かなくなる。
「なに?! あのドス黒いオーラ、なに?!」
山本コハルが、震える声で叫んだ。
「まずい……」
俺は思わず声を漏らす。
田中オーガニクには、
『猛田をボコボコにしろ、ただし殺すな』
『他のメンバーにはなるべく手を出すな』
と、こまかく命令した。
――だが、壊れたオーガニクは、その命令の全てをシカトする。
「ギ……ギガガガガガガガァ!!」
まがまがしい咆哮とともに、オーガニクの筋肉が異様に膨れ上がった。
瞳の色が、赤黒く濁っていく。
「うわぁああ!」
「ぐぁあああ!!」
「と、砦ぇえ! 指示をくれぇえ! どうしたらいい?!」
田中ユウトの悲鳴が響く。
コメント欄も、瞬時に色を変えた。
『やばいやばい』
『コハルちゃんが死ぬ!』
『ジュリア様、助けて!』
『おい、誰かどうにかしろよ!』
『猛田、なに寝てんだ、死ね!』
もう……
うまいこといかないなぁ……
田中玉を使うか?
いや、ダメだ……
あんな変な技を使ったら、視聴者が離れる……
視聴者は、美しさやカッコよさを求めるもの……
あの技は、威力はともかく、普通に名前が悪い……
あと、華のない俺が最強っていうのはダメだ。
ダンジョン配信というコンテンツが死ぬ……
そうなれば、異世界侵略者に勝てない……
俺は舌打ちしながら、
「全員、スマホを切れ! スマホを浮かせる魔力がもったいない! 全力で戦うんだ! そうじゃないと全滅する!」
喉が張り裂けそうな声で、俺は叫んだ。
「「「――了解!」」」
★
そこからは、なりふり構わぬ総力戦だった。
俺は全力で全員に指示を飛ばす。
「九条! あと12秒引き付けろ! 展開できるのはあと3回……オーガニクの大技に合わせて温存!」
「了解!」
九条の【絶対防御の氷結障壁】は、間違いなく味方最強の盾。
だけど、持続時間はせいぜい3秒。
タイミングが命。
「桜庭! 号令、今ぁ! 16秒の時間差で2回かけて!」
「おっけー!!」
桜庭の【味方強化の号令】は、効果がランダムに決まる厄介なバフ。
『スキルのクールタイム短縮』が出てしまえば、効果は大きいが、全員分のスキルカウントを一からやり直す羽目になる。
何が出ようと、使った瞬間、その後の戦略を一から考え直さないといけないのが非常に面倒。
けど、むちゃくちゃ効果が高いから使わないわけにもいかないジレンマ。
脳がちぎれる!
個々の体調でも変動するスキルのクールタイム、
味方の体力・魔力の管理、
オーガニクの行動パターン――
全部が同時に動いていて、一つでも計算を誤れば、誰かが死ぬ。
きついねぇ……
けど、俺にできることなんて、これぐらいしかないからな……
「山本! 回復は御影から! 竜崎はまだ耐えられる! 優先順位守って!」
「大丈夫! 勝手に回復したりしないから!」




