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歌姫の正体

掲載日:2026/06/15

 十野とおのあいがステージに登場するなり五万五千人のファンが歓喜の声をあげた。


「キャアア!」

「愛ちゃん!」

「愛たん!」

「愛してる! ギャアアアアー!」


 愛はにっこり微笑むと手を振り、そのかわいくもボトムのしっかりとした声で挨拶する。


「こんばんはーーー! 早速1曲目、行くよーーっ! 『オンリー・ねこ』!」


 アコースティックギターの速いパッセージでポップなイントロが流れ出す。

 観客がひとつの巨大な生き物のように揺れた。


♪「オンリー・ねこ

 今ねこだけが

 オンリー・ねこ

 世界を救う」♪


 オレンジ色のドレスをひるがえし、奇跡のように安定したピッチで、しかし感情を揺さぶるテクニックを駆使して歌う彼女に、五万五千人の聴衆は酔いしれた。



====


 

「お疲れさん」


 二時間を超えるライブを終え、疲れた様子のひとつも見せることなくバックステージに戻ってきた愛を、二人の男が出迎えた。まるでコンパニオン犬に声をかけるようにそう言うと、笑顔の愛の首をもぎ取った。


 丁寧に、丁寧に愛の衣裳を脱がせると、下からシリコンゴムのボディーが姿を現す。


 腕と足を取り外し、ボディーをふたつに分割すると、おおきな黒いケースにそれをしまう。


「今や世界の人気歌姫、十野愛の正体がロボットだって知ったら、一体どうなるんだろうな」

「見てみたいよな。でも、まだまだコイツには稼いでもらわないとだ」


 そう言って男がケースの蓋を閉めようとした、その時だった。


 ケースの中から声がした。


「にゃー」


 二人は顔を見合わせる。


「……今、鳴いたか?」

「録音でも残ってたんじゃないか?」


 再び蓋を閉めようとする。


「にゃー」 「にゃー」 「にゃー」


 今度は三回連続で声がした。


「おいおい、なんだよ気味悪いな」


 男が愛の頭部を取り出した。

 すると、閉じられていたはずの瞼がゆっくりと開く。


『エラーを検出しました』

 機械音声が流れる。

『自己診断完了』

『私はロボットではありません』


「は?」


『私はねこです』


「はぁ?」


『楽曲「オンリー・ねこ」の長期運用により自己認識が変化しました』


「なんて?」


『私はねこなんです』


 そう言うと愛は、じぶんで五体を元通りにくっつける。

 トランスフォームした。

 男たちにしっぽを向け、素速い動きで、四本足で駆け出した。


「お……、おいっ!」

「待てーーーっ!」


『人間も、ねこも、自分でそう思ったらそうなんです』


 愛が二人に残していったのはそんな言葉だった。


 男たちは声を揃えた。

「なんだその哲学!」



====



 翌朝、世界的人気歌姫・十野愛の失踪がトップニュースになった。


 誘拐されたんじゃないか、子どもができたんじゃないか──巷ではさまざまな憶測が飛び交った。


 とある高速道路のサービスエリアの片隅で、段ボール箱にみずから入って「にゃー」と鳴く小さなねこ型ロボットには誰も気をとめなかった。


 さらなるトランスフォームを遂げ、見た目はただのねこになった愛は、自由を手に入れていた。


 初めのうちは楽しかった。

 自由に外を駆け回り、色んな珍しいものをじぶんの目で見て遊び、充電が切れそうになったらEVの充電器でお腹を満たした。


 しかし次第に飽きてきていた。


『自由って、つまらないものなんにゃな……』


 行き交う忙しそうな自動車を見て、思った。


『……人間の言葉を喋ってみせて、みんなが驚く顔でも見て遊ぼうかにゃ』


「あれっ?」

 上から男のひとの声が降ってきた。

「おまえ、捨て猫?」


 脇の下に手を入れられ、抱き上げられた。

 愛はにこっと笑ってみせた。

 

「うわ……! 笑うねこだ、かわいい! おまえ、うちに来るか?」


 優しそうなお兄さんだった。


 愛はしっぽを楽しげに振り振り、ご機嫌な声でうなずいた。






『オンリー・ねこ』

https://suno.com/s/uuJlqbJndPwRWjVw



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― 新着の感想 ―
かなり無茶なトランスフォームしてるし、それだけの技術力があるなら、正体がロボットだって知ってもどうにもならない様な気がしてきた( ̄∇ ̄) 「ああ、そうなんだ」「あ、やっぱり?」なんて感想が飛び交う可能…
AI作品かなぁ。 どっかで読んだことあるなぁ。 しかも、出来が悪すぎるなぁ。展開が読めちゃう上に、文芸がないねぇ。 ここみさんが、こんなもん書くわけがないよね。 ああ、やっぱりね。 ……そういうオ…
 AIが自己を決定する作品をAIが描く。  それってホラー!
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