竜斗①
(クソっ!まさかこの俺がこんなミスを・・・)
元々、始めは相手が興味を持つ様な提案を作らせ、後から改ざんしてコチラが有利に成る様な書類を作って、相手を騙して利益を得るつもりだった。
そしてその利益を自分の懐だけに入れる様に仕向けたつもりだった。
(何故にバレたんだ?)
社長の美沙ですら気が付かず、『承認』のハンコを押させる事に成功した件だ・・・
相手会社が気が付いたか?
それも変だ。
担当者もグルで、1部金を渡す計画に成っていた。
よは、この件は『超大口契約を取って来た我が社No.1の俺』をアピールする為のモノだったのだ。
これが成功すれば、竜斗の副社長の座を疑問視する連中も黙らせられた筈だった。
(まずは、何処からこの件がバレたのかを探る必要があるな・・・)
バレる可能性からいくと、部下達の中に裏切り者が居る・・・
だが、加藤をはじめ竜斗側の人間は、『地位欲』にしがみつく人間たちだ。
自分の地位を、危うくする様な選択はしないだろう。
(あと考えられる可能性は・・・)
目の前で美沙の父親と共に会議を進行していた?睦月春樹だが、ヤツが無能なのを理由にこの件には一切関わらせない様にしている。
もちろん、ヤツに動きがあれば、ヤツの身近に置いた部下達が竜斗に報告してくる筈だ。
(この馬鹿女に構い過ぎて、油断していたか?)
ここの所は、春樹をいかにして追い出すかを、美沙をマインドコントロールする事に夢中になり、会社の事を後回しにしていた。
今日も本来なら、美沙と2人でボイコットして春樹を不純理に苦しめようと考えていたくらいだ。
(よりによって美沙の両親が来る時に、こんな事に・・・いや?)
もしかしたら、その為に春樹が両親を呼び付けたのかもしれない・・・
(クソっ!あのクズが洒落た真似を・・・)
美沙とは違い、この両親は春樹に絶大な信頼を寄せている・・・このままでは竜斗の立場が危ない。
「急いで処理した方が良いですよ!」
その春樹の口調に、竜斗は苛立ちを感じたが、今はそんな場合ではない・・・
「クソっ!覚えていろ・・・後で痛い目を見せてやるからな」
そう言い残すと竜斗は、会議室を後にした。
(この屈辱、後で倍にして返してやる・・・何しろお前の妻は俺にゾッコンなんだから、家に帰れば美沙に痛め付けられるのはお前だからな)
その時、竜斗が自分の保身より美沙に付いて居れば良かったかも知れない・・・いや、1言でも会話を交わしていれば・・・自分の運命を変えられたかもしれない。




