美沙の両親②
「会長・・・御言葉ですが、美沙はしっかりやっていますよ!」
黙ってしまった美沙の代わりに、竜斗が美沙を庇うように発言した。
「ほほぉ〜そうなのか?ワシの耳には別な意見が入ってくるがな・・・」
美沙の父親は荒立てる事もなく、竜斗を凝視する。
「そんな会長ともあろう者が、下手な嘘や噂に惑わされないでください」
社名に傷がつきますよ。的な言い方で、竜斗は反論しようとしたが・・・
「君は私が騙されていると?誰にだい?」
その美沙の父親の言葉に、竜斗は堂々と当たり前の様に春樹を指さす。
「どうせ、コイツが貴方方に何かを吹き込んだんでしょうが・・・コイツは営業もろくに出来ない。企画も練れないクズなんですよ!」
竜斗はしてやったりと、得意げな笑みを浮かべる。
「・・・美沙、春樹の『本来の業務』は何かね?」
その父親の問いに、美沙はハッとした。
「事務全般と・・・私の補助役・・・」
そうだった・・・竜斗に来て貰ったのは、たんに営業経験の有る人物を確保する為だった。
それを自分の看板とする竜斗と、苦手な春樹を比べる時点で間違えているのだ・・・
「・・・それに加えて、彼は《他の人》の後始末もさせていたそうだな?」
自分達が社長室でイチャついていても、今まで通りに会社が回るのは春樹が裏で美沙がして来た仕事もこなしているからだ・・・何故にそんな事も分からない程に盲目していたのだろう。
「もしかして・・・美沙、お前は何でも器用にやる春樹を妬んでいたのか?・・・だから春樹の《不手》を持ち上げここぞと責ているのか?」
その父親の指摘に、美沙は図星の様な表情が出た。
「美沙、お前が負けず嫌いなのは知っているが、こんなやり方はフェアではないだろう?・・・違うか?」
そうなのだ・・・美沙は、春樹が仕事も家の事も難なくこなす為、自分に劣等感を感じてしまったのだ。
その穴を埋めて癒してくれた竜斗に心を動かされてしまったのだった。
だが、本来の負けず嫌いな美沙は、それを認められる筈はなかった。
だから、ソレを責めて春樹を自分の支配下に置いておきたかっただけなのだ。
「それと君・・・今、君の部下達が『この会議に来られないトラブル』が何か知っているのかね?」
美沙の父親は、竜斗に微笑みかけながら尋ねた。
「・・・どうせ、部下達のミスだろう?自分のミスは自分でカバーするのが当たり前じゃ・・・」
その為に、自分の上役の窮地に来れないのは部下として良くない事だが・・・
「・・・コレが何かは分かるよな?」
美沙の父親がテーブルに出したのは、竜斗の書いたという書類2枚だ。
「コレが何か?」
同じ内容の書類の筈だが・・・
「何故に双方の金額が違うんだい?条件も微妙に違う・・・」
その指摘に、竜斗は顔を青くした。
「つまり、今、君の部下達が必死に処理しているトラブルは君が起こしたモノなんだよ?・・・それで?」




