美沙の両親①
「美沙、どういう事か説明してくれ!」
美沙と竜斗が会社の会議室に辿り着いた時には、すでに会議のほとんどが終わっていた。
「春樹、アンタ、私が来ないのに会議を始めて良いと思ってるの?私が社長なのよ!」
到着そうそうに美沙はいつも通りに、春樹を責める口調で言ってやったが・・・
「面倒くさいから休む!と言ったのはお前らしいじゃないか?」
つかさず、美沙の父親が口を挟んだ。
「だとしても、社長が来ない内に会議を始めるのは、社長の私を馬鹿にしている証拠よ!」
そう美沙は言い放つが、周りの重役は呆れ顔だ。
隣で竜斗は周りを見回す・・・
「加藤達はどうした?あいつらも重役だろう?何故に居ない!」
竜斗に味方な筈の、重役達の姿が無い。
「彼らなら、『貴方のクレーム』の件で大忙しで、会議には出席はしてないよ?聞いてないの?」
その春樹の言葉に、竜斗は慌てて自分のスマホを確認してみる。
そこには、今回の会議に彼らが出席しない旨が書かれていた。
おそらくは竜斗達も出席しない会議に、自分達も出る事は無いだろうという判断なのだろう。
もう一つの理由は、先日に起きた竜斗が取って来た仕事に書面的、アフターに対するトラブルが起きた旨が書かれている。
「どういう事だ!アイツら、大至急に出席する様に伝えた筈だぞ!」
竜斗は、怒りを顕にするが・・・
「・・・君が春樹の代わりに副社長に成ったという・・・本田 竜斗 君かい?」
美沙の父親は、竜斗を見定めている。
「・・・そうよ、お父さん!彼は春樹よりも、遥かに優秀な逸材だわ!」
そう言って美沙は、竜斗を紹介しようとしたが・・・
「・・・ほ〜春樹を超える逸材ね〜君は『何をして』副社長の座を得たんだい?」
静かだが、重みのある言葉で美沙の父親は、竜斗にそう尋ねてきた。
「まさかとは思うが、美沙よ・・・彼が愛人に成ったから、《特別》に自分の権限で役職を与えた!とか言うまいな?」
その父親の言葉に、美沙はドキッとした。
たしかにずっとベタベタと一緒にいる為に、居ても不審がられない様に役職を、まだ早いとは思いつつも与えた事は事実だ。
「まさかとは思うが、彼(春樹)が表立った『成果』を出さないから、無能だと考えているのか?」
その言葉に、美沙は頷こうとしたが、何かが違うと戸惑い始めた。
よく思い返せば、竜斗関係の人間以外の所からは、春樹の悪評は聞いた事がない・・・それより、竜斗と付き合い出して、他の社員と話す機会がめっきり無くなっている。
「お前の良点は、下の意見もしっかり聞けて、それを会社の流れに生かしてくる事だろう?今はそれをしているのか?」
その父親の言葉に、美沙は押し黙ってしまう。
たしかに竜斗と出会う前は、色んな所に気兼ねなく顔を出して、皆に慕われていた。
だが今は、ほとんど社長室に引き篭もり、竜斗を相手している。
「・・・美沙、お前は儂の社長の素質を受け継いでると信じておる・・・だから、『目を覚ませ』!」




