目覚め②
「・・ソイツはアイツの親族に違いない!そんな連中は追い返せ!」
寝室に戻った美沙は、部屋の外で怒鳴ってる竜斗を目撃する。
(この口調は、やっぱり竜斗だったの?)
それは夢の最後に、大型バイクで失望した美沙を轢いた人物の声だ。
そんな筈は無い・・・春樹より遥かに自分を愛してくれる竜斗が、そんな事をする筈が無いのだ。
「竜斗、どうしたの?」
取り敢えず美沙は声をかける。
「アイツを名前を呼び捨てする老夫婦が、会社の前に現れたらしい・・・アイツめ、親に頼ったのかよ!本当に情けないヤツだな」
そう竜斗は卑下する笑みを浮かべるが、美沙はふとある人物を思い浮かべた。
(もしかして・・・)
「もしかして、会長を名乗ってない?」
その美沙の言葉に、竜斗は仕方がなさそうに頷いた。
「ああ・・・だが、スーツ姿じゃ無いらしいんだぜ?どう見たって一般人・・・ダサいアイツの家族に決まってるじゃん!」
そう言うと竜斗は指示を出そうとするが、慌てて美沙はそれを止める。
「・・・それ、私の両親かも、あの人達は普段はスーツとか着て来ないもの」
目立つのを嫌う為、普段は高級車にも乗らないし、スーツも着ない。一流企業のトップだからと着飾らないのだ。
それに美沙の両親なら、春樹を呼び捨てにしている。
はっきり言って、娘の美沙よりも両親は春樹を信用していて腹ただしい時もあった。
それも美沙が、春樹を邪険し始めた理由の一つでもあるからだ。
「父達が会社に来てるなら、絶対に不参加は許されないわ・・・春樹への『制裁』は後回しよ」
そう告げると美沙は慌ててクローゼットに向かった。
その様子を、複雑そうな表情で竜斗は見ている。
(くそっ!まさか美沙の親だったとは・・・不味いな印象が悪くなったか?)
ここでポイントを取って置かないと、計画が頓挫してしまう・・・
(ま〜アイツを卑下すれば、それも挽回出来るか?)
どれだけ春樹が使えない人間かを、働きかければ美沙同様に両親達もコロッと行くだろう・・・
(それか、今回の件をアイツが『やった!』事にして、責にするのも良いかもしれないな・・・)
そう考え付いた竜斗は、自分の手下に連絡を入れるが・・・
「・・・何だと!春樹がすでに《謝罪》して、迎え入れたって?」
どうやら先を越された様だ。
おそらくだが、今頃は娘と自分の批判を言っているのだろう・・・だが、こちらの方が会話力は上の筈だ。
それに味方も多い。いくらでも覆せる筈だ。
(しかし・・・何故にこのタイミングで美沙の両親が現れたんだ?)
たしか美沙の話では、あと1年は海外にいる筈だった。
(まさか、アイツが呼び付けたのか?・・いや、そんな情報は入って来てない)
竜斗も困惑しながら身支度を始めた。




