始まり①
「ごめんなさい。許してください・・・」
彼女は、ひれ伏す様に必死に土下座を繰り返してる。
「もう二度と、貴方を裏切る様な真似はしないわ・・・助けてよ!」
よく見ると、彼女は少し汚れたスーツを着ている。
(このスーツは確か・・・)
夫と初めて買った。記念のスーツだ・・・今となったら高価な物でも無いし、大した価値も無かった。
むしろ今の彼女には、アレは『過去の恥部』みたいな物だとも思っていた。
だが、それを身に着けているという事は、汚れているという事は、かなり困窮しているのかもしれない。
「〇〇は、家からも会社からも追い出したわ・・・貴方の『居場所』はちゃんと戻してあげたから」
その泣きながらの言葉にも、彼女の前に居る人物は何の反応も無い。
その人物は車椅子に乗っていた。
「・・・その足も私の『力』できっと治させるから、許してよ」
彼の足にしがみつくが、周りのボディーガードに引き離されてしまう。
「今の私には貴方しか頼れる人は居ないの・・・お願い!」
しかし、無情にもその人物は一言も話さず立ち去ってしまう。
「待って!お願いだから、話だけでも聞いて!」
彼女は懇願するが、全く相手にされていない様だ。
「私が間違っていたから・・・そうよ!アイツが私を唆したのよ」
立ち止まった彼の足に、彼女はしがみついた。
アイツが1番の元凶だが、自分が悪くないとは言えない。少なくても『決定』したのは、彼女なのだから・・・
「今は許せなくても良い・・・ちゃんと償いはするから、戻って来て」
だが、何の反応も・・・いや、彼女は引き離され、アスファルトに叩き付けられた。
(痛い・・・こんなに痛いものだったの・・・それを私は何度も・・・)
痛みと共に今までの自分の行為に、深く反省するしか無かった。
彼女が倒れている間に、彼は立ち去ってしまった。
(なんで・・・こんな事に・・・)
それは1番自分が分かっていた・・・
(コレが彼を苦しめた私の罰なのね・・・)
彼女は起き上がり、その場を去ろうとした時だった。
「お前の責で、俺の人生が滅茶苦茶にされた!」
その叫び声と共に、1台の大型バイクが彼女に向かって来た。
止まる気配は無い。
彼女はそのまま轢かれてしまう。
(聞き覚えのある声ね・・・まさかアイツなの?)
飛ばされながら、彼女は思った・・・
これは『因果応報』だ!来世が有ったなら、今度は彼を大事にしよう・・・同じ過ちは犯さないと・・・




