現金な
のはどちらなのか。ここ二話ほど短くてすみません。拍手採録が続きます。だけどそれだけでは寂しいので、加筆修正加えて少しだけ長くしてみたり。
しんと静まる部屋に二人。ふわりと広がる煙が渦巻く。
静かな沈黙に、耐えられなくなったのは俺か、きみか。
多分、心の底から気まずいのはこっちなのだろうが、口を開いたのは彼女だった。どこかけだるげな声がこちらに届いた。
「ねぇ、ねぇ」
机の上で頬杖をつき、こちらを見つめる。視線だけで、続きを促すとあっけないほど簡単な答えが返ってきた。
「好きだなぁ、って思って」
何の含みもなく、厭味でもなく、どこまでも素直に返してくる彼女が……。少し羨ましくなった。
「俺もだよ」
なんでもないように返すと、彼女はパァっと笑顔を浮かべる。現金というべきか、素直というべきか。
「じゃあ、タバコ止めて」
「俺に死ねって言ってんのか」
それでも笑顔の攻防戦は続く。
「違うよー。死ねなんて言ってない。ただタバコを止めてほしいだけ」
「だからそれが、死ねってことだろう?」
俺からタバコをひいて、一体何が残るというんだ。何も残るわけがない。(自分で言っていて非常に悲しいが)
他に楽しみも何もない、ただタバコが娯楽。
「体に悪いでしょ?」
「知ってる」
「私にも悪いんだよ? 私のほうが早く死んじゃうかもしれないんだよ? それでも吸うの?」
「……」
それを言われると、うっと止まるしかない。副流煙の影響など、とっくに知っているし、知った瞬間は『止めよう』と思うのだ。
「ねぇー」
「少なくする」
「止める?」
「少なくする」
止める、とは言わない。実行できなかったとき、責められるのは必須だ。
「私が好きなら止めてー」
ほぼ本気で入ってないのだろう。普段は絶対口にしないことまで口にした。よほどタバコの煙が嫌いなのだろう。付き合い始めるまで、身近に吸う人がいなかったらしい。
付き合い始めた当初はよく咳き込んでいて、それが気になって数ヶ月タバコを吸う回数がぐっと減った。それも彼女を思ってのことだ、と言い張りたい。
それを言うなら、すっぱり止めろという話だけど。
「好きだよ。だけど止めない」
「ばかぁ。肺がんになったら恨んでやる」
「だから少なくするって」
いつか、止められたらいいと思う。いつかは、の話だけど。
「キスするとき、タバコのにおいがするとがっかりする」
「それは謝る」
そう言いつつ、キスを一つ。苦い顔をした彼女の頭に手を置いて、ごめんごめんと謝った。そして、現金な彼女に一つ約束を。
「そのうち止めるよ」
結局、タバコを止める原因になったのは、彼女の妊娠、というオチなのだけど。
「あー、子供に悪影響だ」
「止めます。今すぐ止めます」
意外に止められたりするものなんだな、とそのとき初めて気がついた。
半分実話。
子供が出来るとタバコって止めれるらしいですよ。まぁ、人にもよるけど。