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larme ~短編集~  作者: いつき
単品(1~2話)
17/50

現金な

 のはどちらなのか。ここ二話ほど短くてすみません。拍手採録が続きます。だけどそれだけでは寂しいので、加筆修正加えて少しだけ長くしてみたり。

 しんと静まる部屋に二人。ふわりと広がる煙が渦巻く。



 静かな沈黙に、耐えられなくなったのは俺か、きみか。

 多分、心の底から気まずいのはこっちなのだろうが、口を開いたのは彼女だった。どこかけだるげな声がこちらに届いた。

「ねぇ、ねぇ」

 机の上で頬杖をつき、こちらを見つめる。視線だけで、続きを促すとあっけないほど簡単な答えが返ってきた。

「好きだなぁ、って思って」

 何の含みもなく、厭味でもなく、どこまでも素直に返してくる彼女が……。少し羨ましくなった。

「俺もだよ」

 なんでもないように返すと、彼女はパァっと笑顔を浮かべる。現金というべきか、素直というべきか。

「じゃあ、タバコ止めて」

「俺に死ねって言ってんのか」

 それでも笑顔の攻防戦は続く。

「違うよー。死ねなんて言ってない。ただタバコを止めてほしいだけ」

「だからそれが、死ねってことだろう?」

 俺からタバコをひいて、一体何が残るというんだ。何も残るわけがない。(自分で言っていて非常に悲しいが)

 他に楽しみも何もない、ただタバコが娯楽。

「体に悪いでしょ?」

「知ってる」

「私にも悪いんだよ? 私のほうが早く死んじゃうかもしれないんだよ? それでも吸うの?」

「……」

 それを言われると、うっと止まるしかない。副流煙の影響など、とっくに知っているし、知った瞬間は『止めよう』と思うのだ。

「ねぇー」

「少なくする」

「止める?」

「少なくする」

 止める、とは言わない。実行できなかったとき、責められるのは必須だ。

「私が好きなら止めてー」

 ほぼ本気で入ってないのだろう。普段は絶対口にしないことまで口にした。よほどタバコの煙が嫌いなのだろう。付き合い始めるまで、身近に吸う人がいなかったらしい。

 付き合い始めた当初はよく咳き込んでいて、それが気になって数ヶ月タバコを吸う回数がぐっと減った。それも彼女を思ってのことだ、と言い張りたい。

 それを言うなら、すっぱり止めろという話だけど。

「好きだよ。だけど止めない」

「ばかぁ。肺がんになったら恨んでやる」

「だから少なくするって」

 いつか、止められたらいいと思う。いつかは、の話だけど。

「キスするとき、タバコのにおいがするとがっかりする」

「それは謝る」

 そう言いつつ、キスを一つ。苦い顔をした彼女の頭に手を置いて、ごめんごめんと謝った。そして、現金な彼女に一つ約束を。

「そのうち止めるよ」




 結局、タバコを止める原因になったのは、彼女の妊娠、というオチなのだけど。

「あー、子供に悪影響だ」

「止めます。今すぐ止めます」

 意外に止められたりするものなんだな、とそのとき初めて気がついた。

 半分実話。

 子供が出来るとタバコって止めれるらしいですよ。まぁ、人にもよるけど。

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