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larme ~短編集~  作者: いつき
単品(1~2話)
16/50

電話

 拍手再掲。『newlywed』という短編連作を5作くらい書いていたのですが、続きを書く機会を逸してしまったので、一個だけあげてみますー。

 新婚さんのあれこれが書きたかったのだよ。

 短編にふさわしく。めちゃくちゃ短いのはご愛嬌。

 ♪~♪~♪

 まだ少しなれない明るい行進曲が耳に付く。たたんでいた洗濯物を放り出し、近くにおいてあった子機をとる。ディスプレイを見る習慣は……まだなかった。

「ハイ、もしもし」

 そこから先が、声にならなかった。正確には言葉を呑み込んだと言うほうが正しい。とっさに出てきた姓を押し込める。俗に言う、旧姓を。

「えっと……、清」

 いけ、もう少しだ。ここまできたら、勢いに乗ってしまえ!!

 本当に、旧姓、変わったよね? 間違いじゃないよね? 

「しみ、ず、です!!」

 火照ってくる顔も気にせずに、一気に言い切る。もう、電話でたくなくなってきた。もう、本日二度目です。ちなみに一回目はもっと時間がかかって、セールスの人に笑われました。

 そんなことを考えていると、向こう側で笑い声が聞こえた。

「あのさぁ、千紘。それ、わざとやってんの? それとも素?」

 笑ってる顔まで浮かんできそうで、思わず顔を覆った。電話の相手は“夫”だった。この“夫”もなれないものの一つだったりする。

「け、圭介くんの馬鹿……」

 言ってくれればいいじゃない。

「いや。分かると思って」

 そう嬉しそうに笑う、圭介くんが恨めしい。

「どうして、嬉しそうなの? 恥かいたよ」

 むっとして言い返せばあっけらかんとした答えが返ってきた。

「千紘が『清水』っていうから」

 結婚したんだなぁ、っていう実感があって嬉しかった。

 そう言われて、また赤くなった。せっかく治まってきてたのに。圭介くんはこういう人だ。変なところで照れがないというか、恥ずかしがらないというか。

「またかける」

 次こそは、『清水』と名乗ってやる。ぐっと拳を握り締めて誓うわたしだったが、数時間後帰るコールをしてきた彼に、また旧姓を名乗りそうになったのは、また別のお話。



「学習能力ない?」

「そんなことないもんっ!」

「もんって、可愛いなぁ」

「圭介くんの馬鹿ぁ」


 バカップルの会話はしばらく続く。

 そう、こういうテンションをたまには書いてみたい。

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