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larme ~短編集~  作者: いつき
単品(1~2話)
12/50

『voice』の続き。

ま、読んでなくても先輩×後輩でいいんですけど。短め。

「先輩」

 ふわりと空気が動いた。扉を開けた所為か、はたまた人間が入ってきた所為か、一人でいた部屋の空気が僅かに揺れた。

「御園……」 

 お前どこ行ってたんだ、とか、部長はどうした、とか言いたいことはあったんだけど。

「一緒に帰りましょ」

 もう部長も由香も帰りましたよ、と明るく言われると何も言えなくなった。

「アナウンスの予定表は?」

 来週ある文化祭で、アナウンスするのはこの放送部の役割。そしてそのローテーションを決めるのは今日だったはずなのに。

「え? 部長がもう出してましたよ? 部長と由香、先輩とあたし」

 知らなかったんですか? 部長と一緒のクラスなのに?

 そう言われている気がして、むっとする。もとよりあいつが俺に連絡をよこすようなことないとは思っていたが。

 ここまで自分の都合を無視されるとかえって腹が立つ。

「他の人はまた明日だそうです。とりあえず決まったのはこの二組。一日目の十時から十二時までです」

 何流します~? と間の抜けたような声が聞こえてきた。

 やわらかくて、いかにも女の子、というような声を出す。普段の声はもっと涼やかな声なのに、と小さく思った。

「さぁ。適当でいいだろ」

「と、先輩が言うだろうと思ってあたしは作戦を考えましたとさ」

 口調が少しおかしいが、そんなことを突っ込むまもなく小さな音楽プレイヤーを差し出された。

「百二十分間、何流しましょうか。二十曲ぐらい用意したらいいですかね。途中、呼びかけも入るし」

 とりあえず、人気の曲入れてきました、と差し出された。

「俺が決めるもんじゃないだろう。お前も決めるし」

「そうか……」

 じっと御園は音楽プレイヤーを見つめた。そしてこちらを見てにこりと笑う。

「先輩が聞いてるのを、そのまま歌っちゃえばあたしも聞けますよ」

 なおかつ先輩の美声も聞けて一石二鳥。なんて賢いの、あたし!! 

 と、自画自賛しているが、ありがたくも何ともない。

「一緒に聞けばいいだろう」

 深く考えずそう口に出すと、御園は一瞬だけ大きく目を見開いたあと『そうですね』と照れるように笑った。

「じゃぁ、イヤフォン片っぽずつ」

 さっさと俺の右隣に座り、片一方だけを差し出す。自分は左の、そして俺には右の方を差し出す。

「左の方がいいですか?」

 イタズラ気に呟いた。

「届かなくなるだろ。それだと。お前が左、俺が右、じゃなきゃ」

「いいえ~。届きますよ」

 ニコニコと何が楽しいのか笑う。

「引っ付けば、ね」

 どうします? と言う御園を無視してイヤフォンを取った。もちろん、右耳用の方を。

「残念」

「何がだ」

 そう会話を交わして、音楽を流し始めた。流れるのは有名なアーティストのバラード。

 そして次々かかるのも全てが恋に関するものだった。




 静かに、流れる曲はあたしの心そのもの。

 楽しいのも、苦しいのも、切ないのも、全て。

 あたしのおと届いてますか?

 ……短い。

 文化祭に流れる曲が好きだったりします。どうやって決めてるんだろう。

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