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魔女と竜狩り  作者: 合併
第1節 竜狩り
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第1節 8

 強壮剤でラセルタを走らせ、日付が変わる前には目的の隣村まで辿り着くことが出来た。

 哨戒の門番に仕事で来たこと、更にヴォルガに一度積荷を狙われたことをを告げると、夜遅くにも関わらず、彼らは門の内に迎え入れられた。ただ、本来手続きをするはずの村長も既に眠っていることを伝えられ、彼らは門番たちの待機する休憩所に案内されてその夜を過ごすことなった。

 念の為、荷物番としてヴァンは荷車の中で眠り、休憩所で眠るドットも、有事の際は対処できるように槍を抱えたまま寝ることになった。



 警戒はしていたものの、結果として何もなく、朝を迎えた。そして一足先に目を覚ましていたヴァンは、夜通しに哨戒をしていた、木の鎧で身を固めた村人を労うように彼らの分の朝食も作っていた。

 そして、まずは乾燥食料を適当にふやかして作ったスープの入ったカップを渡すと、まだ30ほどの小柄な男は手を合わせる。

「ありがてぇ。アンタが村長から聞いていた竜狩りか?」

「そうだな。詳しくは聞いてないが、協会からも追加の仕事があると聞いていた」

 2人はスープを啜りながらそんな話をすると、彼は隠すことなく話しだした。

「多分、アンタが追われてたヴォルガの野郎についてだろうよ。ここ最近、急に縄張りだなんだ言い出しやがって、村を襲わない代わりに、何かと食い物や金品を巻き上げていきやがる」

「……大方、そんなことだろうと思っていたが、やはりか」

 道中でヴォルガに襲われた時点で、少し嫌な予感はしていたが、十中八九、そういうことだろう。

 ただ、こちらとしても今までの落とし前をつけに行くには都合がいい依頼でもあり、言葉の割には、彼の声色は少し嬉しそうだった。

 出会ったばかりの男に、彼の僅かな感情の起伏は伝わることはなく、そのまま話を続けていく。

「ただ、外の治安自体は良くなってんだよな。熊だなんだの獣がこっちに近付くこともなくなったし、奴らは用心棒としては働いてるみたいだ」

「まぁ、飯の皿が増えるついでに、他所から巻き上げられるなら一石二鳥だろうからな」

 基本的に山賊も狩猟生活である程度の生計を立てていることを知っている上で彼が呟くと、男は渋い反応をした。

「―何か、気になることでもあるのか?」

「まぁ、その事なんだけどよ」

 彼は周りに人の目が無いことを確認しつつ、小声で話しだした。

「…ここだけの話だぞ? アイツらが来てから、翼竜をこの辺で見るようになったんだ。ただ、はぐれてきた割には都合が良すぎると思ってな。連れてきたんじゃねぇかって、俺は睨んでるんだよ」

 これは、飯の礼だからな、と彼は歯をむき出して笑いながら言い、ヴァンは空返事で返す。

(―確かに、不自然ではあったな)

 その話にあった翼竜は恐らく、先日は撃退した個体だろう。実際、今まで目撃例のなかった翼竜が突然出現するようになったというのは、不自然ではある。だが、それがあり得ないわけではない。いくつか原因が考えられるものの、鍵となるのは産卵後ということ。

 真っ当な翼竜であれば、子を守るために死ぬ覚悟で敵と戦う。よほどの理由がなければ、その翼竜が住処を離れて移住するとは考えにくい。ただ、絶対に無いという訳では無い。

 抱卵や育児のストレスに耐えきれず、子育てを放棄する個体は少なくはあるが、実例も存在する。それ以外には―

「卵を盗まれた、か」

 孵化直後の翼竜には、刷り込み―孵化直後に初めて見た動く生き物を親と認識する習性―が存在する。それを利用して、翼竜の卵を盗み、人の手で孵化させることで、人に従う翼竜を育て上げることができる。これも実際に行われた例があり、他国には翼竜部隊(ワイバニア)と呼ばれる部隊が存在するほどだ。そもそも、人の手によるラセルタの育成も刷り込み効果を利用したものであり、それ故に翼竜や大型爬虫類の卵は高値で取引される。それならば、あの翼竜の存在も合点がいく。

 そして、翼竜の卵を盗むような輩は、聞く限りこの周辺には恐らく一人しか該当せず、そこまでの仮定が正しければ、翼竜もヴォルガが原因という可能性がある。

 ただ、翼竜の件が白でも黒でも奴とは決着をつける必要があり、うまく追い詰めれば有益な情報を吐かせられる可能性もある。

 実際の要件がなんであれ、一通り片付いたら、王都に帰る前に持ち帰る荷物が1つ増えたということだ。

「……卵?」

 そんな考えを巡らせていたところで、少し言葉が漏れていたようで、男に聞き返され、ヴァンは思い出したように誤魔化す。

「何、色々考えることがあっただけだ」

「そうかい? まぁ、俺はそろそろ帰って少し寝る。アンタたちも、ほどほどの時間で村長の所に顔を出してくれ」

 彼の発言を深くまで掘り下げることなく、男は空になったコップを返して立ち上がる。

「あぁ、色々話を聞かせてくれてありがとう」

 ヴァンもコップを受け取りつつ礼を言って、男はそのまま消えていった。


 今の時刻は日の出直後。

 眩しい日差しが丁度正面に差し込んできて、ヴァンは辛そうに座っていた場所を移動した。

 隣で寝ていたラセルタも、日差しが直接顔に当たって眩しかったのか、目を覚ましたようだ。魔女の強壮剤の効果は十分で、睡眠時間は短かったものの、ぱっちりと目を開き、ヴァンの姿を見つける。すぐに彼の下に近寄り、きゅうきゅう鳴きながら頭を擦り付けてくる。

 その行動の理由について、ヴァンは昨晩の出発前に話していたことを思い出し、仕方ないと言いたそうにため息混じりに荷車に戻っていった。

 そうして、肉塊とパンと、保存していた野菜の詰まった瓶を持って出てくる。

「ほら、今約束のものを作ってやるから大人しくしてろ」

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