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魔女と竜狩り  作者: 合併
第1節 竜狩り
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第1節 14

 翌朝、日の昇る頃に目を覚ましたヴァンは、兜と服をきちんと着けてから、余り物の食材で朝食を作り、二人の部屋の扉をノックした。

「どうぞ」

 返事が聞こえ、遠慮なく扉を開けると、機嫌の良さそうに見えるベルと、死にそうな顔をしたドットが出迎えた。特にベルは、首都での手続きのため、肩に家紋でもある2匹の蛇の紋章が刺繍された、おろし立ての黒のスーツを着ていた。

 普段通り、黒地の布の服を着ているヴァンはそれをどうでも良さそうに見てから、机に食事を置く。

「飯にしようか」


 また、3人での食事を終えたところで、ベルは座ったまま、後ろにある机においてあった、ヴァンの手袋を取った。

「ご馳走様でした。それと、これ。頼まれた魔力の補充をしておいたよ」

「有り難い。これで、しばらくは安泰だ」

 彼は小さく頭を下げて受け取り、右手に填めて感覚を確かめる。

「―大丈夫そうだな。助かったよ」

 素直に礼を言われ、彼女もこそばゆいと言いたそうに身じろぎする。

「なんだ? 皮肉で返してもらいたかったか?

 俺もいい大人だ。その辺の分別くらいちゃんとついている」

 流石に呆れたように言い、片付けに入る前に、1つ聞いた。

「それと、差し支えなければ教えて欲しいんだが、お前の"魔女の力"はなんだ?」

 単刀直入に聞いた彼に対し、彼女は特に気にせず教えてくれた。

「私たちは、代々"風の魔女"と呼ばれてるよ。ここみたいに、大きな川がない分、風の力で動力を取り出していたの」

「そうか。覚えておこう」

 ヴァンはそう言って、メモ帳を取り出して何かを書き込んでいる。

「…何を書いてるんです?」

 あまり中身は見ないようにして聞くと、彼女がすんなりと答えてくれた代わりと言わんばかりに即答した。

「個人的なメモだ。…それは意地が悪かった。

 ―俺は、外で出会った魔女は、出来るだけその力だけでも書き残しておくようにしてる。仮に、任務で出会した時、それが本人なのか、正しく"継承"されたものか、判断するための材料の1つとしてな」

 魔女の力とは、万能ではない。魔女によって、特化した能力がそれぞれにある。そしてその力はその継承された魔女の力による物であり、似たような力はあれど、ほぼ同一の力は存在しない。

 そしてその魔女の力とは、親から子へ、その血と共に継承されるもの、いくつかの方法で他者に与えるという2つの方法がある。前者もそうだが、後者においても望まぬ方法で継承させる方法もある。そのため、魔女協会として、魔女の保護を目的に、非合法な継承を行う者、またその関係者の排除は仕事の一つとなる。

 当然、魔女の騎士団としてその一役を買っているヴァンには情報収集を求められており、活動の一環として、魔女の力やその人柄、関係性などを詳しくまとめていた。

 そのこと簡潔に一言で終わらせ、メモを書き終えたところで空の食器に手を伸ばす。

「さて。片付けをして、お互い仕事に取り掛かろうじゃないか」


 片付けと準備を終え、役場の1階の転送石の準備を済ませ、起動させる。

「大丈夫そうか?」

 ドット台座の設定先を、資料を見ながら確かめているのを見て、遠巻きに見ていたヴァンが聞くと、ベルが胸を張って答える。

「昨日ので大体わかったので!」

「そうか。気をつけろよ」

 彼は安心した風に言って、それを眺めていた。

「ところで、」

「どうした?」

 準備の間暇なのか、突然彼女が話しかけてくる。ヴァンも特に嫌な顔をせずに聞き返すと、落ち着いた様子で聞いていた。

「道中、会った山賊たちと戦うんですか?」

「そうだが、村長から何か聞いたのか?」

 特に隠すことなく返し、情報の出処を聞くと、小さく頷いた。

「今回、王都でいくつか商談を済ませるのですが、村長は山賊のことについて、王都に報告していないようなんですよね」

「わざわざ魔女協会に直接依頼を飛ばすくらいだからな。別に、珍しい話じゃない」

 ヴァンは特に気にした様子もなく答えると、ベルは意外そうにこちらを見た。

「今回のはレアケースではないのですか?」

 大きな目を丸くして聞いてくるも、返答は変わらない。

「そうだな。頻繁にはないが、新規で転送石によるポータルを開通申請を出す所は、何かしらそういった問題を抱えている。経済だけではなく、内政的な問題に対して、介入したことは何度かある。

 そもそも、だ。今までそのままで成り立っていた状況で、大国の傘下に自分から入ってくるのは、何かしら問題がなければやらんだろう。長の立場ならば、何かと口を出してくる上の立場の奴が生えてくるんだ。

 その問題が、今回山賊による恫喝と、それによる交易の停滞あたりが問題だろうな」

 淡々と説明し、彼は小さく笑った。

「だが、今回はウチに直接問題解決を依頼してくれたのは、組織としても旨味がある。ポータル開通後にその問題が発覚すると、まず傭兵組合に依頼が飛んで、うちにまで届く前に依頼を片付けられてしまうからな。―それに、個人的にも今回の件は因縁があるからな。寝覚めが悪くなる原因が1つ減らせるなら俺としても願ったり叶ったりだ」

 ヴァンは珍しく、嬉しそうに話すも、その真意はきっと、因縁にケリを付けられることだけではないように思える。ただ、その仮面に隠れた顔は分からず、表情が読めない。

「…まぁ、それなら少し安心しました。それが原因で罰則を課されてしまうのであれば、こちらも報酬を受け取ることが出来ませんし」

「……お前、なんだかんだ言ってしっかり商人だな」

 ほんの少し漏れた本音を聞き、少し困惑しながら呟くと、彼女は胸を張る。

「えぇ、これでも次期領主ですからね。したたかに行かなければ、不利益を被るのは私たちです。今回の商談の代行も、我々が一番の利益を頂いた上で他社との連携を結ぶためですもの。

 ―将来的な利益まで考えて動くのが"為政者"の責務だと、父上から何度も教わってきましたから」

 まだ若く見えるが、しっかりと教育はされているのだろうと思える発言をするが、ヴァンは鼻で笑った。

「はっ。これだから政治は嫌いなんだ」

「そうでしょうね。貴方のような蛮族には、こちらのほうが似合ってますよ」

 喧嘩を売るような発言に取れるが、彼は全く怒った様子はなく、ため息をつく。

「そう言ってくれると助かるよ。なんなら、あとで魔女協会にも口利きをしておいてくれ。俺を、本部じゃなくて外回りだけ出しておいてくれってな」

「……貴方、結構苦労してるんですね」

 思ってもなかった、切実な告白に彼女も苦笑するしか無かった。

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