2話
意識の底から浮かび上がる。ぼやけた視界から見えるのは、小さな窓。外はすでに真っ暗で、月明りもない。光源を置いていない寝室はまったくと言っていいほど闇に包まれている。
なんとか体を起こしてリビングの方に移動する。ランタンの中に静かに灯る炎がリビングを小さく照らしている。もう少し光源の強いものが欲しい。
ぐぐーっと体を伸ばして固まった筋肉をほぐしつつ頭を再起動させて、昨日したことを思い出していく。自分には記憶がないこと。『Codex』の存在と扱い方。住居の生成。
そして、やる気が起きなくて先送りにしてしまった近辺調査が残っている。と言っても、外はもう夜になっている。無理に調査をする必要はないだろう。それよりもまずは――。
ぐぅ~という、さらにやる気をなくさせる音がお腹の中で響く。
ご飯を食べることにする。思えば、初めて目が覚めた時から水すら口にしていない。今更ながら喉がカラカラなことに気づく。とはいえまだインフラは整っていないため、蛇口はあってもただの張りぼての状態。しょうがないので、『Codex』で直接水を創り出す。コップだけ創って湖から汲んでくるというのも考えたが、暗い森に入るのは嫌だし、どこかもわからない湖の水を飲むのも気が引ける。ついでに簡単な食べ物も『Codex』で創ってしまおう。
『Codex』を出してサラサラと創りたい魔法を書いていく。まずは"Aqua Cup"。テーブルの上に水の入った透明なコップが出現する。続いて"ToastGenesis"。まるでお店で売られているような、焼き加減まで調整されたトースト一枚が皿に盛りつけられている。簡単で質素だが晩ご飯が完成した。
「いただきます。」
小さく挨拶して、トーストを一口いただく。『Codex』から創り出されたとは思えないほどに香ばしい。噛んだ瞬間にじゅわっとバターの塩っ気が口の中で広がり、外はサクサク中はふわふわで、一言で言ってしまえば完璧なトーストだった。
あっという間にトーストを食べきり、コップに入った水を一気に飲む。水も予想外に澄んでいて飲みやすくおいしいと感じた。
「ごちそうさまでした。」
短い晩ご飯だったが、満足感、そして満腹感を充分味わった。これからのご飯は『Codex』で創ればいいのではないかと思えるほどに。
そういえば、と思い立ち、"ManaScope"を使用する。数値は《94,487/99,999》となっている。
――回復している。
昨日最後に確認したときはこの住居を創る前の《99,987/99,999》。そこから住居を創り、テーブルなどの家具を創ってから寝た。その時点で魔力量は確実に九万は切っているはずだ。しかし、数値ではそうなっていないということは、魔力が回復しているということ。きっかけはおそらく睡眠。詳しい回復量を知りたいところだけど、何時に寝て何時に起きたかがわからない。検証のしようもないので、保留にしておこう。
これで魔力の回復方法はわかった。ただ、睡眠以外にも回復方法があるかもしれない。エーテルやけんじゃのせいすい的なアイテムが。果たしてこの世界にそんなアイテムが存在するかどうか。考えたところで仕方ないし、これも保留にしておこう。
さて、これからどうしようか。外はすっかり夜で出歩けない。寝ようにも目が覚めたばかりで眠れそうにない。『Codex』についての研究をしようかとも思ったけど、安全にやるならもっと広いところ、それこそ外でやりたい。というわけでやることがなくなった。
どうしようか悩んでいると、玄関の方からノックの音が聞こえてきて、驚きで体が小さく跳ねる。
「誰かいますかー?」
ドアを通してくぐもった声が聞こえる。誰だろう。かなり軽い言い方だった。近くに住んでいる人だろうか。それとも野盗だったり。最悪な方向に考えてしまうが、今は接触するべきだ。私は記憶喪失で何も知らない。どんな人でも情報が欲しい。
ドンドンッ!とドアを強く叩く音が聞こえ。
「いたら返事をしてください!じゃないとドアを粉々にしますよ!」
これはまずい。少なくとも相手はドアを破るほどの武力がある。急いで護身用の魔法を『Codex』に書いていく。少し手から炎を出せば驚いて逃げていくだろう。
『MemorySlot』を《1》にして、魔法を記憶する。早くしないと相手が痺れを切らしてしまう。
「今出まーす!」
大声で相手に聞こえるように返事をして、小走りで玄関に向かう。
ドアノブを掴んで、想像してしまう。もしも開けた瞬間に刺されたりしたらと。しかし、それをすぐに否定する。最初から襲うつもりなら声をかけたりしない。ドアを破る力があるなら声をかけずに初めから破ればいい。大丈夫、少なくともドアを開けた瞬間に襲われたりしない。
一度深呼吸をしてから、内開きのドアを開ける。
いたのは、黒鉄の鎧の上から黒い外套を身につけた銀髪の騎士。後ろには、おそらく黒鉄の騎士の部下であろう兵士が二人、松明を持っている。少なくとも野盗の類ではないことがわかる。
黒鉄の騎士は、私よりも身長が大きく柔らかい表情で私を見下ろしている。しかし、松明の逆光で柔らかい表情のはずなのに、どこか暗く見える。
「僕は黒鴉騎士団団長のムニル。君は、ここの家の人かい?」
黒鴉騎士団。第一印象は、名前がかっこいい。けど、このムニルという人からは嫌な雰囲気を感じる。笑顔の奥に、何か隠しているような。
「は、はい。そうですが……。黒鴉騎士団の方がどうしてこんな辺境に?それも騎士団長様が。」
黒鴉騎士団を知っている体で話す。なんだか、この人は手放しに信用していいタイプではないと思う。記憶がない私にとってこれは悪手な気がするけど、自分の身の安全を最優先に考える。
「今はちょうど偵察の帰りでね、ここらへんで見たことのない家を見つけたから、様子を見に来たんだ。まさか本当に人がいるなんて思わなかったけど。」
はははっ、と笑って言う。この軽快さは、相手の警戒心を解くためなのだろうか。私は更に警戒心を強めた。
「それで、君はどうしてここにいるのかな。それとこの家についても、何か知ってるのかな?」
ここで、どこまで事実を言うか。とりあえず、私の魔法については言わない方がよさそうだ。
「私、目が覚めたら近くの湖で倒れていて、名前以外自分のことを思い出せないんです。どうしようかと迷っていたらこの家を見つけたので、ここで休憩していました。」
ある程度誤魔化しを交えて話す。これで私を保護してもらえる流れになってくれないかと、心の中で密かに祈る。
「なるほど、記憶喪失か。それは災難だね。」
その柔らかい口調に、一瞬心を許してしまいそうになった。
「でもさ、この家、本当に君が見つけたのかな。」
その言葉を聞いた瞬間、背筋がゾワリと粟立った。
笑顔は崩さず、声色も変わらない。しかし、より一層この人の雰囲気が暗く、闇に沈んだような気がした。
「さっきも言ったけど、僕はこの家を見たことがない。昨日ここにないことを見ているからね。それに、そこまで古くないよね、この家。」
廊下にはまだ明かりを設置していないため、唯一の明かりはリビングにあるランタンしかない。そのため廊下は暗くよく見えないはずなのに、ムニルは全てを見透かしているみたいだ。
「埃がひとつもないし、明かりも奥のリビングにしかない。仮に前からあったとしても、それはちょっとおかしいよね。」
その通りだった。月日が経てば埃は嫌でも溜まるし、明かりがひとつしかないというのも不自然だ。
「つまり、この家はつい最近建てられたってこと。さて、ここで君にもう一度聞こうか。この家は、本当に君が見つけたのかな?」
ムニルは顔を近づけて、私の表情を読み取ろうとしている。
「もしもだけど、君がこの家を一日で建てた、なんてことはないよね?そんなの、魔法でも使わないと無理だもん。」
「魔法」という単語が出た瞬間、後ろにいる兵士の一人が小さく笑った。
「ちょっと~、笑うことないじゃん。」
「申し訳ありません。ですが、魔法とは神の御業。神に認められた、ごく僅かな限られた人間にしか扱えないもの。それに、最後の一人となった魔法使いは百年ほど前に死んだと伝えられています。それをこんな小娘が……。」
信じられないという風にも、私をバカにしている風にも捉えられる言い方だった。
魔法とは神の御業。それも限られた人間にしか扱えない。彼は確かにそう言った。だとしたら、私はなぜその力を使えるんだろう。神に認められたから?けれど、私にはその記憶がない。予想通りというべきか、やはり私が魔法を使えることは言わない方がよさそうだ。
「だって、それしかありえないじゃん。この子が一日でこんな立派な家を建てるなんてさ。」
ムニルは顔を振り向かせて、兵士二人と会話を始める。
ムニルは、私のことを疑っている。限られた人間にしか使えない魔法を、私が使えるということを。だとすると、このまま私を見逃すということはしないだろう。
信用するべきなのか、この人を。逃げる?逃げるとしてもどこへ。逃げたところで追われるだけ。そのうえ更に疑いの目が向けられるだけだ。かと言って、この人の言う通りにするのは……。
私は無意識に、左足を半歩後ろに動いた。
ムニルの顔は兵士の方を向いている。私のことは視界に入っていない。音もほとんど出ていなかった。なのに。
「今、半歩後ろに動いたね。」
また、背筋がゾワリと粟立つ。
一瞬、ムニルの背中から黒い翼が広がったのが見えた。視界を覆うほどの、巨大な黒翼。
やばい、と感じとにかく家の中に入ろう、と身を翻そうとした。が、翻す前に、体を動かす前に止められた。
肩を掴まれた。それは掴まれたという感覚ではなく、猛禽類のように爪を立てられ肩を突き刺すほどに鋭利な痛みを伴い、表情が強張る。
「逃げようとしたってことは、なにか隠していることがあるってことだよね。」
肩を掴んだ手で家の外へと放り出される。咄嗟に立ち上がろうするも、今度はうなじ部分を掴まれて立ち上がれずもがくだけになった。
「まあまあ落ち着いてよ。ちょっとお話をするだけだからさ。」
ムニルがしゃがみこみ、私の耳元で囁く。
「大人しくしないと、もっと痛いことしちゃうよ?」
その言葉は、子供に躾をするような優しい言葉ではあったが、中身はそんな生半可なものではない恐怖が包まれていた。
言葉を聞いた瞬間、動きをぴたりと止めて力を抜いた。
「うんうん、偉いね。」
うなじを掴んだまま私を立ち上がらせる。魔法を使って脱出をしようかと考えたが、もうこの状態では使ったところでまたすぐに捕まる。このムニルという人の力は計り知れない。一瞬見えた巨大な黒翼。幻覚ではあったが、ムニルの潜在的な強さがそう見せたものだと思う。あれを見たら、もう逃げようなどという意志は削がれる。
二人の兵士に手錠を掛けられ、先頭にムニル、後方に兵士の二人、間に挟まれるように私という隊列で歩き始める。
これから私は何をされるのだろう。ムニルはお話をするだけと言った。となると尋問か、あるいは拷問か。聞かれるとしたら十中八九、魔法についてだ。向こうはまだ私が魔法を使えるという確信はないと思うが、疑いは掛けられている。
魔法について聞かれた場合、私はなんと答えればいい。使えないと嘘をついた場合、本当のことを言うまで拷問されるかもしれない。使えると正直に言った場合、神に認められた人間として崇められるか、それとも畏怖すべき存在として処刑されるか。どちらにしろ、あまり良い待遇は受けないと考えた方がいい。『Codex』があれば脱獄くらい簡単にできる。今は脱獄の方法とその後どうするかを考えるべきだ。
「ム、ムニル団長!」
後ろにいた一人の兵士が声を上げた。何か恐ろしいものを見たような、驚きの声だった。
私とムニルが同時に振り向くと、そこには腰布一枚に緑色の肌、真っ黒な瞳に尖った耳をした小人。いわゆるゴブリンと呼ばれる怪物が三体いた。全員が棍棒や鉈のような刃物を所持し、こちらを狙い不気味に笑っている。
「どうしてここに!ここら一帯のモンスターは、騎士団総出で全滅させたはず!」
もう一人の兵士がそう言った。野生の動物以外にも、モンスターというゴブリンのような危険生物がいる。昼間に襲われなかったのは運がよかったのだろう。しかし、全滅させたのならなぜここにゴブリンがいるのか。
「魔力に誘われて来たんでしょ。やっぱあれは、魔法で作られたってことだね。」
私の問いに答えるようにムニルが言う。
私の隣を音もなく通過して、兵士二人の前へ移動する。
「ムニル団長、こいつらくらいなら我々が――。」
ゴブリンの方を向いたまま、兵士二人を手で制す。
「ここは僕に任せてよ。君たちにもしものことがあったら、フギルに怒られちゃうから。」
鴉の翼を模したクロスガードがあしらわれた、真っ黒な長剣を腰から引き抜く。その長剣は松明の光で反射し光沢が見える。
長剣を見たゴブリンたちは怯えるどころか、更に威嚇し始める。
「この剣を見て逃げない……。かなり若いゴブリンなのかな?僕には関係ないけど。」
ただ一振り、横薙ぎに剣を振っただけ。
その一振りの間にムニルはゴブリンの背後に移動し、ゴブリンたちはすでに頭が地面に落ちていた。
まったくと言っていいほど見えなかった。瞬きをした時にはすでにゴブリンたちは死んでいた。冷や汗が頬を伝ってぽたりと落ちる。あの時無理に抵抗しなくてよかったと心底思った。
「さ、早く戻ろう。フギルは時間にもうるさいから。」
剣を振ると血飛沫が弧を描いて散り、ムニルは剣を収めながらまた戻る場所へと歩を進める。私と兵士もムニルの圧倒的な技に放心しながらも、ムニルの後をついていく。
あの技を見てしまうと、この人から逃げ出すことは不可能なのではと思ってしまう。足取りが重いまま、私はムニルについていくことしかできなかった。
◆ ◆ ◆
歩き続けて十分以上は経っただろうか。あれ以降全員無言で歩き続けている。私もあのゴブリンたちのように、首を落とされるのだろうか。ムニルはお話するだけと言っていたけど、本当にそれだけで終わるかもわからない。
とりあえず、今は『Codex』の存在を知られてはいけない。知られた結果、相手がどう動くかわからない。『Codex』を使うのも、人の目がない時に使わないと。
「お、ようやく見えてきた。」
ムニルが言って、正面を向く。
高い石壁の奥から、温かな明かりが漏れているのが見える。気づけば周りも森を抜けて田畑が多くなっている。今は夜も深いので人の姿は見えないが田畑の大きさが大小様々で、活気があり大きな都市なのだとわかる。
ムニルが門口にいる見張りの兵士に軽く挨拶をして通過する。見張りの兵士が訝しむような視線を私に送るので、視線を合わせないように下を向いた。
街の中へと入り、みんなすでに寝ているものかと思っていたが、意外にも明かりのついているお店が点々とあり談笑が聞こえる。
たまに人とすれ違うと、みんなムニルに挨拶や軽口を言い、ムニルは笑顔で一言返す。あの話し方なら人からも好かれやすいのだろう。だが、私はこの人の本当の怖さを知っている。絶対に警戒を解かないようにすると、静かに心に誓う。
たどり着いた場所は、石造りの建物。後ろにいた兵士は解散し、代わりに建物を見張る兵士一人がついてくる。入ってすぐの階段を下りていくと、地下牢が並んでいた。通り過ぎていく牢屋の中には、数人の男女がそれぞれ一人ずつ入っている。
「さ、君の牢屋はここだ。」
一番奥の空いている牢屋に、優しく招かれるように入れられる。牢屋の中には、藁の寝床が一つ。他は石の壁と天井だけで、明かりは廊下の壁に掛けられている松明の薄明りが届く程度しかない。
私が牢屋の中を見ている間に、兵士に牢の扉を閉めカギを掛けられる。
「今からフギルを呼んでくるからさ。少し待っててよ。すぐ戻ってくる。」
そう言い残して、ムニルは兵士と共にいなくなった。
ようやく一人になれた。これで落ち着いて考え事ができる。
まず、これからどうするか。最初に考え得るのは脱出だ。ここから門口へのだいたいの方向と通ってきたルートは覚えてるから、街から脱出すること自体はそこまで難しくない。
問題になってくるのはムニルから逃げ切れるかどうか。身のこなしだけじゃなく、最初に出会った時の問答。おそらく頭の回転も早いと思う。そんな相手から果たして逃げ切れるのか。
それに、私の記憶について知っている人がこの街にいるかもしれない。一度脱出してこの街から出たら、お尋ね者になって二度と街に入れなくなる。
そう考えると、今脱出するのは早計だと思う。脱出をするなら、自分の身に危険が及んだ時。拷問なり処刑なりを宣告された時がいい。それまでは大人しくしておこう。となると、今のうちにやれることはある。街の構造を覚えることと、脱出用のテレポートの魔法を記憶しておくこと。
「『Codex』。」
まずは街の構造を覚える。そのために、『Codex』で街全体の立体ホログラムを出現させる魔法を創る。
「"CityView"」
唱えると、牢屋の中央に街の全体像が青く半透明に映し出される。街は四角い外壁に囲われていて、東西南北にそれぞれ門がある。中心には大きなお城がある。これはおそらく王城だろう。そこから広がるように城下町が広がっている。
ただ自分がどの方角の門から入ってきたのかがわからない。通ってきたルートから逆算すればわかるかもしれないと指で追ってみる。と、幸運にも一つ目で正解のルートを発見した。南の門口から入ってそこから北東側に向かい、周りからは少し離れたポツンとある建物、ここが今いる場所だ。そこを中心にもう一度俯瞰して眺める。
数分眺めて、だいたいの構造を把握してホログラムを消す。
次はテレポートの魔法。これは単純に街の南門前にテレポートする内容でいいと思う。場所は覚えてるから、イメージしながら発動すれば大丈夫だと思う。たぶん。
『MagicName』を"Teleport: SouthGate"と命名し記憶する。これでいざという時に発動しなかったら困るけど、そこは信じるしかない。
「フギル、信じてくれって。」
奥からちょうどムニルの声が聞こえてきた。フギル、という人と話しているようだ。
「信じられるものか。魔法を使う少女だと?バカバカしい。どうせお前の勘違いだろう。」
「だったらゴブリンたちはどう説明するのさ。モンスターは一掃したはずだろ?」
「ふんっ。大方一掃の時に取り逃しがいたか、遠くからやってきたはぐれだろう。」
フギルの声はムニルと対照的で、低く厳かな声色だ。
「で、こいつがその少女か。」
ムニルとフギルが、私の牢屋の前に立つ。ムニルとフギルの面立ちは、似ているはずなのにどこか対照的な雰囲気だった。ムニルが爽やかなイケメンなのに対して、フギルは強面ハンサムと言ったところか。髪の色もムニルは銀髪でフギルは黒髪だ。二人は兄弟、とかだろうか。
「なんか、魔法が使えそうな雰囲気しない?どうよ。」
「雰囲気なんていう曖昧なものがわかるわけないだろう。状況証拠だけでこの小娘を魔法使いだとよく言えるな。たとえその家が魔法で作られたとしても、他の者が作った後で小娘が入り込んだという可能性はないのか。」
「あ……。」
確かに、言われてみればその誤魔化し方があった。
「しかしだ。もしそれが事実だとしたら、なぜそれをすぐに言わなかったのかが気になる。そう言えば連行されることもなかっただろうに。」
フギルは、私に疑いの目を向けて言ってくる。
「つまり、それを言えなかったということになる。お前の言う可能性はゼロではないわけだ。まあ、例えの話の中に過ぎないがな。」
今言われたことを言ったところで、更に私に疑いの目が向けられることだろう。というより、最初にムニルに捕まったタイミングでその嘘を言えなかった時点ですでに使えない。
「さすがフギル。わかってくれると思ってたよ。」
ムニルは嬉しそうにフギルの肩を組むが、組まれた方は鬱陶しいという表情をしていた。私はただ何も言えずに二人を見ていることしかできなかった。
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ひとくち『Codex』メモ
『MagicName』
『Codex』で魔法を創る際に魔法の名前を決める欄。英語名であることが必須。なぜかはわからないが。
文字数制限などは特にない。しかし私の発音が怪しいので、なるべく簡単で短い名前にするよう心掛ける。
管理のためにも、魔法名だけでどんな魔法かを思い出せるようにしておいた方がいいだろう。
こんばんは、雫です。
他の人たちの作品を見ると、みんなだいた4000文字くらいでした。自分は8000文字以上あります。長く書くから投稿頻度が遅くなるんですよね。まあ文字数を減らすことはないと思いますが。




