9話 混ぜるな危険
9話 混ぜるな危険
「お兄ちゃんと、あの水瀬さんが話してるなんて‥‥‥」
わたわたと慌てる麗奈。そんなに驚くか、同じ人間だぞ。
「あら、こんにちわ。妹さんよね?」
「そうです!、雑誌見てました!」
「そうなのね、少し前なのに知ってくれてたなんて嬉しいわ」
最近は、雑誌とかのモデルは断ってると言っていたなそういえば。
理由を聞いたら、ネットで少し太ったって言われたから、らしい。それで、前所属していた事務所もやめたらしい。だから今は芸能活動的なのはしていないそうだ。うん、実に水瀬さんらしいな。
「それで‥‥‥、お兄ちゃんとは友達なんですか?」
まずい、この流れは‥‥‥。
「いいえ、彼とはお付き合いをさしてもらっているの‥‥‥」
遅かった‥‥‥。
麗奈は今言われた情報を処理しきれていないらしい。完全に時が止まっている。
それを見た水瀬さんが追撃をかける。
「このとおり‥‥‥、ラブラブなのよ」
そう言って俺の腕をつかんでくる水瀬さん。麗奈は完全にフリーズしてしまっている。
まずは、麗奈を落ち着かせないと。
「お兄ちゃん‥‥‥」
「なんだ‥‥‥」
どうした妹よ、落ち着いたか?
「その‥‥‥、水瀬さんとはどこまで行ったの?」
麗奈の中の思春期が爆発していた。
◇◇◆◇◇
立ち話はなんだから、ということで3人でフードコートにやってきました。
「えっ、お兄ちゃんから告白されたんですか?」
「そうなの‥‥‥、私のことが大好きだったみたいなの」
完全に嘘の話がでっち上げられている気がするけど、気にしないようにしておこう。平気な顔でよくもそんな嘘がペラペラと出てくるな。
「というか、水瀬さん結構食べるんですねぇ‥‥‥」
大盛ラーメンに唐揚げまで食べている。
「あっ‥‥‥、そうなの、育ち盛りなのよ‥‥‥」
同じ学校じゃなかったから、油断していたようだな。まぁ、麗奈は水瀬さんのこと尊敬してるみたいだし、大丈夫か。
「そうなんですね!、たくさん食べれて尊敬します!」
「あら、そう‥‥‥」
まんざらでも無さそうなご様子だ。よかったね、褒められて。
「というか、水瀬さん、明里さんはいいの?」
「あぁ、それなら元々姉の用事で来ていたから、大丈夫よ。ほらこれ見て」
スマホの画面を見してくる。
明里【私のことは気にせず、牧野くんと暇をつぶしておきなさい】
気を使ってくれたのか。申し訳ないな。まぁ、一番申し訳ないのは付き合ってるっていう嘘の方だけども。言っとくけど主犯格は水瀬さんの方だ。俺は共犯者だから、罪は軽いはずだ。よし、俺は悪くない。
「ぜひ今度うちに来てくださいね、水瀬さん」
「あら、じゃあ今度お邪魔するわね。いいわよね?、牧野君」
また良からぬことを考えている気がする。怪しいなこの人。
「じゃあ、こっそり昔の兄の秘蔵写真を公開しちゃいますね」
こいつもだったか。というか全然こっそり出来ていないよ?、よし、昔のアルバムの隠し場所を変えておこう。
「じゃあ私も、彼にされてきた卑猥な行為を教えるわね?」
そんなことした記憶がないんですけど。落ち着いてください。
「私と二人きりの時に私の太ももばかり見てくるのよ‥‥‥」
いや、確かに綺麗な足だなと思って見てたけど、別に卑猥な目では見ていないぞ‥‥‥、ちょっとだけだ。というかバレてたのか。くっ、悔しい。妹の前で性癖を開示されるなんて。
「きゃ~、変態ですね~」
これは最悪な組み合わせだ。混ぜるな危険だ。
◇◇◆◇◇
「またね~!、杏葉さん」
「じゃあ、牧野君、麗奈さん」
「あぁ、また日曜日ね」
麗奈と水瀬さんはしっかり意気投合したようだ。というか、いつの間に名前呼びなんて。俺でもまだだっていうのに。
「意外と話してみると、親しみやすい人なんだね。私びっくりしちゃったよ」
「あの人も普通の人間だからな」
食欲を除けば。
「じゃあ、俺らも帰るか」
だいぶ話し込んでしまって、もう夕方だ。疲れたし、家に帰ってアニメの続きでも見るか。今放送中の「彼女の食費で、月のアルバイト代が消えてしまう件」を見ないといけない。なんか共感できるものがあってついつい見てしまう。なんでだろうな‥‥‥。
「えっ、まだまだ私見たいところあるんだけど」
女の子の買い物の時の、元気の良さは一体どこから出てきているのだろう。
◇◇◆◇◇
「今日は足が疲れたな」
ベットで横になると、体が溶けていきそうな勢いだ。
ふと、スマホを見ると明里さんからRINEが届いていた。
明里【よろしくね~、牧野君】
明里【妹をよろしくね!】
意外といい人じゃん。俺はどうやら勘違いしていたようだ。裏ボスとか言ってごめんなさい。
牧野【不束者ですが、よろしくです】
よし、これでオッケーだ。いい人そうで良かった。
すると、直ぐに返信が来た。
明里【ちゃんとゴムは付けるのよ?】
うん、だめそうだ。
◇◇◆◇◇
その日の夜、俺はまた同じ夢を見た。
またあの子だ。俺と同じネックレス‥‥‥。
女の子がなにかを言っている。
「私、絶対帰ってくるから‥‥‥待ってて‥‥‥忘れないでね」
顔も名前も思いだせないその子。でもとても懐かしい。
その女の子は泣いていた。
その日の夢はそこで途切れた。
【まずは、この作品を読んで頂きありがとうございます!】
「面白かった!」
「続きを読みたい!」
「この後どうなるのっ‥‥‥?」
と思われた方
下にある☆☆☆☆☆から、この作品への応援をお願いします。
面白かったら星5つ、面白くないと思われたら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。制作の励みになります。
何卒よろしくお願いします。