71話 やっぱりこの人‥‥‥変だ
71話 やっぱりこの人‥‥‥変だ
「なるほどね~。それは難儀な話だね~」
「ふざけてます?」
俺は、悠木になんて声をかけたらいいのか、水瀬さんが自分の事をどう思っているのかといった最近の悩み全てを打ち明けた。ここにきて水瀬さんとの関係を知られていることが役に立った。
ルリさんだけが俺の状況を知ってるってのも、今考えたら謎だけどな。
「いやいやそんなこと無いわよ?、若くていいな~って思っただけよ」
やっぱりこの人には相談するべきでは無かったのかもしれない。ていうかあなたも充分若いでしょ。
「まず言えるのは牧野君は超鈍感君ってことね。この前も言ったけど、これはもう事実だから受け止めるしかないわよ?」
「そう‥‥‥なんですよね‥‥‥」
もうこういう状況になったのも俺が鈍感だったっていう事の証明なのかもしれないから、潔く受け止めよう。
‥‥‥しんどいけど。
「確かにそういう状況の女の子になんて声をかけるのが正解なんてものは無いわね」
「それじゃあ相談した意味ないじゃないですか」
さっそく相談の一個目に結論を出してくれた訳だが、一ミリも参考にならない返答が返ってきた。確かにルリさんの言う事は一理あるけど、もう少し参考にできそうな事言えないかな。
「それと、その子はあなたに怪我を負わせたって事だけで思い悩んでいるって考えは違うわね」
「そうなんですか?」
退室を促そうと思った矢先に、今度はちゃんとしたアドバイスをくれた。それにしても、さっきの俺の説明だけでそこまで良く分かったな。
「当たり前でしょ?、私くらいになると、その状況証拠を聞いただけで一瞬で相手の気持ちが分かるものなのよ」
如何にも経験豊富な大人の女性って感じだ。今まで疑っててごめんなさい。俺の周りに見た目との相違が激しい女性がいるから疑ってしまっていた。
「まぁ、勘だけどね?」
「いや、だめじゃないですか」
さっきまでルリさんを信頼しそうになっていたというのに、やっぱりこのパターンか。あげて落とされるのは慣れてるけどね、誰かさんのおかげで。
「でも、これは信じてもらっていいわ。絶対そうだから」
なんなんだこの自信は。あてにしていいのか怪しいところではあるけど、俺の事情を詳しく知っているのがこの人しかいないから信用するしかないというのが悲しい。
実際一人で考えてるだけじゃ悠木にメールの一つも遅れなかったし訳だし。
‥‥‥でも、俺もなんとなくそう思える気がしてきた。先日麗奈の言っていた事と重なるし、信憑性がある気がしてきたぞ。
「とにかく話してみる事ね、まずはそこからよ」
「でもなんてメールを送ればいいですかね?」
「きっとあの子なら‥‥‥じゃなくて、自分の言葉で考えてみるのがいいんじゃないかしら」
「ん?、最初なんか言いました?」
「なんでもない、女性に質問ばっかりするのは良くないわよ?、私は言葉攻めなんて癖は無いからね」
いや、あなた相談に乗ってくれてるんですよね?、急に訳の分からないことを言い出す所がやっぱり変だ、この人。
「はあ、そうですか」
「まぁ、あなたらしく軽薄な冗談でも言ってみたら?、それで重い雰囲気を払拭するのよ」
「なんか気まずいんですよね、ここまで落ち込まれると」
「そりゃあ、自分のせいで人が死にかけたら心配するでしょう、しかも目の前で」
死にかけるって‥‥‥、あんまり患者に言う事じゃなくないですかそれは。
「しかも、自分の‥‥‥」
すると、ルリさんが急に言葉を詰まらせた。
「ん?」
「質問攻めは良くないって言ったでしょ?」
今のも質問に入るのかよ。もうこの人に突っ込むのはやめておいた方がいいな。
「まあ、これは私が言う事じゃ無いんだけど、あの偽彼女の子の事どう思ってるの?」
「え‥‥‥」
急に核心を突かれた気がして、なにも言えなくなってしまった。
確かに水瀬さんは美人だし、一緒にいて楽しいし、案外というかポンコツで、俺が居ないとダメダメで‥‥‥、ん~‥‥‥。
「分かりません」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあまだ、あの子にも勝ち目はあるのかも‥‥‥」
「だからさっきから何を‥‥‥」
さっきからぶつくさと小言を言っているので、何を言っているのか気になってしょうがないのだ。変な人だからしょうがないけども。
「だから、気にしないの。会話の中で質問が多い男はモテないわよ?」
いや、その小言が気になってるだけです。モテないって言うのやめてもらっていいですか。
‥‥‥俺普段は質問系の会話多くないよな?、別に気になってる訳じゃないけど、後でラインの履歴とか確認しておこう。
いや、これはただ事実の確認をするだけであって‥‥‥、言い訳してるとかそういうのじゃないから‥‥‥。
「じゃ、私はお仕事があるから、戻るわね。ばいばーい」
満足そうな表情をして退室するルリさん。
言いたい放題言って、今度は急に出て行ったな。都合でも悪くなったのだろうか。
あっ‥‥‥そうか、そういえばあの人仕事中だったな‥‥‥。




