7話 まずは食べ物から決めようか
7話 まずは食べ物から決めようか
俺は久しぶりに夢を見た。いつもはめったに夢を見ないのに。
それは多分小さい頃の思い出だ。今となっては思いだせないくらいの前の話。いや、本当はただの妄想なのかもしれない。
俺は女の子と話をしていた。たわいもない子供同士の会話。それでもこの時間がとても心地良い。
この思い出がいつで、どこで、この女の子が誰なのかも思いだせない。
女の子の顔もうまく認識できない。
そんな中でもひとつ見えたものがある。
その女の子の付けているネックレス、俺がずっと持っているネックレスと同じものだった。
女の子に話しかけようとしたが、上手く喋れない。記憶なのか妄想なのかも分からない。
この子もしかして‥‥‥。そう思い手を伸ばすが届かなかった。
◇◇◆◇◇
「おっはよーう!、お兄ちゃん」
今日も今日とて妹に起こされる。ほんとに早から元気すぎるな、妹よ。もうちょっとテンションを下げてほしいところではある。
「あぁ~、起きたよ」
俺はベットから起き上がり、机に置いてあるネックレスを手に取る。
まったく同じものをあの女の子は付けていた。
これってあの子の物なのか?、まずあの子は誰なんだ。
なんで覚えていないんだ自分は。まぁ、小さい頃の記憶を覚えてるやつの方が少ないだろうけど‥‥‥。
ひとまず考えることをやめて、朝の支度を始めた。
◇◇◆◇◇
それにしても朝から変な夢見たなー‥‥‥。疲れてるのかな。あの女の子もしかして、幼稚園の頃仲の良かったあの子か?、名前も思いだせないし。
制服の下に付けてあるネックレスを触ってみる。このネックレスの事を思い出せたら、なにか分かるのか
な‥‥‥。
考え事をしながら歩いていると、話しかけてきた人が一人。
「あら、おはよう、牧野君」
「あっ、水瀬さんおはよ~」
最近は毎日こうして一緒に登下校している。
「なにか朝から考え事?」
「いや、朝から変な夢を見たんだよ」
「そうなのね、疲れてるんじゃない?、‥‥‥最近なにか疲れることでもあったの?」
それは水瀬さんが原因かもね、と言いそうになったがやめておこう。
「かもね。最近息抜きも出来てないし」
「そうなの‥‥‥。じゃあ、次の日曜日暇だったりする?」
「あぁ、その日はなんも予定ないよ」
「それなら、日曜日‥‥‥、一緒にどこか遊びにでもいかない?」
え、まじか、水瀬さんとお出かけ。気を使ってくれてくれてるのだろう。これでお断りしたら男が廃ってしまう。ここは紳士的に対応しなければ。
「あっ、いいよ。もちろん」
「そう‥‥‥、それなら楽しみにしておくわ」
ちょっと嬉しそうにする水瀬さん。ほんとに、普通にしてたら物凄く可愛いのに。惚れてしまうぞ。
「それで‥‥‥、何食べに行く?」
「最初に食べ物から決めるのか‥‥‥」
やっぱり安定の水瀬さんだった。
「まぁ、私に任せといて。最高のお出かけを考えとくわ」
申し訳ないけど、とても不安です。
◇◇◆◇◇
「ここ、中間試験に出るからな~」
やはり朝一の授業は眠いな。この科学の先生の授業でずっと起きていられたことがない。おじいちゃん先生だから仕方ないけど。
和彦は爆睡をかましている。最近はバスケをちゃんと続けて頑張っているらしい。どのくらいもつのか楽しみだな。
「はいじゃあ、今日はここまでね」
俺が睡魔と戦っているといつの間にか一限目が終わっていた。やっと休み時間だ。
最近になって俺と水瀬さんを見に来る野次馬もいなくなり、クラスメイトも普通に接してくれるようになり、やっと平和な学校生活を送れるようになっていた。
「おい、牧野知ってるか?」
さっきまで爆睡していたのにこっち来るのが早いな。
「なにをだ?」
「今度うちの学年に転校生がくるらしいぜ」
「こんな時期にか?」
今はまだ5月のゴールデンウイーク直前だ。高校1年生でこんな時期に転入してくるなんて。
ん?、もしかしてゆうきか?、まだいつか分からないって麗奈が言ってたっけ。
「あぁ、なんか噂じゃゴールデンウイーク明けくらいから転入するとかなんとか。まだ確定じゃないらしいんだが」
「そうなのか、珍しいな」
「親の仕事の関係で仕方なくこの時期になったみたいな話らしいぞ。しかも、女子で凄く可愛いらしい。バスケ部の奴がその子を見たらしいんだ。転入試験かなにかで学校に来てたらしくて」
「へえ、そうなのか」
女子ってことはゆうきじゃないのか‥‥‥。いつこっちに戻ってくるんだろ。
「まぁ、お前には水瀬さんがいるもんな‥‥‥。くそっ‥‥‥」
和彦、実はあの人彼女じゃないんだ。ただの友達なんです。俺もお前と同じなんだ。
そんなこと口が裂けても言えない俺でした。
◇◇◆◇◇
「お兄ちゃんのカレー、やっぱりおいしいよ」
我が家の夕飯は基本俺が作るようにしている。今日はメニューは、特製無水カレー。簡単に作れるから重宝している。今度水瀬さんに食べさせたい(餌付け)、と密かに考えている。
「だろ?、これが一番なんだよ結局」
「だけど‥‥‥、4日連続カレーは流石に飽きるよ」
美味しいからいいじゃない。楽だし、たくさんできるし。決して手抜きとかではない。
「てかお兄ちゃんの学校めちゃ美人な人いるよね。確か、水瀬‥‥‥?さんみたいなひと」
「あぁ、いるな」
「あの人めっちゃ美人だよね。前読んでた雑誌にも載ってたし」
「あぁ、載ってたな」
「ああいうひと憧れるよね」
「あぁ、確かに」
お兄ちゃんその人と付き合ってるんだぜ。ふりだけど。まぁ、黙っておくか。
「お兄ちゃん仲良かったり‥‥‥、するわけないよね」
なんて失礼な。まあ確かに本当だったら関わることもなかっただろうけど。
「まぁ、お兄ちゃんにはあたしがいるから安心しなよ」
安心できないよ?、妹は妹だからどうにもならないよ?
言っとくが俺はブラコンじゃない。だけどお付き合いとかはまだ麗奈には早いから、俺が見守っておく必要がある。ブラコンじゃないからね?
妹の将来を案じながら、そろそろ飽きてきたカレーを口に放り込んだ。
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