63話 お兄ちゃん悲しいよ‥‥‥
63話 お兄ちゃん悲しいよ‥‥‥
人間という生き物は新しい物や事柄、環境などに置かれると多少なりともストレスを感じるものだ。そこに個人差はあれど、やはり人類皆そういうものだ、と俺は思う。
つまりそのストレスが無くなった時がそれに適応した証と言えるのだ。そして、その適応のスピードが己の力量、器の大きさというわけだ。
なんと俺はこの入院生活に対して、早々に適応することに成功したのだ。‥‥‥つまり俺は最強という訳だ。
「下らないことばっかり言ってないで、早く退院してよね」
「あ、はい‥‥‥」
最近一人の時間が長くて独り言が多くなっているからか、思ってることを無意識に喋っていたらしい。自分の事ながら恐ろしい。
そして、めっちゃ恥ずかしい奴じゃん‥‥‥。威厳のあるお兄ちゃんとしてやってきた実績が‥‥‥。
「昔からお兄ちゃんに威厳なんて無いからね‥‥‥、こんな元気なら問題なく退院できそうだね」
また心の声が漏れていたらしい。登校するまでに独り言の癖を直しとかないとな。やばい奴だと思われかねない。
「もうやばい奴なんじゃないの?」
「さっきからお前はエスパーか!」
「お兄ちゃんに話しかける前からずっと独り言喋ってたよ。流石に心の声全部出してる訳じゃないんだろうけど、細々となんか喋ってて怖かったもん」
もしかして俺、入院で相当メンタルやられてる?、全然環境に適応できてなかった?
「というか、来るなら連絡しろよ。急に話しかけられてびっくりしちゃったじゃんか」
「もしかして、最近いつもこんな感じなの?」
「えっ‥‥‥違うと思うよ」
「お兄ちゃん‥‥‥完全にやばい奴だよ‥‥‥」
「俺看護師さんの間でなんて呼ばれてるんだろ」
「お兄ちゃん、世の中考えない方が幸せなことも多いんだよ」
最近一人の時間も多いし、暇だから考え事とかしちゃって変な気分になっていた。意外とそういうので変になっちゃうんだな俺って。
考え事ってのは、色々あるんだけど‥‥‥一番はあいつの事だ。正直どうすればいいか分からない。悠木が思い悩んでるんだろうなってのは分かるけど。
「可愛い彼女さんが何回もお見舞いに来てくれてるのに、そんなんでメンタルやられてちゃダメでしょ」
「いやそれとこれとは別だろ。多感な思春期の学生が一人で入院なんてしたら、皆気がおかしくなるんだよ」
麗奈のやつお見舞いに来てるのにさっきから、ダメ出ししかしてこないぞ。俺が意識が戻った時はわんわん泣いてたってのに、もっかい死にかけてやろうか。
‥‥‥やっぱきついからやめとこ。
「悠ちゃんでしょ」
「‥‥‥ち、違うぞ」
「お兄ちゃん、分かりやすいね」
「俺はお兄ちゃんだぞ!?」
「はいはい凄いね~」
適当に流された‥‥‥お兄ちゃん悲しいよ‥‥‥。




