62話 もちろんいい意味でダヨ?
62話 もちろんいい意味でダヨ?
「久しぶりだね、少年」
「ええ、そんなキャラでしたっけ?」
「まあそんなこと気にしないのよ」
とても明るい性格をしている看護師さんだ。もちろんいい意味でダヨ?
「そういえば‥‥‥」
「んん?、どうしたの?」
名前を聞くのは失礼だなと思い、その看護師さんの胸あたりを見た。
ちなみに胸を見たのは、名札の名前を見るためだからな。その目的しかないだろう。和彦には話す事柄が増えたけど、それはまあ大丈夫だ。
「お名前はなんていうんですか?」
一応初対面じゃないから、名前を聞くのは失礼かなと思って名札を確認したのだが、何故か名札を付けてなかったから名前が分からなかったのだ。
つけ忘れていたのだろうか。
「あ~、じゃあ瑠璃って呼んでね。ルリお姉さんでもいいよ?」
じゃあって、名前を今考えでもしたのか。相変わらず変な‥‥‥、不思議な人だな。
「ルリさんですね。よろしくお願いします」
「よろしくね、圭太くん」
「名前覚えてくれてたんですか」
「そうなの~、覚えてたのよ~。すごいでしょ?」
‥‥‥なんか一々反応が変な時あるな。こっちが反応に困る。この前入院した時に結構話したとはいえ、謎に親しい感じだし。
「それで、美人局はまだ続いてるの?」
「だから、美人局じゃないですってば」
この前、話していた時から水瀬さんに妙にトゲトゲしいのは何故だろうか。
水瀬さんの事だから何か恨みでも買うような事をしたのだろう。
「じゃないとおかしいってば。あんなかわいい子がこんな甲斐甲斐しくお見舞いにきてくれるなんて。だって本当は付き合って無いんでしょう?」
「さっきから結構ズバズバ言ってきますね。その通りではあるんですけど‥‥‥」
「でしょう?」
「そこまで言われると普通に堪えますね」
「そんな落ち込まないでよ~。冗談だって」
笑いながらそう言ってくる水瀬さん。自分で人を傷つけて、自分で励ましてくるってなんだよ。最新の治療行為の一種とでも言うつもりだろうか。
「あの子絶対に圭太君の事が好きだよ。流石にそれは分かってるんでしょ?、恋愛ドラマの鈍感主人公じゃあるまいしさ」
この前自分でも思ったけど、他の人から見てもそうなのだろうか。しかし、ここでは他の人と言っても、条件が存在する。
それは俺と水瀬さんが偽の恋人関係だと知っていることだ。それは俺と水瀬さんしか普通知らないから、周りから見るとただのカップルなのだ。
それが何故か、この人にはこの前入院した時につらつらと喋ってしまった。もう会うことも早々ないだろう思っていたから喋ったのだ。
それがこんなにも早く入院するなんて思いもしなかったな。今思えば、高校生活だけで人生終わるのかっていうくらい濃ゆい出来事ばかりだ。
「そうですよね。俺も最近思うようになってきて」
「えっ、最近なの?」
「そうですけど」
「鈍感すぎでしょ?!」
そんなにビックリすることなのだろうか。
「あなたそこら辺の物語の鈍感主人公より鈍感よ」
「えっ」
俺は違うと思っていた。この前考えた時も違うと思っていた。そんな恋愛アニメの鈍感主人公とは違うのだと思っていた。
「流石にないわね。3か月くらい続けてるんでしょその関係を」
「そう‥‥‥です」
「あなた、恋愛ドラマの見ててイライラする系鈍感主人公と変わらないよ?」
「ああ‥‥‥」
俺はその時思い知らせた、自分が鈍感系主人公に分類されるのだと。てか一言余計じゃないですか?
そして俺はその現実を突きつけられ、ショックで固まってしまったのだった。今にも叫びだしたい気分だったが、その時は必死に我慢した。‥‥‥その時は。
◇◇◆◇◇
その日の深夜、とある病室から奇妙な唸り声?のような音が聞こえてきたと夜勤の看護師の間では話題になったらしい。




