52話 校長先生のお話って必要?
52話 校長先生のお話って必要?
「おはようございます皆さん。今日は待ちに待った校外学習の日ですね」
こういう時って絶対校長先生のお話が入るよね。もはやその為に校長先生っているんじゃないのかと思ってしまう。
「皆さん早く行きたいでしょうから、短めに話しますね」
こういう時の短めに話しますって言葉ほど、信じられないものは無い。大体漢字とか歴史の事について語りだすからな。
「皆さん、写真がどのくらい昔から‥‥‥」
ほら、こういうのね。体育館の床のせいでお尻が痛くなってきたから、早くしてくれないかまじで。体育館の床ってずっと座ってるとまじでお尻痛くなるよね。
「ほら、圭太。真面目に聞かなきゃ」
「朝から元気良いなほんとに」
本日のペアである朝日奈悠木さん。元気ハツラツビタミンCって感じの女子高生だ。
「早く行きたいね」
くいっと顔を近づけて微笑んでくる悠木に少しドキッとしてしまったのはこいつには黙っとこう。
「それではお待ちかねの今年のテーマを発表します」
校長の長い話が終わり、ついにこの行事で一番大事な写真のお題目を発表するようだ。みんなさっきまでとは一変し、校長先生に注目した。
「今年のテーマは、二人の思い出ツーショット選手権です!」
意外と普通のお題だった。思い出のツーショットって幅広すぎないか。採点の基準が難しすぎるだろ。
周りを見渡すと、男女でペアになった連中が盛り上がっている。水瀬さん達は‥‥‥、見ないでおくか。今日は和彦にとっては試練の一日になるだろうな。
「やったじゃん圭太。私たちにぴったりだよ」
「いや、実質ツーショットならなんでも良いって事だからどのペアも変わらないだろ」
「も~、そういうとこだってば」
そういえば昨日麗奈に乙女心がどうしたみたいな話をされたばっかりだったな。今日は意識しておかないと。
「それじゃあ一年生の皆さん行ってらっしゃい!」
◇◇◆◇◇
「それで今どこに向かってるんだこれ」
「まだ内緒だよー」
いやどこだよまじで。というかさっき体育館から解散する時の水瀬さんの眼光が怖すぎたぞ。まるで犯罪者でも見る目だった。
‥‥‥見なかった事にしておこう。辛いことは後回し、俺の生きる上でのライフハック術だ。
「てか自転車禁止って意味わからんだろこの行事」
「まあ遠くに行かないでねっていう意味なんじゃない?」
「確かにじゃないと自由すぎるしな」
写真を撮り終えたら帰ってもらって構わないとか言ってたしな。クラスの男子連中、真っ先に家に帰ってた奴らもいたくらいだ。
「今日は私に任せてよ。この日の為にちょっと考えてきてたからさ」
「それはありがたい。悠木に任せるよ全て」
「任されましたー」
悠木のやつなんか楽しそうだな。こうやって二人で出かけるのなんて、ほんとに久しぶりだ。昔と違ってちゃんと女の子っぽくなってしまったし。
「ほら、圭太走るよ。時間は有限なんだから!」
「走るって、おい!」
呼び止める前に小走りで先に行ってしまった。中身は昔とあんまり変わってないんだよな。俺あいつにかけっこで勝った事なかったけど、今は負ける気がしない。
俺も昔と変わったってとこを見せつけてやらないと、と思ったけどもうあんなとこまで行ってるし。
「おい!、お前が先に走ったら追いつける訳ないだろ!、俺が!」
そして俺も悠木の後を追って走り出した。
あいつにかけっこで勝つのはまたの機会ににしておこう。暑いから熱中症にでもなったら大変だ。
◇◇◆◇◇
「ハァ~、ふ~~、疲れた‥‥‥。もう動けん、一回休憩しよう」
「ほんと情けないな圭太は。昔と全然変わんないね」
クスクス笑ってくる悠木。お前の体力がおかしいんだってば。荷物も持っているっていうのになんて走力だ。
「ふ~、やっと落ち着いた」
やっとの思いでたどり着いた先はこの町の駅だった。さっきから駅の方に向かってるなとは思ってたけど、目的地は駅だったんだな。
「というかなんで駅に来てるんだ?、ここで写真撮るのか?」
確かに駅前の周りには色々な施設があるし、写真を撮るには持ってこいなのか。まあなんにせよ、早めに写真を撮って‥‥‥。
「えっ?、違うよ。電車に乗るんだよ?」
「は?」
「え?」




