51話 俺は違うぞ
51話 俺は違うぞ
俺が一番好きな場所はどこかと聞かれたら、自分の家のベットと即答するだろう。そのくらい自分の家のベットが一番好きだ。
歯磨き、明日の準備等、すべての雑事を終わらせて入るベットほど幸福な場所はないのではないか。大体そういう時に限って速攻で寝落ちしてしまうんだけけれど。
「ん~分からん‥‥‥」
俺は今日一日を振り返っていた。水瀬さんがクラスで四面楚歌に陥るところから始まり、水瀬姉の襲来に公園での水瀬さんの言動を鑑みた上でだ。
流石の俺でも思った事がある。
「俺の事好きなのか‥‥‥」
己惚れるなという意見は御もっともだが、少し待ってほしい。
俺はそこら辺の漫画とかに出てくるような鈍感系主人公とは違う。流石にちょっと変だ。最近の水瀬さんの言動に、明里さんの言ってる事も良く分からない事が多いけど。
水瀬さんは変わってるからなと心の中で言い訳していた自分が居た気がする。俺なんかの事を好きになるなんてな、と。
でも水瀬さんが変わっているのは事実だ。そこは間違えないで欲しい。
「俺は‥‥‥」
そこで自分はどうなんだと考えてみた。
正直に言うと‥‥‥嬉しいに決まってるだろ!
だってあんな美人だし、めっちゃ大食いだけども。でも一緒にいて楽しいし、変人の部類ではあるけれど。
でももしそう仮定しても良く分からない事は多い。明里さんの言動に水瀬さんが何故俺なんかを好きになったのか。
俺に付き合う振りを提案してきた時点では俺と水瀬さんに接点なんて無かった。しいて言うなら意外と近所に住んでたっていう事くらい‥‥‥。
いや、そういえば俺の事を知ってたって言ってたよな。近所だから俺の事を知ってたとか。でも俺なんかの事をなんで‥‥‥。
「分からん!」
「ってお兄ちゃんうるさいよ!」
急に麗奈が部屋に怒鳴り込んできた。俺がもしそう言う事をしてたらどうしてくれるんだ。妹に醜態を見せつける癖は流石にないぞ、ほんとだぞ。
「なんかさっきからブツブツ聞こえてたけど」
「えっ、声に出てたの俺」
「内容は良く分からなかったけど。てか顔めっちゃニヤニヤしてるよ」
おっと、口にも表情にも出ていたようだ。てか自分の部屋だからなにしてもいいだろ。
「そういうプレイは私が居ない時にしてよね」
「そういうプレイってなんだよ。どんなプレイなんだよ」
恐ろしい事を言わないでおくれ妹よ。俺は至ってノーマルなんだ。
「俺にも悩みに考え事の一つくらいあるんだって」
「もしかして杏葉さんの事?、それとも‥‥‥悠ちゃんの事?」
「なんで悠木が出てくるんだ?」
「いやぁ、なんとなく?」
「なんで悠木が出てきたのかは謎だけど、水瀬さんの事は当たりだな」
「なになに、喧嘩でもしたの?」
「喧嘩なんかしてないわ。喧嘩しても俺が一方的にやられるだけだって。俺がただ悩んでるだけ」
この事を正直に話す訳にもいかないしな。実は付き合ってる振りでしたなんて、麗奈にどんな顔されるか分からない。
「ふ~ん、何をそんなに悩んでるか分からないけど、杏葉さんは相当お兄ちゃんの事好きだと思うよ。悔しいけど」
悔しいってなにこの子?
「あとお兄ちゃんは女の子の気持ちを分からなすぎなんだよ。もっと周りを見てみなよ」
あんなDQNファッションが好きなくせに、中々言うじゃないか麗奈よ。
「周りって‥‥‥」
「まあ、そこらへんは自分で考えてみる事が大事だよ。私から見てて、お兄ちゃんは鈍感すぎるの」
自分でさっき鈍感主人公とは違うって決め込んだのに、俺にはまだ足りないのか。でも確かに水瀬さんの本心はまだ分からない事が多い。
「というかお兄ちゃん早く寝なくていいの?」
「いや考え事で‥‥‥」
「そんな事より明日は悠ちゃんと学校の行事でお出掛けするんでしょ?」
そう明日は7月16日金曜日、謎行事写真撮り大会の日なのだ。
「そうだな~」
「悠ちゃん楽しみにしてるはずだから、お兄ちゃん頼むよ?」
「なんでそんな‥‥‥」
「はいはいもう寝て下さいね。部屋の電気消しますからね。はいおやすみ~」
そう言いながら電気を消して出て行った麗奈。お前は俺のお母さんかと突っ込みたくなったけど、やめとこう。麗奈がキレると母親より怖いからな。
今日のところはもう寝よう。




