5話 腹黒少女
5話 腹黒少女
俺は今、大急ぎで身支度をすましている真っ最中だ。
「これは遅刻確定だな‥‥‥はぁ‥‥‥」
俺の高校での無遅刻・無欠席の記録は2週間で終わりを迎えた。
俺は妹を振り払い、3度寝ほどして、完全に寝坊してしまった。
麗奈からはRINEが届いていた。
麗奈【お兄ちゃん、もう起きた?】
麗奈【今日は生徒会の仕事があるから、もう先に出たからね】
麗奈【何回も起こしたからね?、言っとくけど】
妹よ、兄を見捨てたな‥‥‥。まぁ起きなかった俺が悪いんだけどね。だけどもう少し、粘ってほしかったよ。まだ急げば、朝のホームルームには間に合うから急ぐか‥‥‥。
◇◇◆◇◇
小走りで家を出たが、結構ギリギリだな、間に合うか?、
学校まであと少しのところにあるコンビニに、見覚えのある人物がいるのが発見できた。まさか、嘘だろ‥‥‥。
「おはよう、牧野君。社長出勤だなんて、偉くなったものね」
「まさか、待っててくれたの‥‥‥?」
「当たり前でしょう‥‥‥、カップルというのは連帯責任が伴うものよ。あなたが遅刻するなら、私も遅刻することになるわ。つまり、私が遅刻する時はあなたも遅刻しなさい」
なにを言ってるんだ‥‥‥、それに、両手にはコンビニのウインナーにハッシュドポテトを持っている。それをムシャムシャ食べる水瀬さん‥‥‥、幸せそうだな。もうこの時間帯には生徒はみんな学校についてるだろうけど‥‥‥。やっぱりこれで高嶺の花って呼ばれてるなんて、よくバレなかったな。まぁ、俺も、昨日の昼休みの事件が無ければ、彼女を尊敬したままだっただろうけど‥‥‥。
「というか、水瀬さんほんとに遅刻するから、急ごうか」
「わかったわ‥‥‥ちょっと待って」
俺がそう急かすと、直ぐに両手のホットスナックを食べ切った水瀬さん。食べ終わるの早いな。思わず、食べるのが早い人は太りやすいらしいよ、と言いそうになったが心の中に留めておいた。これも優しさだろう。
「さっ、急ごう、水瀬さん」
そして僕は急ぎ足で学校に向かう。すると後ろからうめき声のようなものが聞こえた。
「待って‥‥‥牧野君。食べ終えたばかりだから走れない‥‥‥」
「はぁ、これがみんなの憧れか‥‥‥」
この様を見たら、みんなどう思うのだろうか。これじゃあもう遅刻確定だ
俺は間に合わせる事を諦め、水瀬さんと一緒に学校に向かった。
◇◇◆◇◇
「すいません‥‥‥、遅刻しました‥‥‥」
結局、俺たちが教室についた頃には、ホームルームが始まっていた。二人で一緒に遅刻したので、みんなからの視線がすごかった。恥ずかしいからそんなに見ないでぇ‥‥‥。
みんなの前で二人揃って先生に公開お説教を喰らう。なんだこのプレイは。そして、俺の方が説教が厳しめだ。水瀬さんは、間に合うのにわざと遅刻したんだぞ。
「おまえたち‥‥‥、二人揃ってなんで遅刻したんだ」
「朝は少し、体調が優れなくて‥‥‥。すみません‥‥‥、間に合うように急いだんですけど‥‥‥」
「そうなのか、水瀬。それは仕方ない‥‥‥。体調に気をつけろよ」
なにが体調が優れなくて、だ。さっきまであんなにジャンクな油ものを食べていたくせに。しかも二つ。
俺は全て見てたんだぞ。こんな迫真の演技で嘘をつけるなんて、恐ろしいな。詐欺師もびっくりの名演技だ。ひょっとしてそっち方面の才能があるんじゃないか?、美術室の鍵も易々と手に入れてたし。
「それに比べて‥‥‥、どうせ牧野は寝坊だろ!」
決めつけが凄いな。この変態教師め、水瀬さんにはあんなに優しかったのに。まぁ、ここは一芝居売っておくか。
「いや、お腹が痛くて‥‥‥」
「嘘を付くな!」
速攻で見破られてしまった。
「嘘を付くなんて、人として一番最悪な行動だぞ!」
正論すぎて反抗する気も起きない。だけど先生、俺のとなりにその人として一番最悪な行動をした人間がいますよ。同じ嘘でもここまで違うのか。
社会の理不尽さに絶望していると、となりには笑いを必死に堪える水瀬さんの姿が。
くそっ、こいつなんてやつだ。自分が走れなくて間に合わなかったって分かってるのか?‥‥‥、だけどまぁ、遅刻した俺を待っててくれたんだ。そこは優しい‥‥、というか、どうやって寝坊したことが分かったんだ。さっきは急いでたからなにも思わなかったけど、冷静に考えたらなんでだ?、気になるし、後から聞いてみるか‥‥‥。
「聞いてるのか!?」
「はいっ!」
先生がいきなり大きな声を出すから、びっくりして変な声が出てしまった。
水瀬さんがさらに笑いそうになって、それを堪えている。ちょっとでも優しいと俺が甘かった‥‥‥。先生、となりの小悪党に騙されないでください。彼女のお腹は真っ黒です。
◇◇◆◇◇
やっと地獄のホームルームが終わり休み時間になった。さて、なんで寝坊したことが分かったのか、聞きに行くか。
俺が席を離れようとすると、ぞろぞろとみんなが集まり、和彦を筆頭にクラスの連中に囲まれてしまった。
「おい、牧野。全て包み隠さず話してもらおうか」
あっ、これ知ってる。俗にいうラブコメ主人公の友達キャラがうざいってやつだ‥‥‥。
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