48話 天は二物を与えず
48話 天は二物を与えず
「こんなとこで一人でなにしてたのさ、牧野君は」
「普通に帰ってただけですよ?」
「はぁ、現役の高校生なんだからさ、放課後はもっと遊んどかないと~。私が高校生の時なんかは‥‥‥ってやっぱ私のは聞かなくていいよ。牧野君にはまだ早いし~」
いやなにしてたんだよ。そのニュアンスだとまあまあ凄い事を‥‥‥、って深堀りするのはやめておくか。なんか触れない方が良さそうだしな。しかも笑顔なのが尚更怖い。
「明里さんこそ一人でなにしてたんですか」
「一人じゃカフェに来ちゃいけないみたいな言い方だよ?」
「いや、そういう訳じゃないんですけど‥‥‥」
確かにカフェを一人で利用するなんて別に珍しくはないんだろうけど。俺だったら一人でカフェに行くくらいなら家でゆっくりしたいと思ってしまうのだ。
カフェ巡りとかする人の気持ちがあまり分からない人種なんです。こういう時に水瀬さんが居たら、これだから牧野君は、って突っ込まれてそうだな。
「今、杏葉の事考えてたでしょ?」
「えっ」
その通りすぎて声すら出なかった。なにこの人、読心術の師範代でもやってんのか。流石に怖すぎるでしょ。
「いや、適当に言っただけだよ?」
俺が明里さんに恐怖していると明里さんが笑いながらそう言ってきた。
「やっぱり牧野君は面白いな~。早くお婿さんで来て欲しいくらいだよ」
その言葉を聞いた俺は思わず口に含んでいたピーチティーを吹き出しそうになってしまった。寸止めで事無きを得たけど、俺の口腔周囲筋が退化していたら危ない所だった。
「冗談だってば~」
「分かってますけど‥‥‥」
「それにしてもそれだけ杏葉の事を大事にしてくれてるって事よね」
「はい、‥‥‥まあそうです」
「ふ~ん、それならよろしい」
明里さんには本当に敵わないな。例えるなら、水瀬さん(妹)に賢さと狡さを足したみたいな存在だ。
‥‥‥最強じゃん。
「その感じなら喧嘩とかした訳じゃないんだね。いつも一緒に帰ってるから何かあったのかなって思っちゃった」
「水瀬さんは期末テストの補習ですね」
「あぁ~そうだったの。ほんと杏葉は勉強はできないからね~。天は二物を与えずって言うしね、でもあれだけ可愛いかったらそれだけで充分ね」
天に二物も三物も与えられている人が目の前にいるんですけど、神様しっかりバランス調整お願いします。
「私も牧野君みたいな人に出会いたかったな」
「いやいや、明里さんなんて引くて数多でしょ。大学でも相当‥‥‥」
「まあそりゃモテはするけどさ」
この人ナチュラルにモテることを認めたな。いや明里さんくらい美人だったらその通りなんだろうけど。
「大学なんて所詮みんなから‥‥‥、ってこれはいいや。でも杏葉と牧野君見てたら、ちょっともどかしくなっちゃうのよ」
「もどかしいっていうのは」
「それは言葉の通りよ。高校生活なんてあっという間なのに、それでいいのかなって」
「えっ‥‥‥、どうことですか?」
さっきから明里さんが言っている意味が良く分からない。もどかしいって‥‥‥、そういえば前に水瀬さんの家に泊まった時も似たような事を言ってたような。
「それは教えれないな~」
「この前もそうやって言って教えてくれなかったですよ」
「私が口出ししたら天然物の物語じゃなくなっちゃうのよ。そこを分かって欲しいわね牧野君には。まあそれはそれでいいんだけど」
天然ってなんだよ。反対に養殖の物語もあるのか。まず物語ってなんだ。
「そんな質問ばっかりされちゃお姉さんも恥ずかしいわよ?」
はぁ‥‥‥、でもこれ以上深堀するのはやめとくか。ほんとにこの人はアドバイスする気があるのかないのか分からないな。
ほんとこの人なら俺と水瀬さんが偽のカップルってことも見抜いてそうだな。
‥‥‥流石にそれはないか。
【まずは、この作品を読んで頂きありがとうございます!】
「面白かった!」
「続きを読みたい!」
「この後どうなるのっ‥‥‥?」
と思われた方
下にある☆☆☆☆☆から、この作品への応援をお願いします。
面白かったら星5つ、面白くないと思われたら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。制作の励みになります。
何卒よろしくお願いします。




