46話 夢なら良かったのに
46話 夢なら良かったのに
授業中だというのに教室が騒がしい。
みんなお菓子を食べたりスマホをいじったりとやりたい放題だ。まるでヤンキー漫画に出てくるクラス崩壊した教室のような有様になっている。
急だが今までの恋愛コメディショー(?)はもう終わりだ。
拳と拳のぶつかり合いに血生臭い闘争まで、不良ヤンキー青春群像劇をお届けする事になります。そして俺がこの学校のトップを目指す物語だ。
「なに変な顔してるの圭太。またしょうもない事を考えてる顔してるよ」
しょうもないとは失礼な。硬派な漢で行かしていただきます、今日から俺は。
そして横の席から茶々を入れてきた女子生徒こそ、主人公の幼馴染で不良同士の揉め事に巻き込まれる系のか弱いヒロイン‥‥‥。
「それにしても自習ほど素晴らしいものは無いよね~。この授業の先生、唐突に自習にしたりするよね。しかも自習課題も出してこないからほんと神だよ」
「‥‥‥自習は良いよな。テストも終わってるし、本格的にスマホ触るくらいしか無いもんな」
そうです、ただの自習なだけでした。これからも恋愛青春サスペンス(笑)をお送りするので安心してくだい。
悠木がヤンキー漫画に登場したら、悠木が不良を倒して物語が終わってしまう。だからそういう方向性に持って行けない事に気が付いたから中止にします。
ちなみに小さい頃の俺は悠木に喧嘩で勝てた試しがない。
「というかさ、今度の写真撮影大会楽しみだね!」
眩しいほどの笑顔で微笑んでくる悠木。閃光玉くらい眩しいな。昔の悠木を照らし合わせて中和しとかないとスタンを喰らってしまう所だった。
「でもどんなお題なんだろ。せっかくなら一位取りたいよね」
ショートカットボーイッシュ美人とモブ男子高校生っていうお題だったら一位取れますよ。
「まあそこまで結果に拘らなくてもいいじゃないか。そんな成績に影響するわけじゃないし」
「はぁ、ほんとに分かってないよ圭太。というか足りてないよ」
「な、なにをだよ‥‥‥」
分かってないって何をだよ。というか足りてないってなんだよ。
「乙女心というか、健全な高校生の感受性というかさ」
乙女心についてはまだ理解できるけど、健全な高校生の感受性ってなんだよほんとに。心理学かなにかを専攻されてる方ですか。
「そいうのが高校生活の思い出になるわけじゃん?」
「たしかに‥‥‥、その発想は無かったな」
「でしょ?」
心の中で行事ごとに本気にならない俺かっこいいって思ってる奴を馬鹿にしてたのに、気付かずにそちら側の言動をしてしまっていたなんて。
恥ずかしいやつになってしまっていた。
「でもやっぱり上位三組は紹介されるから恥ずかしいだろ?」
「そんな私たちなんかが本気でやったところで上位3組になれっこないって。写真撮ったりするのが元々好きな人とかもいるだろうし」
「それもそうだな‥‥‥」
久しぶりに悠木と二人きりで外出なんてする気がする。小さい頃はいつも二人で遊んでたけど、高校生になった今は周りの目があるからな。
しかも水瀬さんという彼女もいる‥‥‥設定だしな。
「じゃ、当日は楽しもうね!」
‥‥‥眩しい。
それにしても近くで顔をまじまじと見られたから思わず顔を逸らしてしまった。
こいつ普通の男子にそんな事してたら勘違いして告白されちゃうぞ。お、俺はそんなこと無いからな?
いくらこいつが可愛いくても、幼馴染という事に変わりない訳だ。昔の悠木を知ってるからこそ、尚更そんな感情湧かないんだ。
相手もそう思っているからこそ、今の距離感で接する事ができる訳で‥‥‥。
「もしかして私に照れてるの?」
俺が幼馴染とはなにかについて考えていると、悠木が急に耳元で囁いて来た。
「な、な訳ないだろ!」
「あ~図星だったんだ。私の事ちゃんと異性って思ってくれてるってことだよね~?」
なんだこいつ、あざといキャラも似合うじゃん‥‥‥。
いや、そんなこと考えちゃこいつの思うツボだ。これはあざといキャラじゃなくてうざいだけだ。決してそういうのも良いなぁとか思ってる訳じゃないぞ。
「なにがそんな面白いんだよ!」
「いや、照れてる圭太可愛いな~って」
ケラケラ笑いながら悠木が俺に可愛いと言ってきた。
男子が女子に言われて自分に好意が有るのか無いのか、分からずに悩むランキング17位くらいに入る言葉だ。
「私もまだ捨てたもんじゃないね。圭太に女の子だって思ってもらえてるならさ」
「俺に思われても良い事ないだろ」
「ふふ~ん、そんなこと言うんだ。こんなに可愛い女の子にさ~‥‥‥、なんちゃって」
「確かに可愛いけど‥‥‥、って今の無し!」
動揺して思わず心の声が出てしまった、こんな漫画みたいに心の声が漏れるなんて。
「はいはい、今の無しね~。聞こえてなかったよ~?」
「おい、もういいってば」
「はいはいもういいって~」
こいつさっきから俺の事を煽りまくって来やがって、今に見てろよ。お前の弱点は昔と変わらないなら‥‥‥。
「これでどうだ!」
俺は狙いを定め、悠木の脇腹をくすぐってやった。
「きゃ、やめて、それセクハラだよ、いやっ」
こいつは小さい頃から脇腹が弱点だ。俺が悠木に一方的にやられた(物理)時はこれで良く反撃をしていたのだ。これでちょっとは反省を‥‥‥。
「はい逮捕だ」
肩の方にポンっという手の平が当たる感触がした気がした。
後ろから急に担任の声がするなんて、これはきっとなにか悪い夢だな。そんな事ならもっと早く起こして欲しかったものだ。
そして俺は自分の頬を一つまみしてみた。
「いや夢じゃないからな?」
冷や汗が止まらない。後ろを見るのも怖いけど、恐る恐る後ろを振り向いてみた。
「自習になったって聞いたから、様子を覗きに来てみれば。出来立てホヤホヤのカップルみたいに事をしてる奴らが居たから先生驚いたよ、牧野」
そこにはやっぱりうちの担任がいた。そしてクラスのみんなも俺らの方に注目していた。
「ちなみに‥‥‥いつから見てたんですか?」
「聞きたいか?」
「いや、遠慮しときます‥‥‥」
みんなの視線に気が付かないなんて、俺としたことが。水瀬さんは笑顔でこちらを見つめていた。目が合ったら石にでもされそうなので、あまり見ないでおこう。
悠木に関しては恥ずかしさのあまり机に顔を突っ伏してしまっている。
「みんな真面目に勉強してるっていうのにお前らときたら」
「えっ、みんなも‥‥‥」
みんな机には勉強道具が広がっていた。なるほど、みんな咄嗟にスマホとかお菓子を先生が来た瞬間に隠したのだろう。
なんて卑怯な奴らなんだ、俺は気が付きもしなかったというのに。
「後から職員室に二人で来なさい」
「はい‥‥‥」
◇◇◆◇◇
その日は俺と悠木、二人して職員室でお説教を喰らう羽目になってしまった。これでまたみんなからいじられるネタが増えてしまった。
その後水瀬さんからも個人説教を喰らったのは言わなくても分かるよね。
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