31話 噂の転校生
31話 噂の転校生
「はいじゃあ、今日の授業はここまでねー」
やっと午前中の授業が終わった。なんか今日はやけに疲れる。なぜかというと朝からの一件でうちのクラスは見世物状態だ。他のクラスのやつらも悠木の事を一目見ようと集まってくる。すると必然的に‥‥‥。
「圭太~、お昼食べよ~」
「いいけど、声でかいって」
「?」
いや、少しは気にしろよこの状況を。あなたみんなの注目の的なんですよ、気づいてないのか‥‥‥。そんな状態で俺に話しかけたら‥‥‥。
「またあいつかよ‥‥‥」
「水瀬さんと付き合ってるんだよな?」
「浮気かよ?」
「水瀬さん、振られたんじゃない?」
「人間のクズね‥‥‥」
結局か‥‥‥、本当になんでいつもこうなるんだ。そんなこと言ってたらまた水瀬さん怒っちゃうよ。誰が水瀬さんの機嫌取りをしてると思ってんだこいつらは。‥‥‥てか、クズは言い過ぎだろ、ただの悪口じゃん。
「なんか朝からめっちゃ人に見られてる気がするんだよね~」
「そうだな」
「転校生だから珍しいのかな?」
「そうだろうけど、ちょっと違うな」
それもあるんだろうけども、普通の人じゃこんな事にはならないだろう。転校前から可愛いって噂されてたら、そりゃみんな見に来るよな。それで実際に可愛いからこうなってるんだけどな。
「圭太っていつもお昼は教室で食べるの?」
「いや、いつもは‥‥‥」
水瀬さんの方を見ると、なにか言いたげにこちらに向かってきた。まずい‥‥‥、怒ってるなこれは。
「‥‥‥」
「どうしたのかな‥‥‥水瀬さん」
「今日は友達と食べるから。牧野君は朝日奈さんと久しぶりの再会な訳だし」
「あ、そう‥‥‥」
おや、意外と怒ってないのか?、水瀬さんがこの程度で終わる訳ないって思ってたからサッパリしてて驚いたな。そんなことを思っていると、横から悠木が話に割り込んできた。
「じゃあお言葉に甘えて、今日は圭太を借りるね?」
「ええ、どうぞ。気にしないで」
この状況、なんか気まずい‥‥‥。水瀬さんあんまり気にしていないっぽいけど、傍から見たらただの修羅場だ。最近は水瀬さんと一緒にいても変に見られたりする事もなくなっていたのに、振り出しに戻ったか‥‥‥。振り出しどころか悪化してるまであるな。
「じゃあ、私ここの食堂行ってみたいんだけど大丈夫?」
「まぁ、別にいいけど」
確かにこのまま教室にいるのは気まずいし、食堂に行くのもありだな。水瀬さんには後から謝っておかないとな。そして俺は逃げる様に教室を出た。
◇◇◆◇◇
「ここの食堂美味しいねー」
「うん、そうだな‥‥‥」
味がしない‥‥‥、何故かというと‥‥‥。
「あれ、噂の一年生の転校生じゃん、マジで可愛いじゃん」
「隣の男‥‥‥、あれ水瀬杏葉の彼氏じゃね?」
「え、まじかよ。あんな可愛い彼女いるのに‥‥‥羨ましー」
「普通にきもいよな~」
さっきから教室以上に言葉の弾丸が飛んでくる。これじゃ教室の方がマシだったまであるな。とっととご飯食べて帰りたい。てかきもいは違うだろ。
「なんか私達なんか目立ってる?」
「いや、それはお前が転校生っていうのもあるんだけど‥‥‥」
「水瀬杏葉さんでしょ?」
「そうだ、俺って水瀬さんと‥‥‥」
俺がその事を言いかけた時、悠木が食い気味に割り込んできた。
「知ってるって言ったでしょ?」
さっきはその事を知ってるって言ってたのか。それにしても食い気味だったな。
「この学校に来る前に、美人なちょっとした有名人がいるみたいに聞いてたけど、まさか圭太と付き合ってるなんて思ってもなかったから‥‥‥」
確かに俺なんかが付き合ってるなんて思わないだろうな誰も。まあ実際に付き合ってはいないんだけどね!
「だけど、やるじゃん圭太。あんな美人な人捕まえるなんてさ」
「まぁ流れとういうかなんというかなんだけど」
「私応援してるから、頑張りなよ?」
「分かってるよ、そんなこと」
応援してくれてありがとう。でも、ちょっと近くない?
「あのさ、ちょっと近いかな‥‥‥」
「あっ、ごめん‥‥‥。ちょっと熱が入っちゃって、子供の頃みたいにしてたらダメだよね‥‥‥」
気持ちが入って最後の方は俺の手を掴んできてたぞ。でも、そんなに応援してくれるなんてありがたいな。
「うわ、見ろよ。堂々とイチャイチャしてるぞ」
「もしかして、水瀬さん振られたんじゃね?」
「うわっ、最低じゃんあいつ。じゃあ俺水瀬さん狙おうかな~」
「てか、まじ可愛いなあの転校生」
ほら、またこういう勘違いする奴らが出てくるじゃん。悠木の奴、距離感を考えてくれないとこれから大変だぞ。悪気はないんだろうけど。
「ほら、人の目があるから、もうちょっと気を遣うというか‥‥‥」
「そうだよね、私が昔みたいに圭太の近くにいちゃいけないよね。彼女もいるんだし‥‥‥」
うわー‥‥‥、ちょっと申し訳ない気持ちになるからやめてくれよ。そこまでは言ってないんだけどな‥‥‥。
「いや、そんなことはないぞ。昔みたいに悠木と遊びたいしな」
「そう?」
「うん。全然迷惑とかじゃないから」
「良かった‥‥‥」
うんこれでいいんだ。俺は二股野郎とかクズだとか言われる事になろうが友達を蔑ろにするのはもっとダメだ。悠木の悲しむ顔を見たくはないからな。
「じゃ、これからもよろしくね?、圭太‥‥‥」




