29話 夏服とスルメ
29話 夏服とスルメ
「今日の学校だるいなぁ」
「なに言ってるのよ、入院してたからってだらしないわよ」
「そうだけどさぁ」
隣には朝から、スルメに噛り付く水瀬さん。登校しながらスルメを嗜む女子高生なんてこの世にいるのか。しかも臭いし‥‥‥。
「なんで朝からスルメ?」
「かたい食べ物の方が良く噛んで食べるから、ダイエットになるのよ」
今日も平常運転でなによりだ。確かに噛む回数が多い方が満腹感が強くなるっていうし、確かにそうなのかもしれない。おっと、俺も水瀬さんに毒されてる気がする。
「月曜日の朝って絶望しか感じないよね。5日間もあるのかって感じで」
「ふ~ん、なるほどね」
「聞いてないでしょ、スルメに夢中で」
この人さっきからスルメを噛んでばっかりだ。もうちょっとヒロイン感を出してくれよ。偽だとしても彼女なんだから。
「スルメ食べながら登校するカップルなんて、全然カップルっぽくないけど大丈夫?」
「はぁ‥‥‥、そんな価値観に囚われてるから背後からのボールを避けられないのよ」
この人、金曜日の夜はあんなに泣きそうな顔をしてたくせに。まぁ、それが可愛いんだけどさ。強がりな人の弱くなってるところって良いよね。こう‥‥‥、グッとくるものがあるというか。
「それより、なにかいう事あるんじゃない?」
「ん?、俺はスルメ要らないよ?」
呆れたような表情をする水瀬さん。そんなにスルメが好きなのかこの人は。
「今日から6月よね?」
「うん、そうだよ。正確には昨日からだけどね」
「‥‥‥6月になっての学校は初めてよね?」
だから、何が言いたいんだこの人は。6月とスルメに因果関係が?、スルメの旬の季節とか?、分からん‥‥‥。
「ん~‥‥‥、あ、夏服?」
スルメのインパクトが強すぎて気が付かなかったけど、制服‥‥‥。そう、うちの高校では6月から夏服に移行するのだ。だけど、スルメ食べてる水瀬さんが悪い。
「遅いわよ。それでどうなの?、彼女の夏服は」
「非常にグットでございます。スルメ以外は」
夏服とスルメという異色のコラボレーションだ。
「あんまりスルメの悪口言ったら怒るわよ?」
‥‥‥結局スルメの方が大事じゃん。
◇◇◆◇◇
「おはよ、和彦」
「おっ、生きてたのか牧野」
「いや、RINEしただろうがお前には」
「ま、元気で戻れて良かったな、まじで」
和彦と話してるとクラスのみんなが集まってきた。
「おー大丈夫だったか?」
「牧野君、大丈夫だったの?」
「牧野ー、気をつけろよ」
流石に救急車で運ばれたら流石に心配されるよね。なんか気分が良いな、特別扱いされて。ボールをぶつけて来た奴も謝ってきた。わざとじゃないだろうし、別になんとも思っていない。でも、今日はジュースを奢ってもらうことになった。気持ちと慰謝料は別だから。別にがめつくないよね?、そうだよね?
「和彦、俺って倒れた時どんな感じだった?」
水瀬さんから一部始終は聞いたけど、水瀬さんは選択科目がバスケだったからその場にいた訳じゃない。だから目の前にいた和彦に聞くことにした。
「いや、俺はボール飛んできて、やばいって思ったけど間に合わんかったんだよ。恨まないでくれよ?」
「そんな事で恨まないって」
一瞬の出来事だったしそれは仕方ないだろう。
「まあ、でも俺もボールが当たるかもって思って咄嗟に牧野の陰に隠れたんだけどな」
前言撤回だ。
「お前一回立ち上がれたから大丈夫なのかなって思ったけど、自分の血を見た瞬間に倒れたから、もう救急車呼んだんだよ」
流石に倒れた原因が自分の血を見たショックだったなんて恥ずかしくて言えない。
「そうなのか」
「だから、今度は気をつけろよ?」
後ろから飛んで来たら気をつけるもなにもないだろうがよ。
「それよりよ、水瀬さんの夏服‥‥‥いいな」
「それ彼氏の前で言うか?」
「はぁ~‥‥‥、彼氏面だるいって」
「いや、彼氏だよ」
なんかこういうの事言うのも後ろメタさを感じなくなってしまった。慣れというものは恐ろしいな。俺も水瀬さんとこんな事になってなかったら和彦みたいな事思ってたんだろうけど。
「改めて思うけど、なんで牧野なんだよ。俺はこんなにバスケを頑張ってるのによ。女の子が体育館通りかかった時に、わざとシュート打ってるのにな」
「和彦の割にはちゃんと続いてるよな。すぐ辞めるって思ってたのに」
「な訳あるかよ。俺は我慢強さが売りだぞ?」
いや、秒でサッカー部やめてたじゃん。
「おーい、席付けよ~。ホームルームするぞー」
◇◇◆◇◇
「じゃ、早速だけどみんなにお知らせがあります」
朝からなんだこの人勿体ぶって。この人ついに仕事に疲れてボイコットか?
「なんとうちのクラスに転校生が来ます!」
あ、そういえばそうだった。最近テストがあってみんな転校生の事なんて話題に上がってなかったもんな。てか、水瀬さんの予感どおりうちのクラスだったじゃん。
「え、まじで?」
「水瀬さんも居るのに‥‥‥」
「シャー!」
みんなワクワクでテンション高いな。特に男子が。あんだけ噂になるくらい可愛いかったんだ。みんな期待してしまうのだろう。だけど本人からしたら可哀そうだよな。こういう状況って相当可愛くないと、なんか反応が微妙で可哀そうになる奴だ。
「なんと、もうそこで待ってもらってるので入って来てください、どうぞ!」
まじかよ。そんな転校生あるあるみたいな登場の仕方するのか。あれって漫画の世界だけじゃなかったのか。
「失礼します」
転校生が教室に入った途端、みんな一斉に静かになった。あれが、噂の転校生か‥‥‥。
‥‥‥まじで可愛いじゃん。
「え、めっちゃ可愛くね?」
「凄い可愛いー」
「水瀬さんとはまた違った‥‥‥」
みんなヒソヒソと話し出した。確かに水瀬さんとはタイプの違う美人だな。少しボーイッシュだけど、それがまた良い。スポーツでもしてるんだろうか。ショートってほんとに美人しか似合わないって言うし、こんだけ可愛いかったら噂になるのも分かるな。
「自己紹介をお願いします」
「はい‥‥‥。私は最近この町に引っ越してきました。小さい頃もここに住んでたんですけど、久しぶりに戻ってこれて嬉しいです」
へぇ~、ここに住んでたのか。それにしても可愛いな。水瀬さんのライバルには持って来いって感じの。
「名前は朝日奈 悠木って言います。よろしくです」
ん?、朝日奈悠木?、朝日奈‥‥‥ゆうきって‥‥‥。
「朝日奈さんは知り合いとかいるの?」
先生が転校生に質問すると、転校生が俺の方を指さしてきた。
「え~っと、そこの牧野圭太と幼馴染です」
何言ってるんだこの人は。俺の幼馴染の朝日奈ゆうきはもっとガキ大将みたい奴で、俺と喧嘩した時は容赦なくボコボコにしてきたような奴だぞ。
「小さい頃は良く二人で遊んでました」
「お、そうなのか。じゃあ、朝日奈は牧野の隣の席がいいだろ?」
「はいっ!、お願いします」
次第にクラスのみんながざわつき出した。
「牧野の幼馴染だってよ」
「あんな可愛い子がかよ」
「また牧野かよ?」
和彦の方を見ると、俺の事を物凄い形相で睨み付けてきていた。
俺もこんな幼馴染いた気はしないんだけど‥‥‥。ただの人違いってわけじゃないよな‥‥‥。もしかして、ゆうきって‥‥‥女の子だったって事?、そんなことありえる?
「ちっちゃい時はお風呂も一緒入ったよね?」
「え‥‥‥?」
俺は驚愕の事実に思わず思考が停止した。空いた口が塞がらないって言葉を人生において使う事があるんだなぁと感心した瞬間でした。
【まずは、この作品を読んで頂きありがとうございます!】
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「続きを読みたい!」
「この後どうなるのっ‥‥‥?」
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