26話 シスコンは弱点に入りますか
26話 シスコンは弱点に入りますか
「なんてこった‥‥‥」
そう、今日はテスト明けの月曜日。お待ちかねのテストの返却が行われていた。今日最初に帰ってきたのは数学だった。みなテスト結果に一喜一憂し、お互いにテストの結果を見せあっている。
「お前何点だった?」
「私ここの問題迷ったんだよね~」
「うわっ、後一点あればなぁ」
みんな思い思いに自分のテスト結果を共有している。‥‥‥まずい、こんな点数取るなんて‥‥‥。水瀬さんにあんなに教えたのになんでだ‥‥‥。
「牧野~、何点だった?」
「‥‥‥69」
「えっ、まじかよ。俺と3点しか変わらないじゃんか。さては勉強さぼったな?」
さぼったというか出来なかったというのが正しいんだけどな。結構解けた印象だったんだけどな。水瀬さんに勉強を教えるあまり、自分のテスト勉強が疎かになってしまった。それでも和彦と3点差はまずいぞ。
「牧野も勉強しないとやっぱり解けないんだなぁ。なんか安心したわ」
なんかうざいけど気にしないようにしよう。ところで、水瀬さんはどうだったんだ?、結構解けたとか言ってたけども。
水瀬さんの方を見ると、いつもの優等生モードで机に座っていた。いかにも百点ですけどなにか?、という雰囲気である。ほんとに外面だけは完璧だな。取り乱していないところを見ると、赤点は回避できたのだろう。
「やっぱ水瀬さんは百点なのか?」
「さぁ‥‥‥、そんくらいじゃね」
「なんだよその反応。自分の彼女なんだから誇らしいだろ」
「確かにな~‥‥‥」
ほんとに世間とのギャップに困るな、水瀬さんは。
◇◇◆◇◇
「今日帰ってきたテストどうだった?」
「なかなか好調よ。ほんとに全部牧野君のおかげだわ」
「へえ~、それはよかった」
今日はテストも終わったので、水瀬さんが前から行きたがっていた喫茶店に来ていた。俺はアイスカフェラテ一つ、水瀬さんはジャンボフルーツパフェにイチゴムースだ。もう見慣れた光景だ。
「それ美味しい?」
「ん?、美味しいわよ?」
「そう‥‥‥、それなら良かったよ」
確かに美味しいんだろうけど‥‥‥。水瀬さんの口の中は二つの味がぶつかり合って訳の分からない事になっていそうだ。絶対どっちかにした方が良かったと思うけど、口に入れば一緒なんだろうという事で気にしないようしている。
「ちなみに数学は何点だった?」
「そうだったわね、数学‥‥‥、63点だったわ」
「え‥‥‥、まじで?」
「そうね、私の中じゃありえない点数よ。だから、本当にありがとう」
嘘だろ‥‥‥、俺69だぞ。あの赤点確定演出だった水瀬さんと6点差‥‥‥。和彦の時より遥かにダメージがでかいぞ。水瀬さんには悪いけども。というか、水瀬さん成長しすぎだろ、俺教える才能あるじゃんか。
「そう、それは良かったね。ま、今度は自分でしっかり勉強してみてね」
「また今度も教えてくれるっていったじゃない」
そんな余裕はないという事が今回のテストで分かってしまった。水瀬さんには悪いけど、次のテストは自分のテストに集中さしてもらおう。
「いやー、次のテスト難しい気がしてさぁ‥‥‥」
「薄情なのね、勉強できないってバレたら私の事を慕ってくれてる麗奈ちゃんがきっと悲しんじゃうわね‥‥‥」
この人妹で俺を釣ろうとしてるな。俺はそんなに甘くは‥‥‥。
「あ~、麗奈ちゃん泣いちゃうでしょうね、更にそんな嘘付き女と付き合ってた牧野君も嫌われちゃうかも~」
自分で嘘付き女って言うのかよ。俺が麗奈の名前を出したら断れないって分かって言ってるなこの人‥‥‥。
「あ~、麗奈ちゃんに、科学のテストの結果送っちゃおうかな~、36点だったんだけどな‥‥‥」
「いや、本当に赤点ギリギリじゃん」
いや、数学で感心してたのに科学の方が危なかったんじゃん。それでも、とりあえず今日帰ってきた2教科は赤点を回避できてるのか。俺がいなくても案外どうにかなると思ったけど、他の教科が酷そうなのか‥‥‥。
「はぁ、分かったよ。また教えるよ」
「そう?、それなら良かったわ」
やるにしても、今度の期末テストは早めに勉強会を開いて行った方が良さそうだな。じゃないと、俺から勉強を取ったら、何も残らない。しがないシスコン高校生が残るだけだ。シスコンは嫌だ。いや、妹の事は大事なんだけど、シスコンって聞くとなんかきもいじゃん?
「じゃ、今度のテストはもっと早くから勉強始めようか。余裕を持って勉強した方がいいしさ。だから水瀬さんも頑張ろうね!、ビシバシ行くからね」
より一層自分の勉強と水瀬さんの教育に力を入れようと心に決めた、しがないシスコン高校生であった。




