23話 男子大学生のご飯みたいな料理といったらこれっしょ
23話 男子大学生のご飯みたいな料理といったらこれっしょ
「普通に美味しいだと‥‥‥」
「そんなに驚くこと?」
出てきた料理があまりに男らしくて警戒してしまっていたようだ。豚肉と玉ねぎ、もやしを焼き肉のタレで炒めたものだ。これぞ男飯って感じだ。でもこういうのが結局一番おいしい的な所はある。
「一人暮らしの男子大学生のご飯みたいだけど、ほんとに美味しいよ、これ」
「最初のがちょっと余計だけど、ありがと‥‥‥」
水瀬さんの見た目からこんな料理が出てくるなんてギャップが凄いな、もう慣れたけど‥‥‥。この豪快な味付け、ご飯に合うな。水瀬さんは早くもご飯をお代わりしてるし。
「やっぱり、杏葉の料理はこうでなくっちゃね~。お姉ちゃんもこういうの好きだよ、男子大学生みたいで」
「お姉ちゃんも余計だって!、‥‥‥って二人とも男子大学生への偏見が凄いわね」
でもこれ本当に美味しいな。普通にまた作って欲しいと思うレベルだ。というか最近、俺も味の濃ゆい物が好きになってきたな。水瀬病が進行しているようだ。
「それにしても、牧野君ババ抜き弱いね~」
「ってどう考えても明里さんの不正負けでしょ!」
「最初にイカサマについてのルールを決めなかった牧野君の負けだよ」
そう、ババ抜きで明里さんにしっかり負けてしまったのだ。それにしても、なんて人だ。ずる過ぎるだろこの人。あれを俺の負けと認めるのは不服です、とても。
「私を怒らせたのも、牧野君の敗因ね」
「いや、あれは口が滑ったんだって‥‥‥」
「あら、謝罪もないのね、牧野君は」
「ごめんてば‥‥‥」
「まぁいいわ。許しといてあげる」
この姉妹を相手取るのは俺には無理なようだ、強すぎる。
「そういえばお姉ちゃん、負けた方が何でもお願いを聞くみたいな言ってなかったっけ」
まずい、なあなあにしてこのまま無かった事にしようと思っていたというのに、何言ってくれてんだ。
「あーそれね~、どうしよっかな~」
ろくな事お願いされない事が目に見えている。どんな変なお願いしてくるんだ。
明里さんの事だから、一緒にお風呂に入ろうとか言ってくるんだろうか‥‥‥。しまった、俺としたことが自分の願望が入ってしまっていた。なんにせよ普通のお願いをしてくれることを願うしかない。
「ん~、一旦保留で!」
え、保留?
「牧野君になんでもお願いできる権利、取っておく事にするよ。ここぞという時に使ってあげるからね~?」
「それ、今使われるより怖いじゃないですか。どんなお願いされるか怯えながら生活するなんて」
「私もそんなに鬼じゃないよ~、ちゃんと牧野君の命一つで事足りるようなお願いにするから安心して?」
俺の命一つでってなんだよ。物騒すぎるだろ、臓器でも売らされるのかよ。
「私ってゲームとかで貴重なアイテムとか手に入れると、最後まで使わず仕舞いになる事多いからさ~、そんなに心配しないでいいよ」
それめっちゃ分かる~、ってそうじゃなかった。とにかくこのまま使わずに忘れてくれる事を祈るしかないな。
◇◇◆◇◇
「二日間ほんとにありがとう。これで赤点回避に近づいたわ」
「こちらこそ、手作りのご飯美味しかったよ」
「そんなに褒めないでよ‥‥‥」
もう照れちゃって可愛いな~。だけど、ほんとに美味しかったからまた作って欲しいな。美女のご飯は食べておくに越したことはないって言うしな。あ、いやっ、普通に味が美味しかったからだからね。特に深い意味はないから、そこは勘違いしないでほしい。
「じゃ、また明日、学校でね」
「あ、ちょっと待って‥‥‥」
ん?、どうしたんだろうか。
「えっと、その、私の家どうだった?」
「それ昨日も言ってたよね。感想は?、って」
「いえ、そんな深い意味はないんだけど、ただ聞いただけ‥‥‥」
なんでそんなに自分の家について聞いてくるんだ。水瀬さんの家‥‥‥。
「そういえば水瀬さんの家、見覚えがあったんだよね。小さい頃はここらへんでも遊んでたし。だからかな‥‥‥、なんか懐かしく感じた気がする」
「ほんと?」
食い気味に聞いてくる水瀬さん。いきなりどうしたんだ。
「ほんとだよ‥‥‥、ってあれ、そういえばここの先に公園あるよね」
「あるけど‥‥‥それがどうしたの?」
「いや、そういえばあったよなって思ってさ」
「そう‥‥‥なのね」
「水瀬さん?」
ほんとにどうしたのだろうか。またなんか悩みでもあるのか?
「いや、なんでもないわ。じゃあまた明日学校で会いましょう。明日の放課後も勉強教えてね?」
「全然いいよ、その代わり自分でも勉強してよ?」
「分かってるわよそのくらい‥‥‥。じゃ、おやすみ牧野君」
「うんじゃ、おやすみ」
まあ、最後は元気そうだったし問題ないか。それより本当に、赤点を取らないでくれよ水瀬さん。じゃないと、俺のこの土日が無駄になってしまうからな。よし、まだ日曜日は終わっていない、帰ってやりたかったゲームでもやるか。
◇◇◆◇◇
「お兄ちゃんお帰り~」
「ただいま~、麗奈寂しかっただろー」
「たまにはお兄ちゃんがいない日もいいなって感じかな」
ひどい、傷ついたぞお兄ちゃんは。そんな子に育てた覚えはないぞ!
「それよりお兄ちゃん、完全に女の人の匂いが染みついてるよ‥‥‥」
そうだったのか。自分では意外と気が付かないものなんだな。
「お兄ちゃんもしかして‥‥‥」
「ん?、どうした?」
麗奈が急に真剣な表情になった。そんな匂うのか?、他の女の匂いに嫉妬してるのか?、そうならそうと言ってくれよ、お兄ちゃん照れちゃうじゃんか。
「まさか‥‥‥ヤッちゃった?」
「なわけあるか!」
明里さんみたいな事を言い出してしまった‥‥‥。将来が心配だな‥‥‥。




