20話 二の腕は嘘だった
20話 二の腕は嘘だった
「ところでこれはどこに向かって歩いていってるのかな。というか、なんで待ち合わせがいつも学校の時の待ち合わせのコンビニなの?」
そういえば、どこで勉強をするかを聞いてなかったな。
「なんでって‥‥‥、今日は私の家で一緒に勉強するからよ」
「ええっ!、まじで?」
「そうよ、だから近所で待ち合わせにしたのよ?」
したのよ?、って聞いてないから。まだ心の準備がまだ出来てないんだけど。女の子の家に行くなんて初めての体験すぎて緊張しちゃうじゃん。それに、たまに忘れそうになるけど、一応学校一の美少女って呼ばれる人の家に行くなんて‥‥‥。
「本当にいいの?、男なんか上げて。親に怒られるんじゃない?」
「彼氏だからいいに決まってるじゃない」
「確かにそうだけど、そうだけども、違うじゃん」
「今日はお父さんは出張でいないから安心して頂戴。今はお姉ちゃんしかいないから」
一番安心できない人が家にいるんですけど、大丈夫そうですかね。
「私の今後の学校生活は牧野くんに掛かってるんだからね。頼むわよ?」
「最後は水瀬さん次第だから‥‥‥、まあできる限りの事はするよ」
「じゃあお願いね?、さっ、着いたわよ。ここが私の家よ」
いつのまにか着いていたようだ。
「ほんとにうちと近所だったんだね‥‥‥」
なんか見覚えがあるな‥‥‥、近所だし当たり前か。ここら辺には来る用事もないから、最近は通った記憶もないけど、小さい頃はゆうき達とここら辺でも遊んでたなぁ。懐かしい‥‥‥。
「感想は?」
「感想って、どういうことだよ‥‥‥。綺麗で大きい家ですね、とか?」
なんで俺は水瀬さんの家の感想を述べさせられてるんだ。そういうもんなのか。
「そう‥‥‥まあいいわ。さあ、上がって?」
いや、なんだったんだよ今のは。
「あ、お邪魔しますー」
なんか緊張するなぁ‥‥‥、いや人の家に初めて入る時ってなんか緊張するじゃん?、決して女の子の家だからという訳じゃないぞ。そこは大事だから先に言っておこう。
「あー!、いらっしゃい!、牧野君~」
「お久しぶりです、明里さん。今日はお邪魔します」
「どうぞー、いくらでもお邪魔しちゃっていいわよ?」
「じゃ、お言葉に甘えて」
「ところで、今日はお家デートかしら。私、邪魔じゃない?、なにか起きても知らない振りしとくから、気にしないでね?」
「いや‥‥‥、ただ一緒に勉強するだけですよ」
「あら、残念。だけど、我慢は体に毒だから、無理しちゃだめよ?」
ほんとにいい性格をしている。性格意外は完璧なのに、どうしてこうなんだろう。水瀬さんといい、明里さんといい、世の中に完璧な人間などいないという事を身を持って教えてくれている。
「お姉ちゃん、今日大学のサークルでお出掛けって言ってたでしょ。早く準備しないと」
「そうだったわねー。面倒くさいわねー」
「明里さん大学生だったんですか?」
「そうだよー。ピチピチの21歳よ」
結構、大人っぽいから、社会人なのかと思っていた。
「どうせ、私が行ったらサークルの男どもが私にばっかり構ってくるから、女友達にあんまり良く思われないし、めんどくさいのよねー、‥‥‥はぁ」
大変そうだけど‥‥‥、しれっと自慢が入っているあたりが流石姉妹って感じだ。
「じゃ、牧野くんは私の部屋に行きましょ。こっちよ」
「あ、ずるい~。私も混ぜてよー」
「早くお姉ちゃんは準備して出かけた方がいいんじゃない?」
「杏葉冷たーい‥‥‥。牧野くん、今度は私とも遊んでね?」
すごい、あんなナチュラルにウインクしてくるなんて、これが顔ゲーってやつなのか。水瀬さんはあんまり得意じゃなさそうだ。偏見だけど。
◇◇◆◇◇
「お姉ちゃんといつの間にあんなに仲良くなったのよ」
「RINEでちょこちょこ話してただけだよ。それより早く勉強しようよ」
「そっけないわね」
「そんなことないって。それより早く勉強を‥‥‥」
「ま、いいわ。‥‥‥私変わるわ今日で」
今日だけじゃそんなに変わらないと思うから落ち着こうか水瀬さん。‥‥‥ちなみに俺は全然落ち着けていない。めちゃくちゃソワソワしてる。女の子の部屋なんて初めてだし‥‥‥。平然を装っているけど、かなり緊張しています。
「というか、お姉ちゃんには勉強教えてもらえないの?」
「ああ見えてお姉ちゃん忙しいから、あんまりお願いできないの。あと、家族でも、勉強ができないとは言いずらいものよ」
申し訳ないけど、忙しそうには見えないです。
「じゃ、とりあえずここからやろうか‥‥‥」
◇◇◆◇◇
「一旦休憩しようか、ここで。」
「まだまだ行けるわよ私は」
とは言っているものの、水瀬さんの集中力が欠けてきている。やる気はあるんだろうけど、やはり難しいものがあるな。それに‥‥‥、
「さっき食べたお昼ご飯でお腹いっぱいできついわ、正直‥‥‥」
「だろうね‥‥‥、あんな食べたらきついに決まってるじゃん」
「特に、油そばが効いてるわ‥‥‥うぅ」
油混ぜそば大盛みたいなカップ麺を3個も食べていた。もちろんマヨネーズも大量にかけていた。油で胸やけでもしているんだろう。
「いつもこの時間はお昼ご飯を食べてから、爆睡してるくらいの時間なのよ」
もうそれは牛じゃん。毎度思うけど、どうやってその体系を維持しているのだろうか。代謝がいいのか、燃費が悪いのか、人間じゃないのか。謎は深まるばかりだ。
「ご飯食べてからの昼寝って早死にするらしいよ」
「私はそんな噂ごときに惑わされないわよ。ご飯食べた後のお昼寝が一番気持ちいいのよ?、あなた人生損してるわよ」
何言ってんだこの人は。というか、このままじゃ結構まずいぞ。全然進んでいない。可哀そうだけど進めてもらうしかない。働かない牛にはムチを打たなければ。
「そんなこと言ってないで、勉強するよ。このままじゃ張り出されるよ、それでもいいの?」
「分かってるわよ‥‥‥、そんなこと」
「じゃあ、やろうか。今すぐやろう。明日やろうは馬鹿野郎っていうし」
「そこまで言うなら、私の本気を見せてやるわ。見てなさいよ?」
◇◇◆◇◇
あれから数時間、私の本気とやらで、少しづつ試験範囲を進めているが、このままじゃやっぱりまずい。思ったより酷いな。理解するのに時間が掛かりすぎるせいで、なかなか前に進めない。
「このままで私大丈夫そう?」
「大丈夫‥‥‥と思う。うん多分ね」
「それ大丈夫じゃない時の大丈夫でしょ!?」
「まあまだ時間はあるからさ、‥‥‥これからだよ」
なんと言っても数学が酷い。解き方を一切分かっていない。さっきから全部ゼロから教えているぞ。本当に義務教育を受けてきたのかってレベルだ。
「もし、良かったら明日も教えてくれない?」
せっかくの休みだが致し方ない。ここまで来たら最後まで教えてあげた方がいいだろう。平日の放課後だけじゃ間に合いそうにないからな。
「いいよ、降りかかった火の粉だしね」
「なんか私がバカにされている気がするのだけど、‥‥‥ありがとう、牧野君」
そんな感じで素直にしてれば可愛いのに、ほんとに勿体ない。天は二物を与えないとはこの事か。
「じゃあ、泊っていけばいいじゃん!」
すると、突然部屋に明里さんが入ってきた。
「お姉ちゃん、いつのまに‥‥‥、というか、何時から話聞いてたのよ」
「10分前くらいかな?、さっき帰ってきて、まだいるんだ~って思って変な空気になってないか盗み聞きしてたのよ」
しれっとエグイ事を言っている。
「どうせ、勉強会明日もするなら泊っていきなよ。お父さんもいないしさ。杏葉もそれでいいでしょ?」
「牧野くんが良いなら、私は構わないけど‥‥‥」
「いや、いきなり泊るのは申しわ‥‥‥」
「何言ってんのさ!、据え膳食わぬは男の恥っていうでしょ?」
「いや、それ使い方間違ってますよ」
「そんな細かい事言ってないでさ、泊っていきなって」
くそっ、強い。俺の意見が全部遮られる。どうしたもんか‥‥‥
「泊って行って?、牧野くん‥‥‥」
上目遣いで問いかけてくる水瀬さん。なんて破壊力だ。だが俺はこの程度では落ちんぞ。
「さぁ、お姉ちゃんと熱い一夜を過ごそうじゃない!」
そう言って腕を組んでくる明里さん。あまり言及していなかったけど、なかなか大きい物をお持ちのようだ。‥‥‥それが俺の腕に当たっている。やばい、なんだこの感触は。中学の時、二の腕と同じ触り心地と聞いて、自分の二の腕を触ってみたけど、本物は全然違うじゃないかー!
「‥‥‥はい、泊らせていただきます」
俺は心の中の叫びに大人しく従った。
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「この後どうなるのっ‥‥‥?」
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