15話 間食理論
15話 間食理論
「あぁ、だるいなぁ」
「お兄ちゃんどうしたの朝から」
「もうゴールデンウイーク終わったのかぁって思って」
「ゴールデンウイークなんて一瞬だよ。私は久しぶりに学校行けるから嬉しいけどね」
妹の社畜ぶりが凄まじいな。学校に行けて嬉しいっていう気持ちになれるなんて、どれだけ楽しいんだこいつの学校生活は。いい事だけども、つくずく俺の妹とは思えない。この前分かった男の趣味はどうにかしたいけど。
「生徒会とか大変だろ?」
「生徒会のみんな仲がいいし、楽しいよ。やりがいもあるし」
もはや、やりがいとか言う概念にたどり着いているらしい。兄として誇らしいな、男の趣味以外は。
「そうかぁ、すごいなぁ‥‥‥」
「そんなこと言って、最近のお兄ちゃん学校楽しそうだよ?」
「な、そんなことはないぞ」
「だってあんな美人さんな彼女さんがいるもんね。日曜日帰って来た時だって、顔がにやにやしてたよ」
「いや、そんなことないって。見間違いだろ」
帰りの電車であんな状態で30分いたんだ。もしかしたら無意識に、にやついていたのかもしれない。まるで変態じゃないか。俺はなにもしてないぞ。
「変なことして嫌われないようにね」
「どちらかというと、あっちの方が変だけどな」
「何言ってるのお兄ちゃん、杏葉さん優等生なんだから、お兄ちゃんも頑張らないと」
麗奈は裏の顔を知らないから言えるんだ。あのとてつもない食欲を。この前フードコートの時はいつもより食べるのを抑えていたしな。無理もない。
「ま、頑張るよ。‥‥‥麗奈もモテるから、変な男には気をつけろよ?」
「急にどうしたの?」
「いやなんでもないよ」
「てか、お兄ちゃんソースかけすぎじゃない?」
おっと、無意識に目玉焼きにいつもの3倍くらいのソースをかけていた。あのチーズポテトのせいで味覚が狂ったのかもしれない。
「なんか、このくらいかけないと味が薄く感じてな」
「大丈夫?病気じゃない?」
恐るべし、水瀬病。
◇◇◆◇◇
とは言ったものの、やっぱり休み明けの学校は憂鬱だ。学校吹き飛んだりしないかな、いや学校ごと異世界転移したりしてくれないかな。俺は異世界転移なんてしたくないから、俺のいない時に転移してほしいけど。
「あら、おはよう。くだらないことを事を考えていそうな顔をしている牧野君」
「おはよう水瀬さん。朝から辛辣だね」
「照れ隠しよ‥‥‥、その‥‥‥日曜日は帰りの電車で寝てしまっていたから」
なるほど、斬新な照れ隠しだ。
「で、そのゼリーが朝ご飯?」
「違うわ、間食よ」
チューチューゼリーを吸う水瀬さん。朝ご飯食べてからほぼ時間経ってないでしょ。どこのボディービルダーだよ。
「別に登校中に食べなくてもいいでしょ」
「なに言ってるの、いつでも食べたいときに食べないとストレスがかかるでしょ?、そうしたら逆にストレスで太るのよ?」
謎理論を展開している。今日も平常運転でなによりだ。
「そういえば、転校生が来るらしいわね」
「あぁ、俺も和彦から聞いたよ」
「とても可愛いらしいわよ‥‥‥」
なんだ、ライバル意識してるのか?まだ転校すらしてきていない奴に。
「私の学校一可愛いっていう肩書が崩れないか心配してるのよ。しかも同じ学年らしいし、これは由々しき事態なのよ。何のためにみんなの前で猫を被っていると思ってるのよ」
ついに自分で言ったか。でも逆にそのくらいの方が清々しくていいな。
「というか、いつからくるんだろうね。その噂の転校生は」
「私が聞いた話だとゴールデンウイーク明けらしいわよ」
「じゃあ、今日からかな?」
「まぁ、私からしたら来なくていいんだけど」
「ライバル意識がすごいね‥‥‥。バチバチじゃん」
「当たり前でしょ?、うちのクラスに来ようものならどうなるか‥‥‥」
そう言いつつゼリーを強く握りしめている。来るもんならどうするんだよ‥‥‥。水瀬さんより可愛い人なんてなかなかいないだろうに。
◇◇◆◇◇
登校してみると、みんな転校生の話題で持ちきりだった。別にうちのクラスに来るってわけじゃないのに。そういえば、ゆうきは何時こっちに戻ってくるんだろう‥‥‥。
「朝練疲れたわ~」
バスケ部の朝練から帰ってきた和彦が、クラスメイトに朝練頑張ってきましたアピールをやっていた。しっかり女子達に聞こえる声で。後からいじってやろう。
「おう、久しぶり牧野。‥‥‥生きてたのかよ」
「ゴールデンウイークの間で死んだことにするなよ」
和彦がこっちに来た。汗はかいてるからちゃんと朝練はしたんだろう。いじるのは勘弁してやるか。
「和彦、まだバスケ続けてたんだな。てっきり、俺には手を使う競技は向いてなかったよ、とか言い出すかなって思ってたから」
「これでもこの前の練習試合で初得点を決めたんだぜ?」
和彦があの感じでちゃんと続いていたなんて。人間なにがあるか分からないもんだ。
「サッカー部は俺を逃がした事を後悔するかもな」
「それはないから安心しろ」
「というかお前‥‥‥、ゴールデンウイークで俺が必死に練習してるときに、まさか水瀬さんとデートしてたとか言わないよな?」
なんで知ってるんだこいつ‥‥‥。あっ、そっか‥‥‥。
「なんだこの写真は!?」
水瀬さんがウィンスタに上げていた俺とのツーショットを見せてきた。そういや、学校のみんなも観るよね。フォロワーが多すぎてそこを忘れていた。
「俺らの事をバカにしてるのか!?、みんな言ってたぞ、牧野だけは許さんって」
もう付き合ってることがバレて落ち着いたころ合いだったのに、やってくれたな。
「男子はみんなお前の敵だぞ」
「そうだ、そうだ!」
「ふざけるなよ!」
「水瀬さんは渡さんぞ!」
「俺も付き合いたいわ!」
和彦に続いて、クラスの男子がみんな一斉に言ってきた。一人願望が混ざったやつがいるな。みんなごめんだけど、ほんとに付き合ってる訳じゃないから許してくれ。水瀬さんの方を見ると、あっちも女子に囲まれていた。
「まぁ、転校生も美人だっていうし、落ち着こう、みんな」
「お前がいうな!」
「お前は水瀬さんがいるだろ!」
「俺にも分けろ!」
「てか、転校生っていつくるんだ?」
「え、今日じゃないの?」
「まだ噂だろ?」
上手くみんなの話題を逸らす事に成功した。相変わらず願望の混ざったやつがいたけど。俺は転校生より、幼馴染のゆうきが何時この町に戻ってくるかの方が気になる。またあいつと昔みたいに遊びたいな。
◇◇◆◇◇
「はーい、おまえら席につけー。ホームルーム始めるぞー」
朝から眠たくなるような連絡事項を話す担任。みんな眠たそうに話を聞いている。さっきまであんなに元気良かっただろ‥‥‥。
「ゴールデンウイークはもう終わったから、気を引き締めていこうな!」
この人の休みも終わったって事なのに元気すぎるだろ。これが社会人ってやつなのか。一生ならなくていいな。
「じゃ、最後にみんなにお知らせがあります!」
すると、みんな顔を上げ、期待の眼差しを向けている。
「‥‥‥なんと、なんと‥‥‥」
お、なんだこの勿体ぶりは。先生も生徒が噂してることくらい知ってるはずだ。だから勿体ぶってるのか。
「‥‥‥中間テストがあります!、っていうだけだ」
ふざけてるなこの人。
「えーなにそれー」
「先生も知ってるんでしょー」
「てか、中間テストあんのかよ~」
みんな反応がいいな。先生もやってやったって顔をしている。
「みんなが何を期待してるか知らんが、‥‥‥中間テスト明けくらいじゃないか?」
やっぱり、分かって言ってるなこの人。
「まぁ、中間テストに向けて頑張れよ~」
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