第八話
砂雪がとったその行動――
ガラガラッ
教室のドアが開く。
「おはよっ」
挨拶をした時、砂雪はニコッと笑ったのだ。
今まであれほど男らしくしてきたので、可愛らしく微笑むだけで皆ビックリした。
砂雪は思ったのだ。
皆に女らしく振る舞えば、いじめも減るのではないかと――
砂雪は微笑んだまま水原の隣についた。
「おはよう。てか何?今さら女らしくなろうってか?」
「ま、まぁね。つか今さらって何よっっ!!文句でもあんの!?」
「いやないけど、何でスリッパなの?」
「あー、汚いから持って帰ったら忘れたァ」
嘘をついた。
言いつけて弱いと思われたくなかったのだ。
上履きを隠した人は呆然としていた。
「そうか…。あー…、女らしくなるなら普通の優しい女になれよっ」
そう言って、雪野と話し始めた。
砂雪は、
「意味わかんないっ」
と言って本を読み始めた。
しばらくすると雪野がトイレに行った。
「なぁ、お前ってあんなに男らしくしてたの、両親何も言わなかったの?」
『両親』と言う一言、とてもショックだった…。
砂雪には両親がいなかったからだ――
「両親…。いない……。小さい頃、物心がついた頃に事故で亡くなった。」
「えぇ!?ゴメン。でも、今までどうしてたの?」
「小2くらいまで、おばさまの所にいたの。でもおばさま礼儀やら作法やらに厳しくて…。
身内なのに、何でもかんでも敬語だし。嫌になって1人で暮らすようにしたの。」
「そっか…。」
その時、
「西宮ァ!!」
走って来たのだろうか、息を切らしている。
「コレ、お前のだよな…。ハァハァ。」
雪野の手にはびしょぬれの、汚い上履きがあった。
かかとの部分には 『西宮』と書いてある。
「トイレ前の、ハァ、掃除用具の所の、ハァ、バケツに入ってた…。」
静まる教室。
「――…誰だ。」
一番最初に口を開いたのは水原だった。