お引越し
挿し絵を追加しました。2023/11/23
パンパカパーーン!
パンパカパーーン!‥‥‥
「うるさいなぁ」
どうやらスマートウォッチが鳴っている。
後で音の変え方教えて貰おう…
「レベルアップ!
経験値が一定数を、上回りました
木之元優の本人レベルが10になりました」
「私のレベルが上がった?」
そうだ!転生でリセットされたって、みかんが言っていたなぁ。
MAXで各レベルが100なんだよね。
ん?10時!?
「うるさいわねぇ、今日出発するんじゃなかったの?」
「かあさんごめん!昼には出発する!」
「そういえばさっき、私って言ってなかった?」
‥‥聞かれた!
次からは独り言も気をつけよう男の子になりきらなくちゃ!
「寝ぼけてただけだよ」
「そう?」
そうだ!みかんに連絡しないと。
…あれ?電話に出ない。
メッセージは既読になっている。寝てるのかな?
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
優は急いで服を着替え、出発しようとする。
「母さん、父さん。行ってきます!」
「待ちなさい」
「母さんどうしたの?」
「取り敢えずお小遣い1万円、持って行きなさい
仕送りは改めて今週中にスマートウォッチに届けるから」
「ありがとう!
仕送りはうれしいけど無理しないでね」
「父さんのお小遣いよりは少し多めに送っておくわ」
「母さん!やっぱり小遣いなし?」
「当たり前でしょ?」
「優、父さん自慢の冒険者になってくれ」
「がんばるよ」
「父さん、今日は私達もスマートウォッチを買いに行きましょう」
「母さん‥」
「父さん、母さん、身体に気をつけて〜!
いってきます」
「いつでも帰って来なさいよ」
「応援してるからな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
バタンッ
少し名残惜しいが家を出た。
プップーーー!!
あれ?家の前に車がある?
…よく見たら、中にみかんが乗っている!?
「遅い!」
「なんでここに?」
「アハハ!取り敢えず乗って~」
言われるがまま助手席に乗った。
「実は、コンビニ辞めてきたんだぁ~」
「え?」
「や、め、て、き、た!」
「聞こえてるよ」
「どうせギルドの近くに住むんでしょ?」
「なんでわかるの?」
「ここからじゃ冒険者は難しいよ~
それに、ご両親の性格も…ね?」
見抜かれている。
「でー 私もついて行く♪」
「は?」
「私も一緒に住む事にしたから。アハハ!」
状況がのみこめないまま、みかんは車を出発させてしまった。
「私コンビニで働きたい訳じゃないし~、丁度いい機会かなって」
「全然わからない
100歩譲ってみかんが市内に来てくれるのは、俺も心強い
でも一緒に住むって、男の子なんだけど!」
「えっちな事でも考えてるの?」
「いや、そうじゃなくて‥ってえっちな事!?」
「大丈夫 私の身体は、子供が出来たりしないから~アハハ!」
「えっちな事を考えてるのはみかんだろ?
俺心は女なんだけど…」
「勝手に決めて悪いと思ってる~♪
そう言えば今日は私と話す時も、自分の事を俺って言うんだね」
「あぁ、朝母親に独り言を聞かれて危ないと思ったんだ
口調だけでも、男口調で慣れておかないと
冒険者になっても、不信に思われるだろ?」
「さすが優! もうそこまで考えてるんだねぇ」
「まぁね?転生者って言うのも隠したほうが良さそうだし」
「そうだね! 秘密にしよう」
何だかんだ一緒に住むって事で誤魔化されてしまったような気がする。
「私ね、昨日決めたの!」
「何を?」
「私は、これから何年でも優をサポートする!
脳内ネットワークをフル活用してね」
「なんで?」
「優が命懸けで冒険者になるんだもん、私も人生懸ける」
「人生懸けるって大袈裟だよ」
「アハハ!私は冒険者にはなれないから」
「魔法が使えないから…?」
「そう。あくまで、私はサポート役」
「気持ちは有難いけど…」
優の言葉を遮ってみかんが喋る。
「大丈夫!貯金もあるし、家事も出来る!」
明るく振る舞うみかんに、何も言い返せなくなった。
「わかった、一緒に住もう。ただし、それ以上の無理はしない事」
「はぁい♪
今日の所は、いくつか物件をピックアップしておいたよ」
「!?」
「生活費は私が払う」
「そこまで甘える訳にはいかないよ!」
「気が引けるなら、優が冒険者として稼いだお金でご飯を奢ってよ!」
「ありがとう
いつか養えるくらい稼げるように頑張るよ」
「アハハ!その勢いで頑張って~♪」
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複雑な気分なまま、その日は物件の下見に沢山連れて行かれた。
みかんはどうやら、気に入った家を見つけたらしい。
ギルドから徒歩5分の、賃貸マンションで今日から入居できる事になったが…
嫌な予感しかしない。
優はついていっただけで、決定権はなかった。
場所も、明らかに縁遠い場所に居る。
今まさに家具は、目の前で搬入中だ。
みかんが脳内ネット通販で、全て購入してしまった。
優は好みを聞かれただけ。
取り敢えず、シンプルな物をお願いした。
みかんと部屋は別々らしい。
各部屋に鍵があるらしく、そこは色んな意味で安心だ。
「ありがとうございました!
またのご利用をお待ちしております」
荷物の搬入がおわった様だ。
「ふぅ。終わったー!」
「全部任せちゃってごめんな?」
「大丈夫!
脳内ネットワークで元々住んでた所の家具も大体売れたし、新規一転!
そんな事より、早く家の中を見て!」