遂にギルドへ
「ついたよ~!」
みかんが笑顔で指を指している。
「まさか、ここがギルド?」
見た目は明らかにカフェである。
アニメで見るギルドとは明らかにイメージが違う。
「トゥデイズオーダー?」
中から声が響いているが、おそるおそる扉を開けてみた。
ガチャッ
「うわーーーーーーーーーーーーー!!!」
「落ち着いて、全部ホログラムだから」
「本当だ」
「いらっしゃいませ
ギルド和歌山へようこそ。ご依頼でしょうか?」
どうやら受付の人もホログラムである。
「依頼ではありません
冒険者になりたくて来たんですが、登録をお願いします」
「冒険者登録は、現在こちらでは受け付けておりません」
「嘘でしょ?そんなギルドがあるの?」
みかんも初耳といった表情だ。
「はい。他の支店では現在も、随時冒険者登録を受け付けておりますが、
和歌山支店には特別な事情がございまして、
依頼も私が他の支店へ発注している状況でございます」
「そんなぁ、引っ越して家まで借りたのにぃ~」
「申し遅れました
私全国の冒険者ギルド専門のAIでございます
冒険者ギルドのAIなので、お気軽に『ギル』とお呼びください」
「わかりました」
「見ての通り、アンドロイドの身体もなく
全てのギルドと随時情報共有をしております」
「普通ギルドの受付用のアンドロイドや人がいるよね?」
みかんが疑問をなげかける。
「現在和歌山は予算不足なので、アンドロイドも人もいません」
「じゃぁ、冒険者は?」
「和歌山の冒険者は、現在全国各地に散らばって活動をしています」
「もしかして、受付専用の人が居ないから?」
「お恥ずかしながらお察しの通りです
新たにアンドロイドを作るにも、予算がかかりすぎますし
せめて時給で人を雇う事が出来れば、ギリギリの予算内で再開できるのですが、
今時アルバイトなんて求人を出しても、正社員の求人で溢れかえってますから」
「じゃあ、ギルさん。私を雇って貰えませんか?」
「予算がないので待遇は現在最低ラインですが、
よろしいのですか?」
「はい。お金なら沢山ありますので♪」
「失礼ですが見たところ人間でありながら、
大部分がアンドロイドの身体のようですね?」
「アハハ!そこまでわかるんだ~
事故でこんな身体になっちゃいました」
「私は羨ましいです
すばらしい身体をお持ちですから」
優はさりげない疑問を口にしてしまう。
「待て。さっきから会話を聞いてると
ギルにも感情があるように聞こえるぞ?」
みかんは慌てて会話に割り込む。
「優!失礼だよ?
今時、高度なAIには感情があって当たり前だよ?」
「構いませんよ
引っ越してきたばかりなのでしょう?
田舎のほうには私のようなAIが存在しない所もありますから」
「アハハ!田舎から来たのバレちゃったね~」
「すみません」
「そんな事より
今日は、みかんさんのような方が働きにきて下さる事
これは大変良い収穫です!!」
ギルは興奮気味に話しを続ける。
「脳内ネットワークでいつでも最新情報の閲覧が可能
その力を和歌山支店で発揮して頂けるとは…
他の支店からも羨ましがられる事間違いないでしょう!」
「ギル。これで優の冒険者登録はできる?」
「はい!今すぐ登録しましょう」
「それでは、優さん みかんさん
こちらにスマートウォッチをかざして下さい」
ピコンッ
「契約内容に同意致しますか?」
まぁ、命の危険以外は大した内容ではないだろう。
「はい。同意します」
「名前、魔法属性、レベル等
冒険者に必要な情報が登録されました。
秘密保持特約に基づき、レベル・魔法属性のみ
非公開情報として扱われます」
「アハハ!次は私~」
「みかんさんには、就労条件を脳内に送信致しました」
「仕事が早いね、署名したものを返信しておいたよ!」
ピコンッ
「和歌山支店の従業員として情報を登録致しました
名前以外は全て非公開情報として扱われます」
みかんの時とどこか違和感があるが、今聞ける空気ではない。
「優!これで冒険者デビューだね♪」
「みかんのお陰だよ。ありがとう」
「魔法属性とレベルは、仕事の有無に関わるから
自分で公表する人が多いんだよ~♪」
「みかんは冒険者に詳しいんだね!」
「冒険者TVによく出てるからね♪」
「冒険者TV!?」
「他にも自分でHPを作ってる冒険者も少なくないよ」
さっき感じた違和感の正体が少しだけ理解できた気がした。