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捕らえられた婚約者

作者: 五珠

思い込みの激しい二人のお話しです。

軽い感じで読んでいただけたらうれしいです。

「どうしたのかな? シャーロット、このお菓子はおいしくなかった?」


 私の婚約者はとても優しい。


「いえ、とても美味しいです」

「そう、よかった。もっと食べて?」


 そう言って、彼は私の手元に目を向けた。


 婚約者である私の事を考えて、月に一度昼間に行われている二人だけのお茶会。

 私の目の前にあるお皿の上には、今日彼が持参してくれた有名菓子店の新作ケーキが半分以上残っている。


「どうしたの? シャーロット。今日はあまり食べないね」


 彼は心配そうに声を落とした。


「お会いできたからか、なんだかお腹がいっぱいで……。残りは後でいただきます。いつも美味しいお菓子を持ってきていただいて、ありがとうございます」


 私の言葉を聞いた彼は満足げに笑う。

 その笑みには大人の余裕を感じた。

 けれどそれは当然の事。まだ十三歳の私にとって、二十二歳の彼は大人だから。

 目の前に座る彼はアドルフ・サーチス侯爵様。艶やかな黒髪と深海を思わせる深い青の瞳を持つ、端正な顔の美しい男性。


 そして私は、シャーロット・ビギンズ。


 彼が仕方なく婚約をした子爵令嬢だ。


◇◇◇


 私が彼の婚約者となったのは、十一歳の時。


 サーチス侯爵嫡男であられるアドルフ様から婚約の申し入れがあったのだ。


 私はとても驚いた。なぜなら私は彼に会った事はなかったから。

 それにまだ、社交界に出る事も出来ない年齢。見初められたわけではないだろう。

 どうして私に婚約を申し入れられるのか? 疑問に思っていると、父は自身がサーチス侯爵当主と学友であったのだと話してくれた。

 その縁で、この度の婚約は決まったのだとも……。


 当時、私は未だ恋も知らない少女で、婚約を親が決める事は貴族では当たり前だった為それ以上はあまり深く考える事なく受け入れた。


 婚約を受け入れた私が、アドルフ様とお会いしたのはそれから間もなくの事だった。

 私はこれまで会った事のない美しい大人の男性に一瞬で恋に落ちてしまった。

 だから、気づく事ができなかった。

 優しく笑いかけてくれる彼が、親に決められ仕方なく婚約をしたと言う事に……。


◇◇◇


 アドルフ様の婚約者となり一年が過ぎた頃。


 ある女性から手紙が届いた。

 香水の香りがする美しい便箋で届けられたその手紙の差出人は、リーリエ・コスタン伯爵令嬢。


 ――彼女は、アドルフ様の恋人だった。

【アドルフ様は私の恋人。あなたと彼の婚約は、親に決められ仕方なかった】

 最初にもらった手紙にハッキリとそう書かれていた。


 ――愕然とした。

 恋人がいながら親の言いなりに婚約をされるような方だったのかと。

 婚約してから一年も経っているのに、今もまだ恋人との関係を続けているのだと思い悲しかった。


 私が子供だから……?

 

 翌月、リーリエ様から届けられた二通目の手紙には、二人で夜会に行った時のことや彼が普段どんな風に接してくれるのか、どれだけ二人が想いあっているのかが書かれていた。

 当時私はまだ十二歳。社交界に出てはいない。まだ出る事を許されていない。

 婚約者である私が行く事の出来ない所で、彼は恋人と逢瀬を重ねているというのだ。

 私とは一度も踊った事のないダンスを、恋人であるリーリエ様とは何度も踊られているという。

 子供であっても、私は彼の婚約者。アドルフ様は私の恋する人。

 リーリエ様からの手紙は苦痛でしかなかった。


 手紙が届いたその後も、アドルフ様はいつもと変わらなかった。


 リーリエ様という恋人がいる事を微塵も感じさせることなく、私にいつものように優しく微笑みかける。

 私も、リーリエ様から手紙が来ている事をアドルフ様には伝えていない。

 もしも、私が恋人の存在を知っていると分かったら、それなら話が早いと婚約を解消されるかもしれないと思ったからだ。


 ――私は彼が好き。


 彼に恋人がいると知っていても……彼に別れを告げられるその日までは、まだ婚約者でいたい。


◇◇


 婚約者となり五年が過ぎた。

 今、私は十五歳。来月には誕生日を迎え、ようやく十六歳になる。

 これでやっと社交界へ出る事が許される。


 社交界へは十四歳で出る事を許されるが、私はまだだった。

 両親とアドルフ様に、十六歳になるまではと止められていたからだ。

 両親は幼く見える私を心配しての事だろう。

 アドルフ様は……。


 私を心配して言われたのだろうか。それとも私が社交界に出てしまえば、今もまだ恋人であるリーリエ様と会えなくなるからなのか。


 婚約してから行われている月に一度のお茶会は、何一つ変わらず続いている。


 そして、リーリエ様からの手紙も届いている。

 そこに書かれている内容は毎月、写したかのように同じだったが、二か月前から変化が現れた。

 そこには、アドルフ様が私との婚約を破棄したいと言っていると書いてあったのだ。


◇◇◇


「シャーロットは今どんな本に興味があるのかな?」

「星にまつわる物語の本を読んでいます」

「星? そう、私もいくつか知っているよ。確か、年に一度しか会う事を許されない恋人の星があったよね?」

「はい」


『会う事を許されない恋人』という言葉に動揺してしまった私は、話を変えようと目の前のカップを手に取りお茶を一口飲んだ。

 アドルフ様も同じようにお茶を飲まれると、気づかれたのか話を変えてくれた。


「好きな色はまだ変わっていない?」

「はい」


 色を尋ねられた私は、アドルフ様の瞳を見つめる。

 アドルフ様はそんな私を見て、いつものように優しく穏やかに微笑んでいる。

 二人だけのお茶会でアドルフ様とする会話の内容は、本の話、美味しいお菓子のこと、私の好きな色、物など。

 はじめの頃から変わらない、ずっと何年も同じ内容だ。


 けれど私はもう十五歳。背も伸びたし体も女性らしくなった。彼に会う時には少しだけお化粧をするようにもなったのに。


 ――アドルフ様にとって、私はいつまでも子供のままなのだろう。


「私の好きな色は青です」

「そう、私も好きな色だ」


 好きな色を尋ねられ、それが青色だと告げたのは婚約してすぐの頃。


『好きな色』それはずっと変わらない。変わる事はない。


 なぜなら私の言う青色は、アドルフ様の瞳の色だから。

 けれどそれを言ったことはない、聞かれたことも無い。

 私の瞳の色も青だから、彼はそれで好きなのだと思っている。


◇◇◇


 今月もまたリーリエ様から手紙が届いた。

 

 お父様もお母様も気にしなくていいと言ってくれるが、相手は伯爵令嬢。

 無下には出来ない。



 届いた手紙にはこう書かれてある。


【先月開かれた夜会で、アドルフ様と私は常に一緒にいた。ダンスを何度も踊った】


(婚約者でなければ、同じ人と何度もダンスを踊ることはないのだと聞いている)


【二人で庭に出て星を眺めた。帰りは馬車で送ってもらった】


(私はまだ彼と出掛けた事もない)


【あなたとの婚約を早く破棄したいと言っている。私を愛しているとアドルフ様は言う】


「……はぁ……私にどうしろというの?」


 リーリエ様からの手紙には書かれているけれど、私は一度もアドルフ様から婚約を破棄したいとは言われていない。冷たい態度をとられた事もない。

 けれど……。


「愛している……ね。私は好きとすら言ってもらった事もないのに」


 アドルフ様にとって、私はいつまでも子供のまま。

 ……子供だから、婚約を解消したいと言いにくいのだろうか?


 来月で私は十六歳になる。

 成人と認められる年齢となる。もしかしたら、その時に……。


◇◇◇


「シャーロット、手紙が届いているわ。また、リーリエ様からよ」

「はい」


 お母様から手渡されるリーリエ様からの手紙はいつもと変わらない。

 私はきちんと封のされた手紙を見つめながら、ずっと気になっていた事を尋ねた。


「お母様……」

「なあに? シャーロット、どうかして?」

「どうしてリーリエ様からの手紙は一度封が開けられているの?」


 初めてリーリエ様からの手紙を受け取ったとき、なんだかおかしいと感じた。

 その違和感は間違いではなく、二通、三通と手紙が増えるたびに確信へと変わった。

 リーリエ様からの手紙は、全て一度開かれ、また分からないように封をされているのだ。

 お母様は私が子供だから気付いていないと思っていたのだろうか。


「何を言っているの? 人の手紙を開けるなど、誰がそんな事をするというのです」


 ふふふ、おかしな事を言うのねとお母様は口元に手を当てて笑う。

 その様子は話を誤魔化しているようにしか見えないが、これ以上は聞いてもきっと何も答えてはくれないだろう。


「そうですね、私の勘違いのようです。疑うような事を言ってごめんなさいお母様」


 素直に間違いを認め謝る私に、お母様はいいのよと結い上げた髪を触りながら言う。


「来月には貴女も十六歳になるわ。大人になるあなたへ贈り物を用意したのよ。楽しみにしておいてね! それから、いつものように誕生日にはアドルフ様もいらっしゃるわよ」

「本当? うれしいわ!」


◇◇


 部屋へ戻った私は、リーリエ様からの手紙を開いた。


「やっぱり……」


 蝋印が少し浮いている。

 ペーパーナイフを差し込むとすぐに開いた。

 やはり手紙は一度開かれている。それは、お父様かお母様、またはそのどちらもがこの手紙を読んでいるという事だろう。


(お母様は何かをごまかしている時に髪をしきりに触るくせがあるから)


 どういう事が書いてあるのかを分かっていながら、私に渡しているのか。


「手紙を見せずに処分しようとは思わないのかしら?」


 この手紙を読めば、娘が傷つくとは思わないの?

 深いため息を吐き、いつもと同じ文面であろう手紙を開いた。

 

 そこに書いてあったのは、やはりいつもと変わらぬ内容。


【先月開かれた夜会で、アドルフ様と私は常に一緒にいた。ダンスを何度も踊った】

【二人で庭に出て星を眺めた。帰りは馬車で送ってもらった】

【あなたとの婚約を早く破棄したいと言っている。私を愛しているとアドルフ様は言う】


「……そう……」


【今度あなたと夜会に出たその時に、私の前でそれを告げるとおっしゃいました】


 添えられていた最後の文面に手が震えた。


「……夜会で婚約破棄。まるでロマンス小説みたい」


 この間読んだロマンス小説では、王子様が傍らに愛する人を置き、壇上から婚約者だった主人公に婚約破棄を告げていた。

 私も似たような事をされるのかしら。


 ――はじめて行く夜会で。


 婚約者である彼からの愛の言葉を一度も聞くことのできないまま。


 読み終えた手紙をキレイに畳むと封筒へ戻した。


◇◇◇


 誕生日の数日前、友人のルビー男爵令嬢が訪ねて来てくれた。


 彼女は婚約して間もなく、本を好きな所が似ているから気が合うと思うとアドルフ様に紹介してもらった彼の遠縁にあたる方だ。

 彼の言う通り、私達はとても気が合い、互いに名を呼び捨て合うほどに仲良くなった。

 以来、彼女はこうして訪ねて来てくれ、話し相手になってくれている。

 二つ年上の彼女はおしゃべりも上手で、色々な話を楽しく聞かせてくれる。


 その大半は読んだ本やドレスのこと。恋の話だが、たまにいく社交界の話も聞かせてくれていた。

 私が社交界に出る事を許されたら、一緒にパーティーへ行こうと、お揃いのドレスを作ろうとも話していた。


 そんな中、私はどうしても知りたくなり、夜会でのアドルフ様の様子を尋ねた。

 ルビーはそんな事を聞かれるとは思っていなかったのか、すごく驚いた顔をした。

 けれど、すぐにニッコリと笑って彼の夜会での様子を話してくれた。


「アドルフ様? そうね、いつもご友人であられる第三王子スチュワート様やリオン公爵様、リッツ伯爵様達と御一緒されているけど。あまりに凄い方達で、皆一目置いているわね。私は遠縁ではあるけれど近づかないようにしているの。彼らを狙っているお嬢様たちに目を付けられたら大変だもの」

「……そう」


 リーリエ様は一緒ではないのだろうか?

 手紙にはいつも一緒にいると書いてあったけれど。


「女性は? 周りにはいらっしゃらないの?」


 思い切って尋ねてみた。


「女性? そうね、皆様すごく人気があるから周りにはたくさんいらっしゃるけど……」

「たくさん……」


 そこにリーリエ様もいるのだろうか?


「でもね、シャーロット。あなたは何も気にしなくていいわ。あなたの美しさに敵うような女性はいないもの」


 ルビーは出会った時からいつもこんな風に私を褒めてくれる。

 可愛い、綺麗お人形の様だと言って。

 そんな言葉これまで誰からも言われた事がなかった私は恥ずかしくて仕方なかった。


「また……そんなことを言って。お世辞でも嬉しいわ」


 そう言葉を返せば、ルビーはキョトンと目を丸くする。


「あら、違うわ。あなた本当に美人なのよ? どうしてそんなに自信がないのかしら?」


 ルビーは私の手を握った。


「アドルフ様だって、あなたを好きだからいつも……」


 好き?

 そうだろうか? 私は今まで彼から一度もそんな言葉は貰ったことが無い。

 彼にとって私は幼い子供でしかないから。

 それに……。


 彼からこれまで一度だって可愛いと言われた事はない。

 言う訳がない。


 だって彼には恋人がいるのだから。

 

 私は首を横に振り、ルビーにこの間届いた手紙の事を話した。


「リーリエ様からの手紙に書いてあったの。アドルフ様は今度の夜会で私に婚約破棄を言われるんですって」

「そんなっ……?!」


 ルビーは心から驚いた顔をして、私の手をぎゅっと握りブルブルと首を横に振った。


「なぜそんな物を……そんな事はないわ。シャーロットあなたはアドルフ様を信じていて!」


 ルビーの余りにも慌てた様子に、私は苦笑いをしながら頷いた。

 彼女は何かを知っているように見えた。ルビーはアドルフ様の遠縁の方だもの。

 けれど、アドルフ様を信じてと言われても、私は何をどう信じればいいのだろう。


◇◇


 ――誕生日の朝。


「おはよう、私達の可愛いシャーロット。十六歳になったね。おめでとう」

 

 そう言ってお父様は花束を渡してくれた。


「あなたもすっかり大人の女性ね。これは私達からよ」


 お母様から手渡されたものは小さな箱。


「開けていい?」

「もちろんよ」


 箱の中に入っていたのは、私の瞳の色と似た水色の石が雫を象るイヤリングだった。

 持ち上げてみると雫が光を受けキラキラと輝いた。


「キレイ……ありがとうお父様、お母様!」


 喜ぶ私に、お父様は白い封筒を差し出した。


「これは?」

「来月開かれる夜会への招待状だ。シャーロットは夜会にずっと行ってみたいと言っていただろう? この夜会は第三王子殿下の主催だから安心だ。それに婚約者であるアドルフ様がエスコートしてくれるからね」


 夜会、ずっと行ってみたかった場所。

 けれどそこに行けば、私はアドルフ様から婚約破棄を言い渡されてしまうのだ。


◇◇◇


 午後になり、アドルフ様が来られた。


 歳の数だけの赤い薔薇と、いつものように美味しいお菓子を持って……。

 十六歳になったからといって、何かを期待して……いなかった事もない。


「シャーロット? 私と居るのはつまらない?」


 薔薇の花束も頂いたし、おめでとうとも言って貰った。

 けれど、他はいつものお茶会と変わらない。


「いっいえ、とても楽しいです」


 慌てて笑顔をつくる私を、アドルフ様は深い青の瞳でジッと探るように見る。


「そのイヤリングはどうしたのかな?」


 イヤリング? と言われて耳に手を当てる。

 耳には今朝両親から贈られた雫のイヤリングをつけていた。


「これは今朝、両親から誕生日の贈り物にと頂いたのです」

「……そう、よかったね」と言ったアドルフ様は、イヤリングをチラリと見てほんの少しだけ笑みを浮かべた。


 どうしたのだろうか?

 いつもはつけないアクセサリーを私がつけていたから気になったの?

 アクセサリーはいくつか持っているけれど、こうやって贈ってもらったのは初めてだった。だから身に着けた。

 

 それに、アドルフ様に似合うよと褒められたくて、綺麗だと思われたくて……。

 アドルフ様はカップを手に取りお茶を飲んだ。


「来月の夜会の事は聞いているかな?」

「はい、スチュワート王子殿下の主催だとお聞きしました」

「スチュワート……ああ、そうだね。彼は私の友人なんだ」


 なぜか一瞬、アドルフ様は嫌なものを聞いたような顔をした。


◇◇◇


 鏡を覗いてため息を吐く。

 どんなにおしゃれをしても、十六歳になっても、彼にとって私は子供でしかない。


「夜会……」


 そこに行けば彼から婚約破棄を言い渡される。

 これまでずっと憧れて楽しみにしていたその場所が、アドルフ様と行く最初で最後の場所になる。


 あんなに行ってみたかった所が、今一番行きたくない場所になってしまった。


◇◇◇


「これ、どうしたの⁈」


 月日が経ち夜会に行く当日のこと。

 支度をしようと部屋へと行くと、大小様々な箱が所狭しと並んでいた。


「これはアドルフ様からの贈り物よ! 今夜はこれを身につけて欲しいと言われたの」


 大きな箱に入っていたドレスを手に取り、お母様は目を輝かせている。

 婚約者となってからはじめてもらったドレスや装飾品を目にした私は戸惑いを隠せなかった。

 これまで彼にもらった物は、お菓子や花など形として残る事のない物ばかりだった。

 けれどそれは、いずれ私との婚約を解消するため。

 だって、彼は……。


「さあ、着替えましょう! ああ、そのイヤリングは外さないといけないわ」


 そう言うと、お母様は私の耳に着いていた雫のイヤリングを外す。


「でも、それ気に入っているの。夜会につけて行ってもおかしくは無いと思うのだけど」


 私が言うと「ダメよ!」とお母様は強く言った。


「イヤリングも用意されているの。いい、シャーロット。今日は靴も下着も何もかも、アドルフ様からの贈り物を身に着けなさい。彼の好意を無駄にしてはいけません」

「……はい、わかりました」


 いつもとは違うお母様の言動を不思議に思いながらも、私は夜会に向けて支度を始めた。

 私が夜会に行く事を待ちわびていたメイドたちは嬉々として着飾ってくれた。


 レースがふんだんにあしらわれている純白の下着を身に着け、白くかかとの高い靴を履く。

 ドレスは白地に青い薔薇の刺繍があしらわれたとても美しいものだった。その青いバラの中心には、アドルフ様の瞳と同じ深い青の石と私の瞳と似た水色の石が二つ寄り添うように留められて輝きを放っている。

 イヤリングはこれまで見たこともない大きさの宝石、それと対になるネックレスにも同じように大きな深い青色の宝石が煌めく。

 いつもは下ろしている髪はきれいに結いあげられ、髪飾りが丁寧に着けられた。


「これで完成です」と、メイドは唇にピンク色の紅をさしてくれた。


「まぁ! とってもキレイよ!」

「とてもよく似合っているよ、私達の娘は本当に美しいな」

「……ありがとうございます」


 アドルフ様から贈られたドレスを身につけメイドたちに着飾ってもらった私を、両親は称賛してくれた。


◇◇◇


 定刻になり、サーチス侯爵家の大きく豪華な装飾の二頭立ての馬車が到着した。


「さぁ、アドルフ様がいらっしゃったわ」

「楽しんでおいで」


 お父様は私の手を取り、侯爵家の馬車へと乗せる。


「よろしく頼むよ、アドルフ殿」


 中に座っておられたアドルフ様は、父の言葉に笑顔で応えられた。

 馬車の中はとても広い。アドルフ様は自身の前の椅子に手を差した。私は彼の斜め前座席に腰を下ろす。二人なら余裕で座る事の出来る椅子なのに、なぜ隣ではないのだろう、そう思ったが、私の着ていたドレスの広がりに納得した。

 動き出した馬車の中。

 

 何故か馬車に乗ってから、アドルフ様は一言も言葉を発せられない。けれど、片時も目を逸らすことなく私を見つめている。


 その間に耐え切れなくなった私は何か話をしようと口を開いた。


「とても……広い馬車ですね」


 アドルフ様はほんの一瞬目を見開かれたが、すぐにいつもと変わらない表情になった。


「そう?」


 馬車の中だからなのか、彼の私を見る深い青の瞳がいつもと違うように感じる。

 仄暗いような視線に、緊張してしまい言葉が上手く出てこない。


(……そうだ、贈り物のお礼を言わなければいけなかった)


「あの……ドレスやアクセサリーなど贈り物をいただきありがとうございました。すごく嬉しいです」


 彼の目を見つめ、緊張しながらお礼を述べた。


「……とても良く似合っているよ、シャーロット」

「あっ、ありが」

「キレイだ」


 深い青の瞳が私の瞳を捕らえる。

 こんなにも長く見つめ合うのは初めてかもしれない。

 まるで、想い合う恋人のよう……。


【アドルフ様は、あなたとの婚約を破棄したいと言っている】


 急にリーリエ様からの手紙を思い出してしまった。はっとした私は、アドルフ様から目を逸らし下を向く。


「シャーロットどうかした?」

「いっ、いえ」

「何かありそうだが?」


 アドルフ様は子供を諭すような話し方で私に言う。


「シャーロット?」

「そ、その……リーリエ様とは」


 意を決し彼に聞こうとした。


「リーリエ?」


 その時ガタン、と馬車が止まった。

 会場に着いたのだ。

 私は、もうこの話はいいと首を横にした。

 アドルフ様は何かを言いかけたようだったが、話すことなく先に馬車を降りていく。


「さあ、行こう」


 彼の手が、馬車を降りようとステップに片足をかけた私に、自然と差し伸べられる。

 私はそっと手を差し出しアドルフ様の手に置いた。


(私よりずっと大きな手だわ)


 そんなことを思っていると、なぜかぎゅっと握られた。

 そのまま腕に載せる様に言われ、彼と共に会場に入った。


 スチュワート王子殿下主催の夜会は、とても煌びやかで豪華な雰囲気だった。

 色とりどりの衣装を身につけ高価な宝石を纏う令嬢達や、同じく煌びやかな正装を着た若い令息達が大勢いる。


「アドルフ! 待っていたぞ!」


 彼の名を呼びながら、とても気さくな感じで此方へと歩いて来るその人は、夜会の主催者であるスチュワート殿下だ。


 私は慌ててカーテシーをする。


「へえ、この娘がシャーロット嬢かぁ。ふうん、君が隠しておく訳だな」


 ははは、とスチュワート殿下は笑って私の手を取ろうとされた、その瞬間、サッと私の前にアドルフ様が立ちはだかった。

 スチュワート殿下は呆れたように笑っている。


「アドルフ、挨拶くらいさせろよ。まったく狭量なヤツだ」

「触るな、私のシャーロットだ」


(私のシャーロット……)


「うっわ、私のだって」

「…………」


 ふざけ合っているようだったアドルフ様とスチュワート殿下は、暫くすると何やら静かに話を始めた。 

 そこへ少し離れた場所から、私の知っている令嬢が声を掛けてきた。


「シャーロット! 夜会にやっと来られたのね!」


 友人のルビー男爵令嬢だ。


「少し話せる?」


 私の側までやって来ると何やら小声で話しかけてくる。

 アドルフ様はルビーを確認して頷いた。


「よさそうね、ではこっちへ」


 アドルフ様達に挨拶をしたルビーは、私を連れ会場の隅のへ移動する。

 途中でテーブルに用意されていたグラスを二つ手に取ると、一つを私に差し出した。


「これはジュースよ。お酒じゃないわ、大丈夫」


 そう言ってコクリと飲んでみせる。

 それを見て、私も一口飲んでみた。


「おいしい」

「でしょ! 私が作ったのではないけど!」

 うふふと笑い合い一息つくと、ルビーが話し始めた。


「リーリエ伯爵令嬢が来ているわ、先程見たのよ」

「リーリエ様が……」


 という事は、私はやはりこの夜会で婚約破棄を言い渡されるのか…………。

 私は声を落とした。


「さっき、アドルフ様とスチュワート殿下も何やら話をされていたの。婚約破棄のことかもしれないわ……」


 今夜、あんなに見つめられたのも最後だったからなのかな……。


 私の言葉にルビーは目を見開いた。


「それはないわよ! どうしてそう思ってしまうの?」

「言ったでしょう? リーリエ様からアドルフ様が婚約を破棄したがっていると書かれた手紙が届くって。それに、彼女は恋人なの。もう何年も続いているわ。彼から愛していると言ってもらえている。私は一度も彼の口からそんな言葉を聞いたことがないの。リーリエ様の手紙の通り、きっとアドルフ様は今夜……」


 話していると悲しくなってきた。


「シャーロット……」


 泣きそうになり、グラスを持ったまま震える私の手をルビーがそっと上から支えてくれた。




「あなたがシャーロット・ビギンズね」


 突然名前を呼ばれてみれば、私達の目前に真っ青なドレスを身に纏った黄金の髪に青い瞳の華やかで美しい女性が立っていた。


「はい」

「私はリーリエ・コスタンよ」


 ああ、この方が、なるほど……と私は思う。

 彼女の着ている青いドレスはアドルフ様の瞳の色そのものだったのだ。


「ふうん、あなたがねぇ……」


 私の全身を舐める様に見るリーリエ様。白地に青いバラの刺繍の私のドレスを見、自身のすべてが青いドレスに目を向ける。

 向き直ったその目は、勝ち誇ったようだった。


「ところで、アドルフはどこかしら?」


 リーリエ様は辺りを見渡しながら「アドルフ」と名前で呼んだ。だが、アドルフ様は見当たらない。


「どこへ行っているのかしら? まぁいいわ。あなた、手紙は読んだのでしょう?」


 背の高いリーリエ様は私を見下ろす様にして話す。


「今夜するはずだったあなたとの婚約をなしにする話、彼がどうしても言い難いと言い出したのよ。彼は優しい人だから。だから、あなたから婚約を断りなさいな。どうせ愛されていないのだもの、あなたにとってもその方がいいはずよ? 大体、子爵令嬢が侯爵様の婚約者だなんておかしいのよ。相応しくないわ」

「…………」

「そんな話信じられませんわ。それに二人の事はリーリエ様が口を出す事ではありません」


 横にいたルビーが、何も言えずにいる私に代わって言ってくれた。


「あなたには関係なくてよ! あなた男爵でしょう? たかが男爵の娘如きが、伯爵である私に口を出すなど無礼だわ。部外者は彼方へお行きなさい!」


 リーリエ様は、私を庇ってくれたルビーにこの場を去れと強い口調で命令する。

 その顔は、とても恐ろしかった。


「ルビー、ごめんなさい。私は大丈夫よ」


 私の所為で声を荒げられたルビーに、申し訳なく思い謝ると彼女は気にしないでと言い、それから心配そうな顔をして私の持つグラスを手に取るとこの場を去った。


「リーリエ様。そう話されましても、私からそのようなお話をするというのは出来ません。アドルフ様は侯爵様なのです」

「出来ないと言うの? 彼はあなたのことを子供だからと可哀想に思って言えずにいるのよ? あなたの方から婚約を無くしたいとお願いして差し上げたら、アドルフも喜ぶのではなくて?」


 ――可哀想に思っている――


 そんな事言われなくても分かっている。

 婚約してから行われて来た昼間のお茶会も。

 月に一度しか会わず、いつも持って来てくれる物はお菓子で、同じ会話ばかりな事も、すべて私が子供だから。

 今、私の目の前にいるリーリエ様のように大人であれば違ったはず。

 あのドレスもネックレスもイヤリングも、彼女の身に着けている物全てはアドルフ様の色。

 きっとそれらは彼からの贈り物なのだろう。


 ――恋人の仲を引き裂いているのは親に決められた婚約者である私。


 彼は子供である私を可哀想に思い、言い出せない。


「どうなさるの? シャーロット子爵令嬢?」


「私から……婚約を……なくしたいと、お願いしてみます」


「そうね、それがいいわ!」


 リーリエ様は、それは嬉しそうに微笑まれた。

 その眩しいほどの微笑みは、愛されている自信からくるのだろう。

 私は見ていられずに目を伏せた。


「何がいいのかな?」


 リーリエ様の後ろに、アドルフ様が立っていた。


「アドルフ!」


 振り向いたリーリエ様は、アドルフ様に声をかける。

 だが、アドルフ様はそれを気にも留めず真っ直ぐに私の下へ歩いてくる。


「シャーロット、どうしたんだ?」


 子供をあやす様な声でアドルフ様は言った。


「あの…….」


 リーリエ様の鋭い視線が、私を見ているアドルフ様の背後から襲い掛かる。

 早く言えとその目が訴えている。


 私は上手く出ない声を何とか絞り出した。


「私…….こっ……婚約を……なくし」


 そこまで口にした時、アドルフ様が私の腕を掴んだ。

 何も言わずに、早足で会場の奥へと歩き出す。


「あっ、アドルフ様っ?」


 やや、引きずられるようにして私は彼に連れ去られる。


「アドルフどこへ行くの!」


 追いかけてこようとするリーリエ様は、会場にいた者たちに止められていた。


◇◇◇

 

 ツカツカと歩くアドルフ様は、何も話さない。

 会場を出ると、庭に面した渡り廊下がある。

 その先は、いくつかの小部屋が連なる休憩室となっている。

 

 着替えや、疲れた体を休める為の場所だと言われているが、その実は逢引の場所なのだと私は聞いていた。


 私はその小部屋へと連れ込まれた。


 アドルフ様はドカッとソファーに座ると、自身の膝の上に私を無理矢理座らせる。

 片方の腕で私の腰をグッと抱き、はぁーっとため息を吐くと前髪をかきあげた。


「それで、君はあの女に言われたままに、私との婚約をなくしたいとでもいうつもり?」


 凄く不機嫌な声でアドルフ様は言う。


 でも私は今それどころでは無い。

 突然腕を引かれ、逢引の為の部屋に連れ込まれた。

 それに、どうしてか膝の上に抱きかかえられている。


 どうして……?


 動揺している私に気づくと、アドルフ様はやわらかい表情になり笑いかけてくれた。


「シャーロット……婚約をなくすなんて言わないよね?」


 彼は、耳に吐息がかかるほど近くで囁いた。

 その声は、これまで聞いたことのないほど甘い。

 私の胸がこれまでにないほど大きな音をたてはじめる。


「……で、でも……リーリエ様が……その……」

「リーリエ? ああ、さっきいた女の事?」


 私はコクリと頷いた。

 アドルフ様は私を見つめる。


「君に色が似ていたから一度見た事があった。それ以来、あの女はなぜかいつも近くにいたんだよ」

「色?」

「髪の色、よくみると違ったけれど」

「でも……手紙に」

「手紙?」


 アドルフは私を見つめ甘く優しく微笑んでいる。


「リーリエ様からの手紙には……アドルフ様があの方を……愛していると……」

「私が愛するのはシャーロットだけだ」


 アドルフ様は私の首筋を指先でつっと撫でる。

 そんな事された事もない私は、その感覚にゾクゾクとし小さく震えた。

 その可愛らしい仕草にくすっと笑ったアドルフは、すべて話してあげるよと言った。


「そうだね、私が君を好きになったのは……」


 アドルフの父親であるサーチス侯爵とビギンズ子爵は昔からの友人だった。

 最近ではほとんどなくなってしまったが、以前はお互いの家を行き来することも多かったのだ。

 それはアドルフが十二歳の頃。

 学園の寄宿舎に入る事になっていたアドルフは、あるものを譲ってもらう為、父親であるサーチス侯爵と共にビギンズ子爵の下を訪れた。


「そこにピンクのドレスを着たかわいい天使がいたんだ。君だよシャーロット」


 アドルフはその時はじめて会ったシャーロットを一目見て好きになった。

 すぐにシャーロットの父親に婚約をしたいと頼んだが、それには父であるサーチス侯爵とビギンズ子爵がまだ早いと許さなかった。


 相手は三歳の女の子だから当然だろう。


「お前が成人になってもまだシャーロットとの結婚を望むならその時は考えよう」

 

 そう、二人と約束を交わした。

 大人になる頃には気持ちなど変わるものだ、子供が言っていることだから今は決定するべきではない、と二人の父親は考えていた。


「でもね、私の気持ちは変わらなかったよ。変わる訳ない。寧ろどんどん好きになっている」


 そう言うとアドルフは私の手を取り指先に口付けた。


 私は真っ赤になってしまう。


 クスッと笑って「かわいいね」と耳元で囁かれ、急激な接近にクラクラとする。


「私のことをシャーロットは『アディ』と呼んでいたんだ。覚えてないかい?」


 アドルフの視線は甘く、私は恥ずかしくなり俯いた。


「覚えていません」

「そうか、そうだね。君はまだ三歳だったから覚えていなくてもおかしくはない。でも私はその呼び方をとても気に入っていた。ねぇシャーロット、よければこれからはあの時の様に私の事をアディと呼んでくれないか?」


 ん? と言いながらアドルフはまた私の頬をゆっくりと撫でた。


「……ア……アディ……様」

「様はいらない。シャーロット、アディとだけ」

「はい……アディ」


 そう呼ぶと、彼は満足そうに微笑み、私のイヤリングに触れた。


「私があげたものだね」

「はい」

「君が好きな私の瞳の色だ」


『君が好きな、私の瞳の色』その言葉に私は目を見開いた。


「この間、ご両親からの贈り物をつけていただろう……似合っていたけれど少し妬けた。申し訳ないがあれは大切に仕舞っておいて今後身に着けるものは、私からの贈り物だけにして欲しい」

「はい」

「ずっと君に触れたかった。けれど、一度でも触れてしまったら、離せなくなる自信があったからね」


 離せなくなる自信……?

 

 話をしながら、アディは片手で私のまとめていた髪を解く。

 結い上げていた髪は、パサリと音を立て肩へと落ちた。

 背中まである長い髪を、彼は優しく指で梳いていく。


「キレイな金の髪だ。まるで綿毛の様に柔らかい」


 アドルフは髪をひと房手に取ると、口付けを落とした。


「あっ」


「どうしたの?」


 髪を解かれてしまった。これではもう会場へ戻ることもできない。


「ダンス……踊りたかった……です」

 

 アドルフは申し訳なさそうな、けれど悪戯な顔をした。


「ごめん、私が髪をといてしまったから。そうか、ダンスね」


 なぜかくくっとアドルフは笑った。

 ダンスを踊りたかったというのはおかしなことだったのだろうか?

 彼の笑っている理由が分からず、私は首を傾げる。


「もう婚約破棄なんて言っていたことは忘れたようだね」


 そうだった……私はアディとの甘い会話と仕種に、すっかりそのことを忘れていた。


「君がどんなに望もうとも婚約破棄などしない。それに、これからは隠すことなく愛すから。それにダンスならこれからいくらでも踊ってあげるよ」


 彼はそれから、私が分からずにいたこれまでの行動の意味を教えてくれた。


「いつも好きな色を尋ねていたのはなぜ?」

「君は中々私を見てはくれなかった。でも好きな色を聞いた時だけは瞳を見つめてくれただろう。それが嬉しくていつも聞いていた」

「私に手紙が来ていた事は?」

「手紙? ああ、知っていたよ。少しでも私の事を気にして欲しいと、君のご両親に頼んで渡してもらっていた」

「すごく……気にしました」


 ごめん、と言いながらアディは私の頬にキスをした。


「ほかに聞きたい事はある?」

「聞きたい事……」


 婚約破棄はリーリエ様の妄想だった。

 アドルフ様は私のことは何もかも知っていて……。


「アディは私のことを好きなんですね?」

「そうだよ」

「……子供だと思ってない?」

「思っていないよ。それに、もう充分大人だろう?」

「だって、いつもお菓子ばかり持ってきて……」


 私もアクセサリーを貰ってみたかった、お菓子は美味しかったけど、そう唇を尖らせた。


その唇を、アディは親指でそっと撫でる。


「アクセサリーは君の美しさの前には必要を感じなかった。だから贈らなかった。けれど、君が望むなら、いくらでも贈るよ。それから、お菓子はね、私の前で恥ずかしそうに食べる君の姿を見るのが好きだったからだよ」


 これまでになく甘い目が私に向けられている。


「好きだよ、シャーロット」


「ほ……本当にアディは私でいいの? 私が婚約者でいいの?」


 私の言葉に、アディの目は鋭くなった。


「いや、もう婚約者はやめる」

「……え……」

「一日も早く結婚しよう。もうこれ以上私は待てない」


 アドルフの顔が近くなる。


「離さないよ」

 

 その言葉の後、彼の唇は私の唇に重ねられた。


 こうして、初めての夜会で婚約者に完全に捕らえられた私は、二ヶ月後、シャーロット・サーチス侯爵夫人となった。

 そして半年後、子供が生まれ……。

 

 更に半年以上の後、私はようやく彼と夜会でダンスを踊る事が出来た。

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