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01 ステータスカンストのパーティ

 ステータスとは、その者の能力を数値化した指標だ。


 全部で六種類あり、体力が高ければ打たれ強くなる。

 魔力が高ければ強大な魔法を操れる。

 筋力が高ければより力強く、知力が高ければ賢く、敏捷力が高ければ素早くなる。


 が、唯一精神力だけは何の役にも立たないと言われている。

 つまり死にステ。伸ばす意味のないステータスだった。


「これより今日の種分配を始める!」


 野営地に【剣聖】マスルの声が響き、Bランクパーティ【森のグルメ】の面々ががやがやと集ってくる。

 

 【森のグルメ】は、雑魚魔物をひたすら倒して【種】を集めることを専門とするパーティだ。

 【種】とは、各ステータスを上昇させる効果を持つ希少なアイテムだ。

 極めて珍しい魔力の種以外は、雑魚魔物がごくたまにドロップする。

 そして今日も丸一日雑魚狩りを続け、数十個の【種】が集まったところだ。


「まずはレングス! 相変わらずおまえの武闘スキルは頼りになるぜ。さあ、受け取ってくれ」


「へへ、いいってことじゃん」


 【武闘家】のレングスが青色の種をざらざらと手のひらに受け取る。

 彼は「じゃん」が口癖のいたって普通の冒険者だが、そのステータスは規格外だ。


―――――――――――――――――――――――――


名前:レングス

職業:武闘家


体力:9990

魔力:0

筋力:1050

知力:320

敏捷力:770

精神力:30


―――――――――――――――――――――――――


 体力だけが異常に突出している。これは数年かけて食べ続けた【種】の効果だった。

 しかし、それはなにも彼だけではない。


「次にアギリ! おまえの盗みスキルのおかげで俺たちは強くなれた! 遠慮せず食ってくれ」


「うふふ、そんなに褒めても何も出ないわよ?」


 【盗賊】のアギリは黄色い種を受け取る。

 彼女はただの美人の盗賊……ではない。


―――――――――――――――――――――――――


名前:アギリ

職業:盗賊


体力:450

魔力:100

筋力:550

知力:600

敏捷力:9988

精神力:90


―――――――――――――――――――――――――


 人間で敏捷力9000オーバーは、おそらくこの大陸広しといえども数人しかいないだろう。

 超高速で動き回るアイアンスライムにだってアギリは平気で追いつける。


「ナレジ! おまえの回復のおかげで継続的に種集めができた! ほら、おまえの取り分だ」


「ん……」


 【聖女】ナレジもまた規格外のステータスを持つ持っている。彼女の場合は知力がほぼカンストしている。

 もっともめったに喋らないので、どれだけ賢くなっているのかは今のところよくわからない。


「そして最後は……あー、インゼン! おまえはその、なんだ、特に何かしてるわけじゃないが……」


 マスルが俺の方をシラけた目で見る。言いたいことは分かった。

 【戦士】である俺の役割は少ない。メインの仕事は盾役だが、【森のグルメ】は雑魚狩りがメインなのでほぼ出番がない。

 だから実質的に無職状態だった。もっぱら荷物持ちを担当している。

 ちなみにステータスは、死にステと名高い精神力がカンストしている。


―――――――――――――――――――――――――


名前:インゼン

職業:戦士


体力:1200

魔力:0

筋力:990

知力:620

敏捷力:70

精神力:9992


―――――――――――――――――――――――――


 精神力が死にステである以上、かなり平凡なステータスといっていい。


「まあ、どうせ死にステ上昇の精神力の種なんだ。勝手に食っとけ」


「ああ、ありがとう」


 マスルは乱暴に種を投げてよこす。

 ぱらぱらと足元に散らばったので、俺は一つ一つ拾わなければならなかった。

 それを見ていたレングスがケタケタと楽しそうに笑う。


「ヘー、インゼンおまえ必死じゃん。そうまでして死にステを伸ばしたいのか?」


「レングス! インゼンだって強くなろうと頑張ってるのよ! まあ、必死になっても伸びるのは死にステなんだけどねー」


「アギリのがひでーじゃん。みんな親切に黙っててやってんのに。役に立たない才能伸ばしてたって俺達の仲間だぜ、ちゃんと種はわけてやらねーとじゃん」


「死にステの精神力の種を、でしょ?」


「そういうことだ、涙ぐましいじゃん!」


 ゲラゲラと笑う二人を、マスルが遮る。


「おいおいあまりいじめてやるな。今日がインゼンと一緒にいる最後の日なんだぜ」


「最後の日?」


 聞いたことのない情報だったので、俺は聞き返してみた。

 と、マスルが歯茎をむき出しにして笑う。


「そういえば言ってなかったな。インゼン、おまえは今日でクビだ」


 なるほど。だから最後の日、というわけだ。


「そうか。今まで世話になったな」


「インゼン反応薄いじゃん? もっと泣きわめくかと思ってたぜ」


「突然のことで理解が及んでないんじゃないかしら?」


 別にそういうわけではなかった。が、俺が黙ってるのをいいことに彼らはどんどん盛り上がっていく。


「わかってないインゼンにクビの理由を教えてやったらいいじゃん、マスル」


「ああ、そうだな。知っての通り、今日で皆のステータスはめでたくカンストを迎える。よってこれからは各人が別のステータスを伸ばしていくことになるわけだが……」


「そうなると問題があるでしょ、インゼン? あなたの冴えない頭でわかるかしら?」


 冴えないのかどうかは知らないが、聞かれたので俺は答える。

 まあ、短い付き合いじゃない。だいたい彼らが何を考えているかはわかった。


「今までは死にステの精神力の種担当だった俺に、別の有用な種を与えなくちゃならないな。それが嫌だからクビにするんだろう」


 ようするに、これ以上の分前を与えるのが惜しくなったのだろう。事実上価値のない精神力の種だからこそ、いくら俺に与えても文句をつけなかったわけだから。

 図星を突かれたのが不快だったのか、マスルたちの顔が怒りにゆがむ。


「こいつ、生意気じゃん。ぶちのめしていいか?」


「……ああ。筋力カンストの俺が殴れば殺しちまう。お前がやれ」


 言うが早いか、俺の脇腹にレングスのつま先が突き刺さった。それを止める者はいない。

 もちろん俺は【戦士】のタンクスキルを使えば防げるが、下手に抵抗すると筋力カンストのマスルに殺されかねないのでやめておく。


「げふっ……」


 喉の奥に胃液の味がする。世界がひっくり返り、俺は固い地面の上に投げ出される。


「へへっ、無様じゃん。痛かったか、インゼン? 今のうちにさっきの態度を謝罪すれば、二発目は勘弁してやるじゃん」


 レングスは小柄だが、武闘家だけあって蹴りの威力は鋭い。

 しかし俺は、特に謝る気にもならなかった。


「別に。蹴りたければ好きに蹴るといい」


「……てめえ。クソムカつくじゃん。ステータスカンストしてるからってイキってんのか? ああ? てめえのステータスと俺らのカンストステータスじゃ意味合いが違うんだよ! この死にステ野郎! お望み通り痛めつけてやるじゃん!!」


「げほっ……がっ……ぐふっ……」


 鋭い蹴りを何発も受け、痛覚が激しく刺激される。

 体力がみるみる削れていく感覚がある。


「これでトドメの一撃じゃん!」


 ひときわ強烈な蹴りが襲いかかり、俺の意識を刈り取った。

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