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セアラとシル

今日はセアラとシルsideのお話になります

視点はセアラ、時間はちょっとだけ遡ってアルの出発日

 今日はアルさんが泊まりがけの依頼に出発する日。きっとお弁当があった方がいいだろうと思って、私は張り切って早起きをする。

 アルさんのためではあるけれど、きっと食べているときは私のことを思い出してくれるはず。ちょっとだけそんな邪な考えも入っているけどいいよね。

 ベッドから体を起こすと、シルがアルさんの腕の中ですうすうと寝息を立てて幸せそうに眠っている。

 娘に対して少しだけ羨ましい気持ちになってしまうが、アルさんの頬にキスをして、その気持ちを何とか誤魔化す。


「えっと……手軽に食べれるようにっていうことなら、サンドイッチかホットドッグ……アルさんはやっぱりホットドッグがいいかな?」


 私はアルさんの為に、ホットドッグを五個作る。野菜がないとよくないので、ザワークラウトも一緒に挟んでおく。

 アルさんは空間収納魔法を使えるので、腐る心配もない。今回食べきらなくてもいつでも食べられる。うん、便利だなぁ。私も練習すればいつか使えるようになるのかな?でもそんな簡単に出来たら、みんな使ってるはずだよね。やっぱり難しいのかもしれない。

 

 お弁当の準備が終わったら、そのまま朝食の準備に移る。

 ちょうど作り終わった頃に、アルさんとシルが同じように目を擦りながら起きてくる。

 姿は似ても似つかない二人の同じ仕草に、思わず笑みがこぼれてしまう。


「アルさん、シル、おはようございます」


「ああ、おはよう、セアラ」「おはよう、ママ」


 すでに朝食の準備まで終えている私を見て、アルさんは不思議そうな顔をする。


「それにしてもずいぶん早いな?ちゃんと寝れたのか?」


 アルさんが私の心配をしてくれる。ちょっとしたことだけれど、それが嬉しい。


「はい、大丈夫ですよ。アルさん、お弁当作りましたので持っていってください」


 驚いた表情を見せるアルさん。ふふ、その顔が見れただけでも、早起きをした甲斐があったというものね。


「ありがとう、大切に食べるよ」


「い、いえ。そんな大したものではないですから」


 ホットドッグなんかでそこまで感謝されると、ちょっとこそばゆい気持ちになってしまう。


「いや、セアラの作ったものが外で食べられるんだ。有り難いよ」


「は、はい。ありがとうございます」


 アルさんが少し頬を緩ませて私を見てくれると、思わず顔が赤くなってしまうことを自覚する。

 やっぱり私はアルさんが好きだなぁ。

 丸二日以上会えないけど大丈夫だろうか?ちょっとだけ悲しくなってしまう。


「セアラ、大丈夫か?」


「ママ、お腹空いたー」


「え?は、はい。じゃあ朝食にしましょう」


 私がほんの少しだけ悲しそうな表情を見せると、アルさんは心配そうに顔を覗き込んでくる。

 アルさんは私に隠し事は出来ないと思っているが、それは私も同じことだと思う。

 私はアルさんのこととなると、ついつい色んな感情が顔に出てしまうのだから。


 私たちはいつものように食事を終えると、一足先にアルさんが家を出る。

 やっぱり寂しいな。行ってほしくないけど、さすがにそんなことは言えない。


「セアラ、シル、行ってくる」


 アルさんはそう言うと、軽く私にキスをする。

 いつも一緒の時間に出るので、こうして玄関先でするのは初めてだ。

 正直に言って、ちょっとだけ憧れていたシチュエーションだったので、嬉しくて飛び上がりそうになってしまうのを我慢する。


「はい、行ってらっしゃい!お気をつけて」


「パパ、私も!」


 シルが可愛らしく唇を突き出すと、アルさんは少し困った顔をして、頬にキスをする。シルは嬉しそうに耳を動かし、尻尾を揺らしている。この娘もアルさんのことが本当に大好きだ。


「行ってらっしゃい!」



 そしてアルさんを見送った私たちも、仕事に行く時間が迫ってきているので準備する。

 いつものように仕事中に邪魔にならないように、長い髪を纏めて上げておく。


「ママ!早く行こ!」


「はいはい、ちょっと待ってね」

 

 アルさんが依頼で不在の間も、私たちは変わらずギルド横の解体場で働く。

 シルは別に手伝わなくていいと言われていたけれど、『清潔クリーン』や、大型の魔物を扱う時の『軽量化ウエイトリダクション』といった魔法が非常に便利だったので重宝されている。

 彼女としても私や解体場の人から頼りにされるのは嬉しかったようで、自分から進んで手伝っている。


「「おはようございます」」


 私たちが挨拶をすると、解体場で働く人たちが挨拶を返してくる。女性は私とシルしかいないので、職場が華やかになると喜ばれている。


「おう、おはよう!セアラちゃん、シルちゃん。今日と明日はアルは帰ってこないんだっけか?」


「はい、そうなんです。ちょっと寂しいんですが、仕事はきちんと頑張りますので」


「ああ、頼むぜ。シルちゃんもな」


「は〜い!」


 シルが勢いよく手を挙げて返事をすると、その場にいるみんなの顔がほころぶ。

 モーガンさんを始め、ここで働いている人たちは、私たちを一緒に働く仲間として受け入れてくれている。私は確かに女性で力が弱いが、シルがそれをカバーできるし、細かい作業は得意なので色々任せてもらえている。


「おっしゃ、まずはセアラちゃんとシルちゃんにはこれを頼もうかな」


 そう言ってモーガンさんが取り出したのはアルミラージ、一角ウサギだった。


「モーガンさん、私たちだけでやっていいんですか?」


「ああ、もう一ヶ月以上やってるんだ。本当はもっと早くてもいいくらいだったんだが、セアラちゃんが続けられるかも見たかったしな」


「ありがとうございます、シル、頑張ってやるわよ!」


「うん!」


 私たちが両拳を握ってやる気を見せていると、従業員の方たちが頬を緩めてこちらを見ている。

 どうしたのかと不思議に思っていると、モーガンさんからカミナリが落ちる。


「おらぁ、おめえらもちゃっちゃと始めやがれ!」


「「「うぃっす!」」」


 私たちは早速解体に取りかかる。血抜きは先にしてあったので、片足を棒にくくりつけて逆立ちさせる。

 そのまま皮を一気に剥いでから、内蔵を取り出して、肉を切り分けていく。

 小型のモンスターなので、そこまで難易度は高くない。私たちでも十分に出来た。


「どうでしょうか?」


「ああ、大丈夫だ。ちゃんと出来てるよ」


 私はシルと顔を見合わせて喜ぶ。早くアルさんに報告したいな。


 私たちはそれから他の方の解体を手伝っていく。私たち以外の方は十年以上働いている方ばかりなので、その手際は見事なもの。流れるような職人技は、思わず美しいとすら思えるほどで、とても勉強になる。


 解体場に持ち込まれるモンスターは様々な種類がいて、最適な解体方法を適宜選択する。こればかりは経験が必要と言うことだと思う。だからこそモーガンさんも簡単な物ばかり任せるのではなく、色々なモンスターの解体を手伝わせてくれるのだろう。


 確かに女性らしくない職場、まさに男の職場という感じではあるけれど、私とシルはここで働くのが好きだって自信を持って言える。

お昼からのもう1話もセアラ視点の話になります!

登場人物の視点で書くのって面白いですよね

もう一作準備してるんですが、それは主人公視点でいってみようかなと思ってます


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