ミスコン開始!
本日2話目です!
「パパ、もう色々見れたからママのところに戻る?」
「ああ、そうだな。昼食を買っていこうか」
「うん!」
二人は祭りの見物を終えて、いつもの屋台でホットドッグを五つ買ってセアラのもとへ向かう。ちなみにアルが二つ食べる。
時刻は間もなく十二時を迎える頃で、当日受付が開始される頃だった。
「あ!アルさん、シル、お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
「ただいま!お昼ご飯買ってきたよ」
シルがセアラとメリッサにホットドッグを手渡す。
「私までいいの?ありがとう、アルさん、シルちゃん」
「気にしなくていい。それよりセアラの方はどうなんだ?」
よくぞ聞いてくれたとばかりに、メリッサが胸を張る。
「間違いなく優勝できると思いますよ!衣装は決まったので、あとは化粧をして完成です」
「アルさん、シル。私頑張りますから」
「ああ、応援してる」
「うん、パパと一緒に応援するね」
両拳を力強く握ってやる気を見せるシルを見て、セアラが頬を緩めると、胸元の猫のトップが付いたペンダントに視線が行く。
「あれ?シル、そのペンダントは?」
「パパが的当てで取ってくれたの!」
どうやら二人で行かせたのは成功だったようだと、セアラがほっとする。嬉しそうにアルに寄り添い、ホットドッグをかじっているシルの様子から、二人が打ち解けたのは明らかだった。
「そうだったの、良く似合ってるわよ」
「えへへ、ありがとう!」
「ところで受付にはまだ行かないのか?」
「はい、十四時までに行けばいいらしいので、ここでしっかり準備してから行きます」
「そうか」
四人はホットドッグと、アルが収納空間から取り出した野菜スープを食べ終えると、メリッサがシルのメイクを始める。
アルとシルは、その様子を興味深く見守る。メリッサが言うには、セアラは元々肌がきれいなので、それを生かすメイクをするとのことだった。
その言葉通り、メイク後のセアラはアルとシルが見とれてしまうほどに美しかった。
「ふわぁ……ママ……きれい」
「ああ、セアラ。きれいだ」
「あ、ありがとうございます。こんなに本格的にしてもらったのは、お城にいたとき以来です……」
「え?お城?」
ストレートに褒められた嬉しさのあまり、つい口が滑ると、焦燥によってセアラの顔は青くなる。
「ああ、セアラは昔アルクス王国の王城で働いていたんだ。そのときに遊びでしてもらったのか?」
「は、はい。そうなんです」
「なーんだ、そうだったの。私てっきり本当は王女様なんですーっていう、物語みたいな展開かと思っちゃった」
いきなり正解を言い当てるメリッサ。最初に二人を夫婦だと言ったように、相変わらず勘がいい。
アルのフォローで何とか事なきを得たセアラが、ほっとしてアルに目配せして謝ると、アルが手のひらをセアラに向けて気にするなと示す。
しかしそう思ってもおかしくないほどセアラは美しかった。アルとセアラは与り知らぬことだが、どこぞの国の皇太子が気に入ったというのも、あながち嘘では無さそうだった。
「そ、それじゃあ受付にいきましょうか?」
「ああ、そうだな」
四人は祭りのメイン会場へ向かう。シルの両手をアルとセアラがそれぞれ握り、メリッサはその後ろをついていく。
「本当に親子に見えるわね」
「当たり前でしょ、私たちは家族なんだから」
思わず呟いたメリッサの言葉を、セアラが肯定すると、シルの耳がぴょこぴょこと動き、尻尾が嬉しげに揺れる。その二つがあるので養女だとは分かるが、それでも三人は本当の親子に見えるほど自然な様子だった。
会場に着いた四人は早々にセアラの受付を済ませる。
予選は普段着のままの審査ということだが、それでもやはり小綺麗な格好をしている人が回りには目立つ。セアラはお気に入りの白いワンピースで来ていた。
「アルさん、少し緊張してきました……」
不安げな表情を見せるセアラの手を、アルが両手でそっと包む。
「セアラは他の誰よりもきれいだよ、俺が保証する」
「はい……ありがとうございます」
緊張が少しやわらいだのか、セアラの顔に笑顔が戻る。
「ああ、やはりセアラは笑っている方がいいな」
「は、はい」
「……こんなとこでいちゃつかないでくれませんか?」
二人の様子を見ていたメリッサが嘆息し、シルは二人の仲がいいのが嬉しいのか、ニコニコしている。
やがて予選の時間になると、最初の十人がステージに上がる。
予選は八人の審査員が十人の中から良いと思った二人を選んで、得票数が上位の二人が本選に進めるとのことだ。
出場人数は百人までとなっていたので、本選に進めるのは二十人ということになる。
「じゃあ行ってきます!」
「ああ、頑張れ」
「ママ、頑張ってね」
「予選は通って当然よ!」
セアラのグループは最終組。グループ分けは申し込み順で決まるらしいので、二日前の時点でほぼ締め切り状態だったようだ。
最終グループが登場したところで、ざわめきが起こる。
「うわ、あの九十八番の娘、めちゃくちゃきれいじゃないか?」
「九十八番、彼氏とかいるのかな?」
「九十八番はこの町の娘か?めっちゃタイプだ」
会場のあちこちで九十八番、つまりセアラのことを褒める声が聞こえる。
アルとしては嬉しくないわけではないが、それ以上にセアラに近づこうとする男がいるのでは?と思うと気が気ではない。
「パパ、みんなママを褒めてるみたいだよ」
シルはセアラが褒められていることが嬉しいようで、笑顔でアルに話しかけてくる。
アルはそれどころではないのだが、何とか平常心を保とうと努力する。
「……ああ、当然だろうな」
「アルさん、もしかして嫉妬してます?」
「……そんなことはない」
心を見透かすようなメリッサの言葉に、アルは動揺を隠せない。
「メリッサお姉さん、嫉妬ってなに?」
無邪気に分からないことを聞くシルに、メリッサが丁寧に説明する。
「嫉妬っていうのはね、この場合だとセアラのことを他の人が褒めるのが、ちょっと嫌な気分になるの」
「ママが褒められると嫌なの?どうして?」
首を傾げて、なおもメリッサに尋ねるシル。
「それはアルさんがセアラを好きだからよ。好きな人に他の人が近づいたら嫌でしょ?」
「うーん、良く分からないけど、ママはパパが大好きだから心配ないよ!昨日もお風呂でパパの好きなところを、たくさん教えてくれたし」
聞き捨てならないといった感じでメリッサの目が光る。
「ほうほう、それは興味深いわ。シルちゃん、是非教えて?」
「……そこまでにしてやってくれ」
セアラのためというのもあるが、アルは自分がいないときにそんな話をしていたという事実ですら恥ずかしい。
ましてやその内容まで聞いてしまったら耐えられそうになかった。
やがて予選が終わり、セアラがアルたちのもとに戻ってくるが、明らかに回りからの視線が増えている。
「はー、緊張しちゃいました。大丈夫でしたか?」
「ああ、一番きれいだったよ」
「うん、ママが一番だよ」
セアラを褒め称えるアルとシルだが、メリッサがその空気を一喝する。
「甘いわ!予選は通過して当たり前、問題は本選よ!そもそも……」
メリッサのご高説が始まろうかというところで、聞き覚えのある女性の声がする。
「いたいた、セアラさん!」
声をかけてきたのはファーガソン家の娘ヒルダ、もちろんブレットとレイラもいる。
「やあアル君、セアラさん。こちらの娘さんは?」
アルとセアラはシルのことを説明する。
「そうか、私も銀髪の猫獣人は初めて見るよ。美しいものだな……」
ブレットがあまりにもまじまじと見てくるので、シルはアルの後ろに隠れてしまう。
「あなた、あまり女性をじろじろ見ては失礼ですよ」
「ああ、すまんすまん。つい珍しくてね」
「それよりもセアラさん、驚きましたよ。まさかミスコンに出られるなんて!」
「はい、少し恥ずかしいのですが」
予選を見ていた三人はセアラが出ていることに気付き、声をかけてきていた。
「私も驚いたよ。あまりこういったことには興味がないかと思ったんだが」
「副賞で新婚旅行に行きたかったので……」
その言葉にレイラが反応する。
「セアラさん、新婚旅行というのは何なのですか?」
「アルさんの故郷の習慣で、結婚した二人が旅行に行くんですよ」
「それは面白そうですね。でも、私の目は誤魔化せませんよ。それだけでは無いんじゃないですか?」
さすが年の功なのか、自分たちが発破をかけたためなのか、セアラの考えていることはレイラにもお見通しだった。
「……はい、このミスコンで私がアルさんに相応しいと証明します!」
「ふふ、アルさんは本当にセアラさんに愛されてますね」
「……ええ、そうですね」
レイラから水を向けられるも、アルはどこか上の空。予選ですらこれだけ注目を集めたのだから、本選までいったら、どうなるのかと心配でそれどころではなかった。
セアラは自己評価低いですが、超美人設定なので注目の的です
アルはアルで自己評価低いのかも
今週はここまでです、お読みいただきありがとうございます!
土日お休みして来週も平日2話ずつ投稿します!
お祭りは来週で終わりますので、
その後はアルたちの普段の過ごし方を少し書きたいと思います
それが終わってから新婚旅行という流れになります
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