わがまま
今日も2話更新です!
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受付を終えた二人は家に戻る。グルメグランプリの投票締め切りはまだ先だったので、結果は明日知ればいいと思い帰ってきていた。
もうこれ以上は入らないというほどに食べていたので、あとは風呂に入って寝るだけ。ソファに座って寛ぐアルに、セアラが心配そうな声をかける。
「アルさん、力自慢コンテストなんて大丈夫ですか?魔法は使ったらダメと言われておりましたけど」
「ああ、心配要らない。俺は魔法がなくても強いから」
「そうなのですか?……分かりました。応援しておりますので、ケガをなさらないよう頑張ってくださいね」
アルがそう言うのであれば、そうなのだろうとセアラは納得する。事実アルの力は桁外れに強い。
元の世界にいるときから異常なまでの身体能力を持っていたので、そこら中の部活動から助っ人として呼ばれていた。
放課後は孤児院の手伝いをしていたので、正式に部に所属することはなかったが、休日はバイトと称して様々な大会に出ては小遣い稼ぎをしていた。
「ああ、猫を楽しみにしているといい」
「はい!」
セアラのあまりに嬉しそうな様子に、アルはもし負けたとしても買ってあげようと心に誓う。
入浴の時間になると、アルは昨日の夜に考えていたことを実行に移す。
「セアラ、ちょっと風呂場を広げてもいいか?」
「はい?どういうことでしょうか?」
「空間魔法で拡張するんだ。外からは変わったようには見えないが、中に入ると広い。そういう風になる」
「えっと……アルさんは何でも出来るんですね……」
聞いたこともない魔法を事も無げに言うアル。セアラは理解することを諦めて、取り敢えず褒める。
「『空間拡張』」
アルが風呂場に魔法をかけると、不思議なことに中の広さが元の広さの四倍ほどに広がる。
「これは……どういう仕組みなんでしょうか?」
「まあ一種の異空間と言うことだな。収納魔法に良く似ている」
「そ、そうですか」
相変わらず理解の追い付かないセアラは、そういうものだと無理矢理納得する。
その後アルは土魔法で五人くらいでも入れそうな浴槽を成型し、それを火魔法で焼いて完成させる。
そのあまりにも見事な手際に、セアラは呆気に取られて立ち尽くす。
「これでいいな。では湯を張ろう」
水漏れがないか念入りにチェックしながら、水魔法と火魔法を同時に発動させて湯を張っていくアル。浴槽の八分目くらいまで湯を張ったが、水漏れや破損も無さそうだった。
「セアラ、いつものように先に入るといい」
「は、はい!あの、折角ですからアルさんも一緒に入ってはどうでしょうか?」
「いや、それはさすがに……」
「も、もし何かあったときに困りますし」
「……確かにそうだな。分かった、一緒に入ろう」
それならアルが先に入ればよいのだが、今のアルとセアラにそれに気付く余裕はない。
とはいえ既に二人は夫婦であり、体を重ねてもいる。混浴することに障害があるわけではない。
「じゃ、じゃあ先に入っているから、セアラは準備ができたら入ってくるといい」
「は、はい」
二人はどぎまぎしながらも段取りを決め、アルは入り口に背を向けて湯船に浸かる。
普段であれば、その広い湯船に体を投げ出し、声を上げてしまうところだが、そんな余裕はない。
ゆっくり浸かるつもりが、どうしてこうなったと考えていると、ふと一人で先に入れば良かったのではと思い至るが、既にあとの祭り。後ろから扉が開く音がする。
「アルさん、失礼します」
「ああ」
アルが努めて冷静に返答すると、セアラはかけ湯をしてアルの横に来て、湯船に体を沈める。なぜ横にと一瞬思ったが、考えてみるとそれが自然だと思い直す。
セアラはタオルを巻くこと無く、手で胸を隠すようにしており、どうしてもその豊かな胸が目に入ってしまう。なお魔法で出した湯なので、当然のことながら無色透明。
アルは前を向くことで何とか平静を保ち、会話をすることで、なるべくそちらに意識がいかないように試みる。
「そういえば、セアラはなぜ猫が好きなんだ?」
「あ、はい。私がまだ王城にいた頃、よく猫が入り込んできたのです。その仕草が可愛らしかったこともありますが……今思えばその当時の私は、猫のように自由に何処へでも行きたかったのかもしれませんね」
当時の自分の感情を探るように、セアラが説明する。
「成程な、その時のセアラにとって猫は憧れだった、ということか」
「そうですね、でも今は単純に可愛いだけですよ?アルさんのおかげで、私も自由ですし」
セアラがアルの肩に頭を乗せて腕を胸に抱くと、柔らかな感触が腕を包み込み、アルの顔が一気に赤くなる。やはりベッドの上と、風呂場では勝手が違うということをひしひしと感じていた。
アルがどうしたものかと困惑していると、セアラが声をかけてくる。
「アルさん、ちゃんと私を一人の女性として見てくれているんですね」
質問の意図がよく分からず、アルは反射的に聞き返してしまう。
「当たり前だろう。何故そんなことを」
「……以前は私が横で寝ていても、手を出されませんでしたので」
その言葉で、魔法で乗りきるという手があったかとアルは思う。ただし、同時に結婚したのに使うようなものではない気もする。
「……あれはただ魔法の力を借りていただけなんだ。セアラは魅力的だよ……出会った頃からな。それに事実そういうことになったわけで……」
徐々に小声になるアルに、セアラも頬を紅潮させる。
「そ、そうでしたか。ありがとうございます。てっきり雰囲気の問題かと」
不安そうなセアラの顔を見て、きちんと伝えるべきだとアルは思い、向き直る。
「セアラ、それは違う。俺はセアラを愛している。だからこうしていると胸が高鳴って、平常心ではいられなくなる」
「はい、私もそうです。私はアルさんが好きです、私はアルさんのものです。他の誰のものでもありません。だからあなたの好きにしてほしいんです」
「そうか……不安にさせた、すまない」
アルはセアラを抱き寄せる。アルはセアラを愛している、それはアルからすれば絶対的なもので疑いようのないもの。
そしてセアラもアルを疑っているわけではない。アルは間違いなく自分の事を愛してくれていると思っている。
そこまで理解していてもなお、感情というものはきちんと表現しなくてはならない。
優しい言葉と紳士的な行動だけを女性が求めている、愛さえあれば言葉にする必要は無い。そんなものは幻想でしかなく、時には自身の感情を剥き出しにした言葉や、行動を示さなければならないとアルは再認識する。
「私はどんどんわがままになっている気がします。もっとアルさんに私を好きになってほしい、アルさんには私だけのものでいて欲しい。そう思わずにはいられません」
「ああ、俺もそうだ。もっとセアラに好きになってほしい。誰にも渡さない」
アルはセアラをきつく抱き締めながら言う。それに答えるように、セアラもアルを抱き締める。
「はい、ずっと私を離さないでくださいね」
「ああ」
少しの間そうして抱き合っていると、逆上せそうになり二人は体を洗うために湯船を出る。
「アルさん、お背中流しますね」
「ああ、頼む」
大きな傷がある背中を慈しむようにセアラが洗っていく。本来であれば誰にも見せたくないはずの傷。
それを自分には包み隠さず見せてくれる、その事実がセアラには嬉しかった。
「アルさんの背中は大きいですね」
「そうか?」
「はい、とても頼りがいのある、逞しい背中だと思います」
「……ありがとう」
アルは自分の背中が好きではない。自身の油断によって負った大きな醜い傷。
誰にも見せることはないと思っていた恥の象徴、それをこうして見せられる人に出会うことができた。
そしてその人が自分の背中を逞しいと言ってくれると、救われるような、優しい気分になる。
「セアラの背中も流そう」
「……はい、それではお願いします」
少し恥ずかしそうにするが、了承するセアラ。彼女の背中は傷一つない白く美しい。
かつてアルのもとへと向かう際に負った傷はアルによって治療され、王都で鞭で打たれた傷は、クラリスによって治療されている。
「……二度とこの背中に傷をつけさせない」
アルはセアラの華奢な背中を後ろから抱いて誓う。
「……はい、ありがとうございます」
このあとは当然……
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ちなみにプロフィール画像はセアラ(まだ未完成)です
私が描いたのではないのですが、イメージ通りですね
ほんと絵が描ける人ってすごいわ……
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